第3話 告白

変わり始めた、日常。

いつもの風景が少しずつ、色づいていく。


麻衣は気まずそうに、こちらを見ている。

どこかのRPGのように、こちらを見ていてくれれば気も楽であっただろう。


——いのちだいじに。


混乱した頭の中では強いショックを受け、回路が現実を遮断したのだろう。安全装置が作動したかのように、謎の思考がぐるぐると頭を巡っている。


しかし、よく考えてみれば分かることだった。


僕は中学生になって不良に憧れ、見た目も仕草も真似をするようになり、いつしか不良の仲間入りをしていた。


悪目立ちは確かにしていたと思う。

怖がられていたのも知っている。


強いことが、強く見せることが、生きるということなんだと思っていた。


僕はその全てを否定された気持ちになり、凄い顔をしていたと思う。


——弱いところなんて、誰にも見せれないじゃないか。


「まぁ、女の子は楓だけじゃないし、あっ私とか?なんてね!」

麻衣はすかさず、気遣いの言葉を投げかける。


でも、ここで倒れたら男ではない。

不思議と立ち上がる力が湧いてくる。

これが恋というやつなんだと再認識した。


僕はその日を境に楓の連絡先を教えて欲しいと何回も麻衣に打診をした。


その度に楓から返ってくる言葉は同じだった。


そんなある時、10回ほどお願いした頃だろうか、麻衣が驚いた顔で教室に戻ってきた。


「楓が教えていいよ!だって!」

諦めかけていた僕は耳を疑った、それと同時に本当に麻衣は毎回伝えてくれたのかと驚いた。


「よっしゃーーーー!ありがとう!麻衣!」

天にも昇る気持ちで僕は拳を突き上げる。


言うまでもなく、麻衣には数週間こきを使われたのだが、それも心地良く感じた。


それから楓とのやり取りが始まった。


好きな食べ物は?好きな音楽は?そんな他愛もない会話から始める。


何を話したら良いのか分からなかったが、とにかく楓の事を知りたかった。


話をすればするほど、好きになっていく。

自分はなんて単純で愚かなのだと感じたが、もう止まる理由なんて見つからなかった。


「好きです。付き合って下さい。」

楓は一度目では振り向いてくれなかった。


「好きです!付き合ってください!」

楓は二度目でも振り向いてくれなかった。


なぜ告白をする時は敬語になるのだろう。ふと思ったが、幼い僕の精一杯の誠意だった。


「大好きです!」

3度目の告白で楓は首を縦に振ってくれた。


何故だろう。

その瞬間、楓は泣いていた気がした。


——ここから、2人の物語は始まった。

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