第2話

……!!

俺は声にならない悲鳴をあげた。

手足は硬く、動かない。

辛うじて視線は周りに動かせた。

体が透けている⁈


ドカンと絶望の淵に突き落とされた。

何と、俺の身体は小さなアクリルスタンドに変わり果てていたのだ。


しかも、俺が勝手に触ったら怒られる、かーちゃんの大切な、推しの、アクスタ。


こんな事ってあるかよ!?


夢なら早く醒めて欲しいと、目をギュッと瞑り願ったが、どうも醒めないらしい。


急に、巨大な影が現れて、驚いて目を開いてしまった。

心臓が止まるかと思った。

巨人のようにデカい、かーちゃんが、こちらを覗いている。


俺は呆気に取られ、只々、身を硬くした。いや、元々固いか…。


かーちゃんはガラス戸を開けて、指を伸ばして俺を優しく掴んだ。


「さぁ、新しい持ち主が決まったわよ。写真集とセットで買い手がついたのよ。

寂しいけれど、仕方ないわ。

塾代も高いし、頑張って少しずつでも処分しないとね…。」


かーちゃんは、そんなことを呟き、俺が目線で抗議する間も無く、あっという間に透明なデカいプチプチで俺を包んだ。


待て、ちょっと待ってくれ!

俺は必死に叫んだが、やはり声は出なかった。


そのまま俺は、気を失ってしまった。

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