第4話

「しかし加藤君が教えてくれた「三日月」って男も…瞬間移動?て…にわかに信じられないけどハムの連中が出張ってくるって事はなんか現実味を帯びてきたよ」

神座警察署で笹貫と合流しホテル街向かう途中で笹貫は話を続けたが加藤が割った

「ハムの連中?」

「鈍いな、「公」の字を崩したらハムになるでしょ?」

「あぁなるほど…」

「しかし戸川君もこの短時間でよく…どうやって調べたか聞かないでおくね」

「簡単よ、事件が繋がっているのはほぼほぼ確実だからね」

「で殺害方法は分かったの?その…加藤君が教えてくれた超能力的なものなの?」

「そうじゃなきゃおかしいっすよ!」

「罪刑法定主義がネックか…」

「え?」

「我が国は罪刑法定主義だ、もしその超能力的なモノで殺害したとしても法律で定められた要件を満たしてないとどんな犯罪でも立件できないんだ、キツいことを言うようだけど超能力は科学的に立証できない」

「だとしても悪さしてる奴は捕まえないと!それに本当にあった事なんだから俺らが知らない所で処理されるなんて事は俺には納得できないです!」

加藤はいきり立って反論した

「だよね、僕もそれは一緒だよ。真実を知りたい、結果はどうあれね。報告書に上がってない事があるってことは警察内部でももうその事を知ってるから隠したがる連中が居ることもわかったし…全く…情けないよ…」

3人が話をしながら歩いていると第4の被害者が出たラブホテルに着いた

古ぼけた自動ドアをくぐり抜け部屋のタッチパネル前にあるフロントの小窓に戸川が手帳を見せながら話かけた

「私達こういうモノです、何度も申し訳ないのですが例の部屋を見せて貰えませんか?」

小窓から中年男の声が帰ってきた

「あんな事が起きてウチはもう商売上がったりだ、好きに見てくれ…もぅ…部屋番号はこれ見て」

そう言い鍵を渡してきた

「ありがとうございます、そういえば当日にこの子見ませんでした?あと当日の監視カメラ映像とか見られますか?」

戸川はPCの画面を見せる

「あんた達が持っていったじゃないか?ウチにはその日のデータはもう無いよ。うーん…どうだったかな…ハッキリ見えないし…でもこんな感じだったと思わないでもないな」

「そうですか…ありがとうございます、では部屋を見せて貰いますね」

3人は鍵に書かれていた308号室に向かうためにエレベーターに乗り込んだ

「しかし…どうやってこんな女の子が…」

笹貫が口を開く

「俺にもさっぱりですよ、戸川さんはもう知ってるんでしょ?」

「部屋を見てから結論出すよ…」

3階に着くと古びたエレベーターの扉が開き狭い廊下を進んで突き当たりの角部屋308号室へ、鍵開けると綺麗にされているがうっすら床には跡があった

「ったく…大臣様の息子ならこんな所使うなよ」

「まぁそういう所なんでしょうねぇ…下賎な考えの根本は」

「どういうことっすか?」

「いやぁ…何度も何度も捕まって懲りずに少女売春…自分が特別だと勘違いした末路ですよ」

「親も親なら子も子だな…胸糞悪い、これじゃコイツももう化け物だな」

加藤は燃えた跡を見ながら小声で言った

「化け物か…言い得て妙だね…人と自分は違うと勘違いしたら確かに立派な怪物かもしれないね、「親の権力」という能力持ちの」

笹貫が腕を組みながら加藤を見つめ答えてると焼け跡を見ていた戸川が何かに気が付きいつも持っているキャリーバックからスケッチブックを取り出して文字を書き出した

「戸川さん?いきない…」

笹貫が驚いていると加藤が制止する

「これ儀式みたいなもんですから」


「瞬間」「血管破裂」「女の子」「人体発火」


書いた物を破りばら撒くと


「繋がった…」


「部屋を散らかして…何か分かったんですか?」

「笹貫さん、どうやって殺したかわかりました」

「えぇ!本当に?!」

「あとはこの子…おそらく近くにいる…」

「流石戸川さん!でも何でそこまで分かるんです?」

「このくらいの子が1人で生きていくにはどうするか?でも1人は心細い…ならどうするか?」

「あ…この辺で未成年が溜まるってネットやらテレビでも言ってましたね!そうか!」

「そう…手っ取り早く金が手に入る方法…そして紛れる孤独感…繁華街で全て埋まる」

「肝心な殺害方法は?」

笹貫が口を挟んだ

「笹貫さん、私はこれから突拍子も無いことを言います、突っ込み無しで聞けますか?」

「ここまできたらもう驚きませんよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


小久末公園

ここは公園通りは日も暮れると少女から年増までの女性が集まり立ちだす、まるで商品のように

そして女達が並んで立っているとそれを選ぶ男たちが湧いて出てくる

一時の春を売り買いする場

ヒカルはその光景を蔑んだ目で見ていた

「最低…」

「まぁそう言わないで、彼女らも必死なんだよ、生きるのに」

「だからって…買う方もクズだけど売る方も売る方ですよ…どうせそのうち「本当は嫌だった」とか後で言うんですよ、こういう連中は」

「はいはい、怒らない怒らない。さて目当ての子はと…」

三日月はヒカルと離れ公園通りにいる女達を見ながら歩いていると女が声を掛けてきた

「オジサン、どう?今なら安くしとくよ」

「うーん…申し出は有難いけど人を探していてね、この子なんだ」

三日月がスマホを女に見せた

「んだよ…幼女趣味かよ、キモ…」

「違う違う、僕は彼女の保護をたのまれてね」

そう言い三日月は財布から金を出して女の子コートのポケットに入れた

「つい最近ここにきた女だね、その子。さっき見たけどどこに行ったかな…でもついさっきだったからそう遠くに行ってないよ、多分コンビニとかじゃないかな?」

「教えてくれてありがとう」

「別に…貰うもん貰ってタダ返すのは嫌だっただけ、客じゃないならこんな所ウロウロしない方がいいよ」

そう言い女が三日月から離れて三日月がヒカルの元へ

「多分この辺りにいるよ、2人で探そう」

「はーい」

「見つけても無茶…」

三日月がそう言いかけた時向かいから少女が歩いてこちらに向かってきた

「いた!」

三日月が少女の方にゆっくり向かい話かけた

「やぁ」

「何…オジサン」

「君の時間をちょっと僕にちょっとくれない?」

少女は小さくため息をつくと

「いいよ、ホ別で1回2万で」

「時間は?」

「短ければ短い程いいよ、でも回数は1回だけ」

「分かった今払うよ」

そう言い三日月は財布から5万円出し少女に渡した

「は?多すぎ…返すよ、なんかキモイし」

「いいっていいって」

何かを悟ったのか三日月は金を突き出してきた少女の手を避けた

「おっと…君に触れられるのは少し怖いな」

少女は驚いたようだったが三日月には隠せない

「少し話がしたいだけなんだ、君と」

「オジサン何者…?」

「さぁ?なんだろうね、君に何かをしようなんて気は無いから安心していいよ。初めまして、僕は三日月 宗近、君の名前は?本名じゃなくてもいいよ」

「……マイ…」

「ん?」

「新木 舞…」

「マイさんか…改めて初めまして、僕の斜め後ろにいる銀髪の女性見える?彼女は大兼 ヒカル。彼女も君に危害を加えないから、あ、お腹空いてない?ちょっと軽く食べようよ、立ち話もなんだしね、何が食べたい?」

「ワーキンバーガーがいい」

「OK、んじゃ行こうか」

そういいマイと名乗った少女とヒカルを連れて繁華街とは逆の新小久末駅方面へ歩いた

行く途中にヒカルが三日月に耳打ちした

「ホントにこの子が…?」

「たぶんね、わからないかい?ヒカルは?」

「ねぇどうしたの?内緒話なんかしてさ」

「いやいや、大人の話さごめんごめん」

「そういうの…嫌い…」

「ん?」

「私に用事があるのに除け者にされるのは嫌」

ヒカルが鋭い眼光をしてマイに掴みかかろうとした

「三日月さんに何言ってんの?お前?子供だからって…」

「よすんだ、ヒカル、マイさんは礼儀の話をしているんだよ。すまなかったね」

「ふーん…まぁ別にいいけど、なんか問題でもあったの?」

「まぁ大丈夫だよ」

「なんかオジサンいい加減だよね」

「お前…!!口の利き方」

ヒカルが怒りをあらわにしたがマイも負けて無かった

「何?お姉さん…アタシにとってあんた達は他人…子供だと思って舐めない…」

「あーーー!お腹減ったァ!マイさんは何にする?僕はお店入る前から何食べようか?って悩むタイプなんだ、ワーキン美味しよねぇ」

「いきなり何?大声出さないでよ」

「こうやってたまには大きな声を出すのもいいもんだよ、試しにやってみるといい」

「…遠慮しとく…なんかダサい」

そういいながら3人はきバーガーショップへ

ワールドキングバーガーはアメリカ発祥のバーガーチェーン

あまり店舗数が少ないのだが直火で焼いた大きなミートの入ったバーガーが看板メニューだ

ヒカルがスマホを使いまとめてオーダーし3人は先に席に着く

「で…何?あたしの事捕まえにきたの?」

「なぜそう思う?」

「とぼけないでよ…あたし人殺しだもん、でもこんな早く見つかるとはね」

「続けて殺し過ぎだよ、それに4人目がマズかった」

「…あのクソ変態…変なもん出してアタシん中に入れたり首を締めて無理やり…ゴムもしないでさ…死んで当然だよ、あんなの」

「あーそれを咎める気はないのよ、僕は」

「え?オジサン警察じゃないの?」

「ぷッ…私達警察ですって、三日月さん」

「はぁ?何笑ってんの?」

「別に…ただなんだかんだ言いながらアンタまだ子供だなと」

「子供だから何?そうやってみんな油断してたよ…お母さんもクソゲスも…大人なんてみんなそうだ、偉そうにふんぞり返って…優しいフリして結局ゴミ…そのくせ…」

マイが喋っている時にバーガーショップの店員が注文の物を運んできた

「オーダー924のお客様、お待たせしました、ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうね」

三日月がトレーを受け取りマイに向けた

「まぁまぁ喧嘩しないの、とりあえず食べるといい」

マイは空腹だったのか凄い勢いで食べだした

「凄いな、なんなら僕の分もいいよ。んでだ、僕ら警察じゃない」

口に沢山頬張りながらマイが喋る

「じゃあ悪い人なの?」

「さぁ?どうだろうね、それを決めるのは話をしてから君が決めることだよ」

「ふーん…」

「短刀直入に聞くね…君特別な力を持ってるだろ?」

マイのバーガーを食べる手が止まった

「……なんでそう思うの?」

「んーー…何となく分かるんだ、ぶっちゃけ僕もヒカルも「それ」を持ってるからね。長いことやってると何となく分かるんだ」

「へー…で…アタシに何をさせたいの?」

「うーん…特に何も、君に興味があったから敢えて忠告だけしたかったってのが本音だよ」

「忠告?」

「あぁ…むやみやたらに力を使うな…バカサル共は君を…」


三日月が喋っている途中で話を割った人物が現れた



「そんなやつの言うこと聞く必要ないよ!」



声のした方を三日月が振り向くと戸川と加藤、笹貫の3人が立っていた


「やぁ、戸川に加藤君、久しぶりだねぇ、新顔もいるけど…」

ヒカルが敵意を剥き出しにして立ち塞がる

「あんた達懲りないねぇ…今殺すよ?」


「うるせぇな!てめぇに話してないんだよ!」

加藤も負けてない

「まさか…本当にこんな子供が…?!」

笹貫は驚きを隠せない

「遅かったね、戸川」

「アンタだってそう変わらないんじゃない?アタシは監視カメラやらを色々調べてアンタがココにさっき入ったのは知ってるよ」

「…さすがは僕の後釜だ」

「ねぇ…この人達だれ?オジサンの知り合い?」

「まぁね」「知り合いじゃねぇよ!」

加藤と三日月の言葉が重なった

「で…なに?」

「マイ君、この人達は警察だよ」

「へー…私をなんで捕まえるの?」

「4人の殺人」

「こんなアタシがどうやってあんな事できだと思うの?こんな子供に、アタシ知ってるよ?人間てあんな簡単な燃えな…」

戸川が少し笑いながら口を挟む

「誰が燃えたなんて言った?公式発表は自殺だけ…アンタは自分で墓穴を掘ったんだよ」

「…」

「そうですよ戸川さん、この子はどうやってやったんです?!」

笹貫も会話に入ってきた


「…触れた相手の人体構成物質の含有量を調節する能力…ability持ち」


「含有量を調節?!」

加藤と笹貫が同時に声を上げるといつの間にか客は戸川達と三日月達以外誰も居なくなったフロアに声が響いた






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