第5話
うちの一人息子が忽然と姿を消して、早や一週間が過ぎた。
私は、捜索願いを出しても見つからない息子の帰りを、祈るような気持ちで待ち続けた。
事故なのか、まさか事件に巻き込まれたのか。
又は家出なのか…。
今となっては、至らない母親だから、こんな事になったのだ、と自分を責めては溜息を吐いた。
ごめんね。
私の大事な大事な、たった一人の家族なのに、何も分かってあげられなくて、ごめんね。
聞き分けの良い子だからと、いつも仕事でほったらかしていた。
都合のいい時だけ大人扱いしていた。
まだ子供なのに、私が馬鹿だった。
もっと沢山、話を聞けば良かった。
ウザがられても、もっと一緒にカラオケに付いて行けば良かった。次のライブ曲を、上手だね、と褒めれば良かった。
そして、もっと、抱き締めれば良かった。
お願い、帰って来て。
私の推し活に反対していたでしょう、金が勿体無いし、キモいって。
もう推し活は止めるから、お願い。
ただ、また一緒に平穏に暮らしたい。
いつかは巣立つ時が来るとしても。
…こんな別れ方って、あんまりだ!!
涙が頬を伝った。
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