2人の物語

第4話 重なり

付き合い始めた僕と楓。


メッセージや電話のやりとりを重ね、お互いのことを知っていき、今では登下校も一緒にするようになった。


楓のお陰だろうか、少し怖がられていた僕の存在はいつしか《理想のカップル》なんて噂されるほどになった。


きっと一緒にいる時は顔が緩み、鼻の下が伸びてるのだろう。


…うん。自覚はある。


そんな楓との過ごす日々は幸せと実感できるものだった。


「ねぇねぇ。今度の日曜日さ、映画でも観ようよ」

いつも僕から誘うことが多かったが、珍しく楓からの誘いだった。


中学生の僕らはデートするにも近所にふらっと出かけるくらいで、映画館に行くお金も無かった。


そうなると必然的にお互いの家で映画を観るということになる。


「私の家は…んー。ちょっと厳しいかも。」

少し悲しげな顔で楓はそう言ったが、僕はそれより2人で映画を観れる喜びが大きく、あまり気にしていなかった。


「じゃあ、うちにおいでよ!親は家に居ないし!」

「うん!ありがとう!楽しみ!」

僕は楓を家に招待し、僕の家で映画を観ることになった。


その日から、もういくつ寝るとお正月状態に陥った僕は後3日、2日と毎日待ち遠しく、夜も眠れなかった。


——ついに、当日だ。


家の近くに着いたと楓から連絡がきた。


僕は何度見たか分からない鏡の前にいき、容姿を整えると足早に楓を迎えに行った。


「お待たせ!おいで!」

今では自然と手を繋ぐことができるようになっていた。


「お邪魔します!わー!こういう部屋に住んでるんだ!」

楓はそういうと部屋の隅から隅まで見渡している。


少し照れ臭くなった僕は早々に映画を再生しようとする。


定番だが、2人で観たい恋愛映画を予め選んでおいた。ありきたりだが、2人ならなんでも特別になる。


——そして、映画のエンドロールが流れる。


僕は楓の手を握ると楓の赤くなった頬、潤んだ瞳に吸い込まれそうになった。


心臓の鼓動が速くなる。

楓に聞こえてしまわないか、心配なるほどに。


目と目が合った瞬間、僕は本能のまま、楓と初めての接吻を交わした。


人間というのは不思議だ。お互い初めての経験だというのに身体が勝手に動いていく。


そのまま僕たちはベットに横になり、身に纏った衣服を剥いでいく。


あとは本能に身を任せ、愛を確かめ合った。


しかし、痛みに悶え、涙ぐむ楓の表情を見ているとふと通学路で見た寂しそうな後ろ姿、告白した時に泣いていた気がした、あの瞬間が頭を過った。


——僕は果てることなく、初体験は終わったのだ。


「痛かったよね。ごめんね。」

僕は楓に寄り添い、そう言った。


「ううん。嬉しかった。」

涙ぐみながら言う楓のその言葉は、優しさの中にどこか寂しさを感じた。


——14歳のことだった。

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