活動計画

「それじゃ…早速だけど最初の活動何にしよっか?希望ある人ー、挙手!」

咲良が教室を見回す。当然のように誰も手を挙げない。

「いない?いないかな?いないなら私がやりたいことになるけどいいの?」

「私は良いよ。咲良の楽しそうな顔見てるだけで幸せになれる気がするから。」

「俺もなんでも良い。好きにしろ。」

「お前性格安定しねえな、蒼真。まあ俺も同意だけど。というわけで咲良、何になるんだ?こども部最初の活動は。」

「それはねー、えっと………、あのーほら、あれだよ公園で………かなーって……」

途端に言葉に詰まる咲良。さっきまでの威勢よさはどこへ行ったのか目が泳いでいる。さては。

「さては考えてなかったな。誰かしら案を出すと思ってたんだろう?でもよく考えろ、このメンツにお前以上に考えてるやつがいると思うか?」

「それは、いないかあ。いてくれたら嬉しいんだけどね、まあ最初だからしょうがないか。いずれそうなってくれることを願って頑張るのが私の今のやるべきことかな。よし。」

あっという間に気持ちを切り替えた様子の咲良が黒板を睨む。

「正直やりたいのがないんじゃなくて、全部やりたすぎて優先順位がつけられないんだよね。だって記念すべき第一回だよ。どうすればいいかな?」

しばらく本当にうーん、と声を出しながら考えている様子の咲良だったが、唐突に手を叩いた。

「そうだ、みんなが小さい頃一番好きだった遊びって何?ちなみに私はかくれんぼ。凝ると面白くってさあ、高学年になってからは一度も見つかったことなかったんだよ。でさ、」

「つまり咲良はかくれんぼがしたいんだな。」

蒼真が閃いたという顔で言った。咲良の語りを遮ったという自覚は無いらしい。

「まあそういうことだね、率直に言えば。高校生になった今、果たして私にはどれくらい遊ぶスキルが残っているのか、そしてみんなは小学校時代をどう過ごしてきたのか!かくれんぼやったらそのへん全部わかる気がするんだ〜!」

「じゃあそれでいいな。心晴も他の意見無いか?」

「うん、大丈夫だよ。」

「じゃあ決定だね!」

「あれ、俺の意見は聞いてくれないの?」

キョトンとした顔の天然が一人。

「あれ、蒼真反対派だった?」

「いや、賛成だよ。いいじゃん楽しそうで。」

「なら主張するなよ。」

「ごめんなさい。」

「あはは、いいよいいよ!琉生、ちょっと『主張するなよ』ってトーンガチすぎなかった?結構怖かったよ。」

「うるせぇ。」

「ごめんごめん!……じゃあ1回目の活動はかくれんぼってことで、いつどこでやろっか?明日の放課後でいい?なんか四時間だったよね確か。」

「ああ、新入生テストだからだよな。咲良、ちゃんと勉強した?大丈夫?」

蒼真がかなり真面目に心配そうな顔をする。

「心配には及ばないよ!私わりと勉強できる方だし。」

「つまりやってないんだね。」

身も蓋もないことを言う。

「まあ良いのか、今回でこの学校のレベル把握すれば次からは大丈夫だろうし。」

「次からとは失礼な。今回も大丈夫だよ。そんなことより、明日だと困る人いる?」

「いや。」

「平気だよ。」

「俺も大丈夫。」

みんな一様に首を縦に振った。

「じゃあ決定!場所は明日のお楽しみね!時間は…学校が12時半に終わるから、2時からで。」

「持ち物とかある?」

心晴が少し顔を上げて言った。指は動きっぱなしのようだが。

「そうだなー、特には無いけど、お菓子とかあったら楽しいかな。よかったら持ってきて!」

「おっけーい。」

「じゃあもう帰っていいのか?」

「お前また…」

「いいよいいよ!じゃあねー蒼真、また明日!」

「ああ。」

そして何かを小さく呟きながら教室を出て行った。間違えて電気も消していく。黒板の前にいた咲良はすかさず電気をつけなおすと、琉生に聞いた。

「蒼真何て言いながら出てったと思う?」

「よく分かんねえけど、確か英語の教科書の一ページ目の本文、あんな感じじゃなかったか?」

「そっか。にしても蒼真すごいよね、もう覚えてるんだ。まだ授業始まってないのにね。やっぱり頭いい人ってああなのかな?」

「いやちょっと待て心晴。あいつはあれで頭が良いのか?」

「良いんじゃないかなあ。だって、逆に頭良くなかったら、あの天然さで優等生の立ち位置にはいないと思うもん。」

確かにもっともだ。

「そろそろ私達も帰ろっか。また明日ね!」

咲良も唐突と言っていいほどの勢いで教室を出ていく。今度は意図的に電気を消したようだ。

残された二人は電気を付けることなく座っていたが、心晴がスマホをカバンにしまったタイミングで蒼真が

「じゃあな。」

と席を立った。

「あー、みんな帰っちゃった。」

にこにこしながら心晴も荷物をまとめる。…ひとり黒板を消すことになった彼女が帰ったのはそれから十分後のことだった。

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こども部 西悠歌 @nishiyuuka

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