第5話
「アンタは手を触れた相手の有機物の量を調整できるんだろ?」
「……」
「沈黙は答えか…続けるね、まず初めの2人は人体に流れる血液のスピードと量を一瞬で調節し内側から破裂させた、後の2人は人体の物資のリンの割合高めて着火温度を下げれば一瞬摩擦起こすだけ着火する、その後人体構成物資割合が多い水分中の酸素だけを一気に増やして燃える量を増やし内側から焼いた…違う?」
「お姉さん凄いね…実はアタシ自身あんま分かってないんだ」
「でも制約もある、アンタは手で触れないとそれができ…」
「アンタじゃない…アタシは新木 舞って名前がある!」
マイが強めの口調で言った
「名前が分からなかったとはいえごめんなさい、マイさん。でも事情がどうであれ人を殺してい…」
バン!
マイが机を叩き反論した
「じゃあどうしたら良かったの?!誰もアタシを守ってくれない!お母さんもあのクズの言いなりだった!人を殺すな?そんなもんわかってんよ!こういう時だけ大人のルールを押し付けてさ!アンタにわかる?!お母さんがクソクズにやられてる時アタシは夜中だろうが雪だろうが外に放り出された、気に入らなきゃ殴られる、学校にも行けない…挙句お母さんは自分が捨てられたくないからアタシまであのクズに…お母さんもクズと一緒だ!助けてくれなかったクセに大口叩くな!ふざけんな!」
マイの泣きながらの叫びは本音なのだろう
戸川も加藤も笹貫も反論できなかった中、口を最初に開いたのは三日月だった
「マイさん、僕達大人が君を助けられなくてごめん、でもさ?よくわかったんじゃないかな?」
「はぁ?!」
「これは持論なんだけど弱きゃ無理やり服従させられる弱肉強食世界だ、誰も助けてくれない。ならどうするか?」
「違う!ふざけんな!アンタは黙っ…」
加藤が声を張り上げると三日月が加藤の前に瞬間移動し首を締め上げ体を上げた
「加藤君…ここは食事をする場だ、いい大人がギャーギャー騒ぐんじゃない…次にやったら…分かるな?」
「カハッ!わか…わかんねぇ…なぁ…カハッ…わかるように…」
加藤も負けて無かったが三日月の手の力が強くなり顔色がみるみる変わっていく
「彼を離しなさい!」
笹貫が三日月を引きはがそうとするがヒカルに邪魔をされて笹貫は関節技を決められテーブルに叩きつけられた
「三日月!やめて!」
「…じゃあこうしよう…発言中はヤジみたいなのはやめよう、マイさんの為にならない、選ぶのは彼女だ。ヒカル、その新顔さん…捜査一課長さんを離すんだ」
「はーい」
三日月も加藤を離しヒカルが笹貫の拘束を解き2人とも元いた椅子に座る
「笹貫さん、加藤大丈夫?」
「ゴホ!ゴホ!大丈夫っす」
「イタタタ…しかしなんで僕の名前も…」
「元々は古巣だ、情報はある程度僕も把握してるよ、さて…加藤君?君の意見はどうだ?」
三日月はカップにストローを挿しながら加藤に話を降った
「ゴホ…マイさん、確かに俺達大人が何もでき…」
マイは加藤を見下すように口を挟んだ
「よっわ…説得力ないよ?熱血お兄さん」
「人間の強い弱いってそういう事じゃない、気持ちの問題だよ」
「うわ…精神論…キモ…」
「なんと言われてもいい、俺はいつ死んでも俺はこの生き方で良かったと思えるように生きてる。別に人に好かれる為じゃない…自分が後悔しないように」
「後悔?」
「やってしまったことは帳消し…無かった事にできないけど…でもそれをまぁいいやって済ませたら間違いを犯した人間と同じになっちゃうのは俺は嫌なんだ」
「同類ってこと?!アタシは違う!クズ男も公園で一人ぼっちだった時に声をかけてきた児相のオッサンも優しくするふりをして…!アタシを買った変態だっ…」
「違わない、仕方なかったとしても君がした事は正しいことじゃない!大人が何もできずに君を救えなかった事とそれはイコールじゃないんだ!」
「じゃあどうしたらいいのよ!教えてよ!」
「ちゃんと償う事だよ、君が今やるべき事は…逃げちゃダメだ。君は自分が思ってるよりずっと頭が良い、でも都合が悪くなったら子供の理屈を使っちゃダメだよ、マイさんが償いたいっていうなら俺達が全力で助けるから」
マイは泣きながら加藤に怒鳴った
「綺麗事だよ!アンタが…言ってる事は!…あのクズを殺した時お母さんはアタシになんて言ったと思う?!「この化物!」だよ?!後悔なんか…!!」
「君は化物なんかじゃない!でもここで何もしないで逃げ続けたら君は心も化物になるぞ!」
加藤がマイの肩を両手で掴みまっすぐ目を見つめて言うと
「彼の言う通りだ…大人としてなにもできなかった我々が君に何か言うのは筋が通らないかもしれない、でもこのまま君を見過ごす事は私の信条に反する、生き方を変える分岐点はこう言う時なんだよ」
笹貫も肩を抑えながら同意したがヒカルは鼻で笑い反論
「フンっ!ぬるいよアンタらは。先に仕掛けてきた方はどうすんの?当然の報いじゃね?この子は身体だけじゃなくて心もズタズタにされたんだ。ならこうするしか無かったじゃんないの?アンタ達の理屈からいったらひたすら我慢しろって事じゃん、私はゴメンだね!」
「人を殺す事を正当化してんじゃねーよ!」
「何もわかってねぇよ、甘ったれ男、じゃあどうやれば良かったのさ?えぇ?言ってみろよ!」
「そういう事、弱者が身を守る方法って限られてるワケ、みんな加藤君みたく鋼のメンタルを持ってる訳じゃないの。自分の身を守れるのは自分だけだ…なら答えは1つ…その問題を排除する、その方法がたまたま殺人ってだけ、そこはイコールでいいんだと思うけどな。マイさん?僕とヒカルは君を否定しないし綺麗事も言わない。いちいち償う必要なんてないよ。君の「才能」を妬む連中はゴロゴロいるから僕らと一緒に居ればこんな嫌な思いはさせないよ」
三日月も持論を展開した
「珍しいな、戸川?お前が黙りこくってるのは」
「別に…結局アンタは人殺しを正当化する理由をこじつけてるだけ、て事は内心どこかで殺人行為を否定しているのはアンタ自身だ。」
それだけ言うと戸川が泣き続けるマイの前に立ち両手でマイを抱きしめた
「離せよ!あっち…!」
マイは嫌がったが戸川は離さなかった
「私を殺したきゃ殺せ!いい?綺麗事でも思い続けるのは大切なんだ!教えてってアンタは言うけどこんなもん立場が変われば正解なんてないよ、少なくとも「人間」でいたいなら人を殺していい理由を正当化するな!アンタは間違いを犯したけどアタシはアンタを信じるよ、アンタは心まで化物になってない。」
「…ヒック…ヒック…お姉さんはアタシの事怖くないの?」
「怖いもんか」
「うわぁぁーーーん!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ホントはそんな気無かったの!気がついたらお母さんまで!死んじゃえって思っただけだった…でも捕まりたくなかったから…声掛けてくれた人も…アタシに乱暴しようとしたから…ごめんなさい!この前の人もお金ちゃんと払って欲しかっただけ!消えちゃえって思ったら…」
マイは戸川の服を力いっぱい掴み泣きながら謝った
「何?この安っぽい三文ドラマ、アホくさ」
「…彼女が出した答えは尊重しないとね、ヒカル。そうか…まだコントロールが上手くできてないのか…しかし相変わらず反吐が出るほど甘いな、お前は。人間の本質をわかって…」
マイが三日月の方に顔を向けて言った
「オジサンは私が手を出した時「触るのは危険」って言った…初めから信用してくれない人が味方になってくれるはずがない!」
「アタシの知ってる三日月 宗近は問答無用でこの子を抱きしめてたよ…何がそこまで貴方を変えたの…?昔の…」
バァン!
三日月が机を思いっきり叩いた
「お前こそ俺の何を見てきたんだ?知った口を利くなよ?昔のよしみでお前を目こぼししてやってるだけ、その子もそのうち分かるだろうよ、お前らが言ってることがいかに綺麗事かをな…」
三日月と戸川の会話を見ていた笹貫が口に手を当てて
「自首させるとはいえ…しかし…どうやって送検すれば…」
「この国は罪刑法定主義だからね、しかも未成年ときた、送検は無理だと思うけどね、まぁ知恵を…」
三日月が言い終わる前に黒いスーツの男達がフロアに流れ込んできた
「お前ら動くな!全員両手を頭の上に!」
「俺達は警察だ!お前らなんだ!」
スーツの男に加藤が詰め寄ると問答無用で拳銃を加藤に向けた
「邪魔をするなら命の保証はしないぞ?加藤国広?我々の目的はそこにいる少女だ」
「何する気だ!そもそも君達は何者だ!こちらも容赦しないぞ!」
笹貫は腰に装備していた45口径を構え警告
しかし戸川も笹貫もまだ状況を掴めておらず三日月の一言で状況が変わる
「あらら…戸川か?この部外者を連れてきたのは」
「違う!アタシじゃない!」
泣いていたマイが戸川の服を離しボソボソと独り言を言いながらスーツの男の方へ歩いて行った
「ダメ!行ったら!」
「うるさい…結局誰も助けてくれない…アンタも一緒だ…」
戸川が手を伸ばすとマイは赤みを帯びた目で睨む
「近寄るなよ…偽善者…ねー?アタシどうなるの?」
スーツの男は誰かと連絡をしていたが取りやめてマイの質問に答える
「それを決めるのは我々ではない、とにかく拘束する。妙な真似をするな…両手を頭に載せろ」
男はそう言い終わるとタイラップを出してマイを拘束しようとしたその時
ーーみんな死んじゃえーー
マイが小声で発し手をスーツの男に当てると
ビチャァァァァ!
男は鳩尾あたりから大量の血液を吹き出しながら倒れた
「マイ!やめて!」
「うるさない…次はダれニしようカな…アナタ…ホラアタシヲツカマエルンデショ?」
別のスーツの男を指差しし焦点の合ってないマイは歩いて近づくと
「やめろ!もうこんな事!」
加藤はマイの背中に手を伸ばすと
「アンタモシニタイノ?アハ…アハハ…アハハハハ…」
その赤みを帯びた目は笑っておらず涙も枯れ、あまりに不気味で加藤も圧倒された
マイは笑いながら男達の集団に近づくと
左右片方ずつ男の体にふれ
「キエチャエ」
そう言うや否や2人の男が炎に包まれその場に倒れた
「やめろ…こっちに来るな…化物!」
男達は驚いたのか数名は腰を抜かしたようで怯えきっていた
「これは凄いな…」
三日月が魅入っていたがヒカルはナイフを出して戦闘態勢をとるも三日月が静止する
「ヒカル、手出し無用だよ、この状況はどう見てもこいつらの甘さが原因だ…僕達が手を出す理由はない」
「でも…」
「…戸川…お前がまいた種だ、どこのネズミが仕組んだのかお前が尾行されたのか…あの少女をこうさせたのはお前の甘さだ!」
「違う!マイ!やめて!」
「アハハハ!キレーダナー。ミーンナシンジャエ」
口元を緩ませ涎を垂らし焦点の合ってない目でマイが男達に触れると燃えるか血を吹き出させるかして殺していった
「こんな化物…無傷で確保とか!来るな!来るな!」
男は拳銃を抜きマイに向けるがマイの手がかかる瞬間、笹貫が男の襟元を掴み力いっぱい引きずった
「ぼさっとするな!逃げろ!マイさん!やめるんだ!もう!」
笹貫も叫ぶがもう半狂乱のマイには届かなかった
「ツギハ…ダーレーニー」
パァン!
その音が合図たったのか
一瞬だけ世界はスローモーション
炸裂音が鳴り響くとマイは側頭部から出血しゆっくり崩れるように倒れた
「この…ゴミ…」
三日月が能力を使う前に
「何をしてるんです!」
笹貫が発砲した男の拳銃を取り上げ
「馬鹿野郎!なんで!なんで撃った!あぁん?!相手は子供だ!なのに…!答えろ!」
加藤が叫びながら発砲した男を力いっぱい殴り続けた
バキッ!バキッ!バキッ!
戸川は倒れたマイにすぐ駆け寄り呼びかけたがマイは既に死んでいた
「大兼!あんたなら治せるんでしょ!早く!」
「無理…もう治せない…」
ヒカルは首を横に振りながら答えた
「そうだ!お前治せるんだろう?!俺ん時も治したじゃないか!早くやってやってくれよ!!」
「無理なんだよ加藤君…どうだ?戸川?俺は子供は殺さない…悪いヤツでもだ…しかしコイツらはどうだ?こんな年端もいかない少女の頭を遠慮なくぶち抜いたんだ。俺やヒカル、この子なんかよりコイツらの方が化物…いや怪物だよ」
三日月がゆっくり加藤に近づき力任せに加藤を引き剥がすとマイを撃った男の顔面を踏みつけた
「貴様らの後ろは誰だ?宮川大臣か?」
「…言えない…言うもんか」
「そうか…じゃあ気が変わるまでお前を痛めつけさせてもらう…楽に死ねると思うなよ…サルが!」
そう言い終わると三日月は男の髪を鷲掴みしヒカルの前に瞬間移動してヒカルの手を握り消える前に
「戸川… これがお前の言っていた共存だよ」
「違う…違う!」
「違わねぇよ!現実なんてこんなもんだ!見ろ!この死体の山を!覚悟もねぇてめぇの理想論で中途半端に分かり合おうとした結果、この子は絶望しそれを見たゴミ共はそれをよってたかって排除…そんな連中と共存できるとお前はまだ信じるのか?答えろ!」
戸川が何も言えずにいると加藤が怒鳴った
「三日月!お前と戸川さんに何があったか俺は知らない!でもこれだけは言えるぞ!てめぇはてめぇの短い物差しで人を勝手に測って区別してるだけじゃねぇか!」
「好きに取るといい、別に君に理解をされる必要はない」
「俺から逃げんのか?あぁん?!三日月さんよぅ!」
「逃げる?俺が?誰から?ん?答えろよ…」
三日月は加藤を真っ直ぐ見据えその目には凄まじい憎悪と殺気がこもっていた
「お前は知らないんだよ!人間がどれがけ残酷か!ゴミのクセに!てめぇらを優秀個体と信じて疑わない!だから…だからこんな事が平気できんだよ!」
「…違う!人間は…それだけじゃねぇ!汚ぇ人間だけ見て全員が同じだなんて勘違いしてんじゃねぇよ!人間舐めんな!」
「…いつかわかるさ、その時絶望するか死ぬか勝手にしろ」
そう言いヒカルと男を連れて三日月は消えた
「ごめんね…マイ…ごめんね…私が…」
戸川がマイを抱きしめ泣きながら謝っていた
「戸川さんのせいじゃないですよ…しかしコイツらは一体…」
笹貫も起き上がり戸川の肩を叩きながら続けた
「未だに現実感がないんです、気の利いた事言えなくて…すみません」
「いいんです…私が甘かった…追っかけてるのは私達とアイツだけだと思い込んでいた…私の…私のあま…」
バチン!
加藤が戸川の頬を叩いた
「目を覚ましてください!こんな結末誰も考えてない!アンタがそんなだとあのクソ野郎の言ったことが正しいって事っすよ!俺たちにできる事は前を見て進むしかないんすよ!しっかりしてください!」
俯いていた戸川はマイの遺体をそっと寝かせ加藤の前に立った
「ありがとう…加藤…でも…」
バァチィィィン
「グェ!」
戸川の渾身の右手が加藤の左顔面を捉えた
「戸川さ…力加減…して…」
「1発は1発、笹貫さんこれ…どうしたらいいんですかね…」
その一撃に呆気に取られていた笹貫は現実に戻ってきた
「あ…あぁ…一応こちらで対処します…が警察官3人の前でこの事態…もしかしたら査問にかけられるかもしれませんが…」
「そんな事…どうって事ない、マイの仇…絶対に後ろを引きずり出してやる!」
そう言い戸川は現場を後にした
ーーーーーーーーーーーーーーーー
〜明坂議員宿舎〜
「あんなバカ息子でも仇は取ってやりたい、どうだ何か報告は?」
議員宿舎の1部屋で宮川大臣が秘書らしき人間に詰め寄っていた
「それが…最後に訳の分からない連絡を最後に…」
歯切れの悪い返答をしていると部屋外から人が揉める声が聞こえた
「誰だ!勝手に…」
「なんだ!警…!」
「逃げ…」
「ぎゃあ!」
「助け…」
声が途切れ静まると
「なんだ?!今のは?!」
「いや…分かりませんよ…」
ギィィィ…ドン!
執務室のドアが開くと隙間から血が流れてるのが見え何かが飛んできた
「ひぃ!」
「く、く、首!」
2人がよく見るとそれはぐちゃぐちゃになった人間の頭部だった
「こんな時間にすみませんね?宮川大臣、あ、それ手土産です」
「な、な、なんだ!貴様!どうやって…」
「警察呼ぶぞ!」
「どうぞ?ご勝手に…できるものならね…」
部屋に入ってきた男の影から銀髪の女が凄いスピードで秘書らしき男の首を切り跳ねた
ヒュッ!ビチャ!
「ひぃ!目的はなんだ!金か?!金なら好きなだけ…」
「ここじゃ狭いな…大臣失礼しますね」
「来るな!こっちに来るな!俺を誰だと思ってる!民政党の宮川だぞ!お前らなんてどうにでも…」
「権力も力か…そういう捉え方も正しいね…宮川 健…貴方が散々甘やかし尻拭いをして責任を取らせない結果…1人の少女が生命を落とした…その償いはしてもらう」
「!まさか!あの娘の関係者か!貴様!」
「違うよ、彼女とは1回会っただけ…僕には関係のない人間だ」
「ならなんで首を突っ込む!」
「…化物退治…」
「はぁ?お前頭イカれてるのか?!」
「いや、僕はイカれてないよ…イカれてるのはお前らだ…権力という力を振りかざす化物を退治しにきた。楽に死ねると思うなよ…クソ猿が…!」
「!お、お前!例の組織を潰した三日…?!」
「RACKをご存知か?そうだよ僕がやった」
「…くるな!来るな!化物!私に触るんじゃ…」
「みんなそう言うけど僕からしたらお前らの方がよっぽど化物だよ」
腰が砕けその場に座り込んだ宮川大臣の胸倉を掴み反対の手で銀髪の女の手を握ると3人は消えた
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事件後
戸川が非公式なやり方で調べた結果バーガーショップに来た男達は公安で転落死した男達も公安、目的は新木 舞を確保する為に動いていた。
三日月を追っていた訳ではなく宮川大臣が派閥の後輩である滝原警察庁長官に命じて内々に処理しようとし監視カメラ映像やらを他証拠をかき集めさせた時、偶然三日月を見つけそのままあわよくば三日月も処分しようとしたらし。
バーガーショップの出来事は被疑者死亡のまま送検され新木 舞の遺体は火葬。戸川、加藤、笹貫は査問にかけられた
「アンタまた査問だったね」
「もう慣れましたよ、でも俺は減封と謹慎…戸川さんはお咎めナシ…納得いかねっすよ」
未詳の加藤スペースで筋トレをしながら加藤が戸川にそう話すと
「…加藤は正しい事をするタイプだからだよ」
「は?」
「別になんでもない…災難だったね」
「今なんて言ったんす?」
「なんでないって、てか謹慎なんだからここにいんなよ。そう言えば笹貫さんはどうなったんだろう…」
「硬いこと言わんでくださいよ…笹貫さんねぇ…」
ギィィィ
未詳のドアが開くと笹貫が入ってきた
「いや〜僕捜査一課長クビになっちゃった」
「えぇー!マジっすか?」
「マジもマジ、大マジ…で今日から僕も未詳です」
そう言うと辞令を見せた
「 辞令 笹貫 行成 は〇月✕日より未解決事件詳細保管解決課に移動を命ず」
「ホントだ!ってー事は笹貫さんは俺の後輩って事?」
「いや〜そう言いたい気持ちはわかるんだけどね…これ」
「…課長待遇?!なんすかこれ!」
「知らないよ、そう書いてあるんだもん。さて戸川 志津警部、これからお世話になります、よろしくお願いいたします」
「笹貫さん…ババ引いちゃいましたね…」
「んー別にそうでもないよ、僕は今まで薄っぺらい所にいたんだと実感できたしね…それに」
「それに?」
「何もできなかった自分が悔しかっ…」
笹貫の言葉を遮るように加藤が手を出した
「ん?」
「これから仲間っすね!改めてよろしくお願いいたします!笹貫課長待遇殿!」
「よろしくね、加藤 国広君」
笹貫と加藤が握手をした手の上から戸川も手を被せた
「よろしくね、とりあえず笹貫課長待遇さん、スターライトカフェでフラペチーノの買ってきて」
「え?は?」
「あ、これ儀式みたいなもんす、俺は…キャメルラテで!」
「わかりましたよ…行けばいいんでしょ?行けば…僕待遇とはいえ課長だよ…全く!」
そう言い私物を置いて笹貫は部屋を後にしようとした時
「あ…宮川大臣行方不明らしいよ、執務室で死体も出たらしい、恐らくもう死んでるよ、これ…あの三日月って男の仕業だよね…」
「アイツ執務室まで行けるのか!どんだけだよ!戸川さん…三日月と何があったんです?いい加減教えてくださいよ」
戸川は笑顔消し深呼吸をした
「三日月 宗近…昔はあんな人じゃ無かった…よく笑ってたな…でも誰も知らない所で泣いてた…それを私は知らなった……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神奈川県に海の見えるカフェに三日月と大兼の姿があった
「三日月さんこのカフェ好きですね」
「ここはお気に入りなんだ…綺麗な物を見ると心が穏やかになる、ヒカルもならないかい?」
「私…は…三日月……さんと…………」
どこからともなく霧が湧き出て大兼ヒカルの喋りがじょじょにスローになると三日月も飲み物のストローを咥えたまま動きが止まり空を飛ぶトンビは羽を広げたまま姿勢を維持し通りの車は全てその場で停車、風も吹かなくなり海岸ではグループで遊んでいた学生達が投げたボールは宙で留まり波は崩れた後に潮が引く瞬間で止まっていた、そして霧の中からハットを被った男が現れ三日月に触れた
「ん?なんだ…君か」
「なんだはないだろう?災難だったね」
「…マイの事かい?」
「あぁ、でも君も充分脇が甘いよ」
「…だね…油断していたよ」
「違うね、手出ししなかったのは何故なんだい?」
「…戸川を選んだ事が少し悔しかった…からかな」
「ふーん…随分と君らしくないと言うか…しかし…あの若い男が言ってた事は的をえてるな」
「君まで何を言うんだよ」
「ん?否定するのかい?なら聞くがなぜあの場で説き伏せなかったの?」
「価値観が違う人間に何を言っても無駄だ」
「そうかな?異論や反論も時には必要だよ、己を省みる為にね。君はなんだかんだまだどこか人間に希望を持ってる、だからこそいい人間は殺さないんだろう?」
「……かもしれないな……」
「安心した」
「ん?何を?」
「まだ君は人間だよ」
「そう思いたいね…」
「人間は整合性が無いものだよ、なぜなら「心」があるからね。心が感じるから感情が生まれる、感情を完璧にコントロールするなんて無理だよ、人間には」
「心ね…君からそんな言葉出るとはビックリだ」
「ん?その心があるから人間を見ていて楽しいんだ、abilityが覚醒するのはその心が原因かもね。そしてその心が変わる時の人間の顔を見るのが楽しくて仕方ない、あの時の君みたいに」
「随分と素敵なご趣味なことで」
「ある程度楽しみがないと長く生きるのは退屈だよ、そういえば何故君は戸川さん達に執着するんだい?」
「まだ希望なんぞを持ってるからそれを粉々に折ってやりたいだけさ」
「ふーん…まっそういう事にしておくよ」
そう言うとハットを抜き男は三日月に哀悼の意を示した
「いきなりなんだよ」
「いや、彼女は本当に気の毒だったからさ、お悔やみ申し上げるよ、じゃあね三日月君」
「僕に対する皮肉かな?君がそういう気持ちを持ち合わせてるのに驚きだよ」
男は三日月の言葉に少し足を止めたが帽子を被り手をかざすと霧が湧き出てその霧の中に消えて行くと止まっていた時間が動き出し
「…さんと居られればそれでいいです」
「そっか、ありがとうね」
「…三日月さん」
「何?ヒカル?」
「答えたくなかったらいいんですが…戸川とはどういう関係だったんです?」
「何?ヤキモチ?」
ヒカルは顔を赤くして否定した
「違います!そんなんじゃ…」
「ハハッ冗談冗談…気になるの?」
「まぁ…」
「…戸川と初め会ったのは………………」
三日月は少し離れた海辺ではしゃいでいる学生を見つめながら喋りだした
ーーーーーーーー了ーーーーーーーーー
Singularity -未解決事件詳細保管解決課- /弐 乾杯野郎 @km0629
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