始まりの物語〜楓side〜
第7話 デアイ
朝、目が覚めるといつもと同じ天井に、不気味に聞こえてくるアイツの寝息。
朝になると気分が晴れるなんてことはなく、夜になっても怖いだけ。
——自由でいられる場所はどこなんだろう?
私は普通の公立中学校に通っている、周りから見たら普通な女の子だと思う。
紺色のブレザーに赤いリボン。
これもまた普通の女子中学生の格好。
「せんせーおはよう!」
私はいつもように元気なフリをして、挨拶をする。
「おう!おはよう!」
先生はそれに返してくるが、男の人はどうも苦手だ。心の中では何を考えているか分からない。
教室は3階。
階段を上がり、ガラガラと教室のドアを開ける。
「おはよう!」
クラスの皆んなに挨拶をする。
何故、皆んなは朝からそんなに楽しそうなのだろうと思うけど、私もそう見えてるのかもしれない。
このクラスはそこそこ仲が良いと思うけど、私が心から仲が良いと思える人はここにはいない。
一時限目、二時限目…
将来、何の役に立つのか分からない憂鬱な時間が過ぎていく。
先生は勉強は教えてくれるけど、将来は教えてくれない。
そんな変わり映えの無い日々、日常。
そんな一日が今日も進んでいく。
午前中の授業が終わり、お昼休みになった。
私は給食を程々に食べると他のクラスの友達の元へ向かった。
「おはよー麻衣!」
たった1人の友達と思える存在だ。
「おはよー!ってもうお昼だけど!」
麻衣はいつもの調子で心地良いツッコミを入れてくる。落ち着く。
「だって!今日初めて会ったし!」
私は麻衣といると元気と呼べる状態に近いのかもしれないけど、それと同時に麻衣がいなくなったらなんて考えてしまっている。
——もう少しで、お昼休みも終わりか。
すると、麻衣のクラスメイトの男の子が戻ってきた。
「あ、ごめん!勝手に座って!」
私が座っていた席はその男の子の席だった。
黒髪で短髪、学ランにTシャツを着て、ズボンは腰まで下げている。
いわゆる不良ってやつ。
私はヤンキーとか不良とか、そういう存在が大嫌いだ。
「別にいいけど」
男の子は気怠そうに返してくる。
本当に男の子って子供。
麻衣と会話をしていると、学校のチャイムがなった。
「じゃあね!」
私は麻衣にそう言うと自分の教室へ帰った。
午後の授業が始まると、急に寂しくなる。
教室に帰ると一人ぼっちな気分になる。
それしても、麻衣の友達の男の子の視線が気になった。
ジロジロ見てきて、アイツと一緒だった。
男の人は決まってそうだ。
私の頭からつま先まで舐め回すように見てくる。
中学生は思春期だから仕方ないかと思うけど、じゃあ大人はいつまで思春期なんだ。
——気持ち悪い。
でも、比較的に麻衣はどんな人とも仲良くなれるけど、あの男の子は信頼してるというか何というか。
ちゃんと仲良かったな。
——私の居場所なのに。
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