第14話 電光石火の助っ人

 「電光石火のマタドールとは、俺の事だゼ!!」


 空に突き刺した雷斗(ライト)の人差し指の指先から、ビリビリ放電が始まった。


 「アンタの喋り方、ダッサ〜。どこから、その自信が出てくるの? アンタ達は私の姿を見ること無く負けるのよ。」


 霧の中から、霞(カスミ)の声がこだまする。

 彼女が言うように、この霧の中では霞(カスミ)どころ、か直ぐ側に倒れている晃(アキラ)すらおぼろげだ。

 そこら中から霞(カスミ)の気配がする、何処から攻撃されてもおかしくない状況、しかし雷斗(ライト)は全く動じること無く静かにその時を待っている。


 そしてまた、白く霧の様にぼやけた霞(カスミ)の手が、雷斗(ライト)の首元に静かにそろそろと伸びてきた。


 『ピリッ』


 白く霧の様にぼやけた霞(カスミ)の指先に静電気がはしる。


 「勝負は、一瞬だゼ!」


 『バチッ』


 雷斗(ライト)と、霞(カスミ)の長い体が青白く輝いた。

 霞(カスミ)は、雷斗(ライト)が解き放った電撃で、全身から煙を上げ、声も出せずに口を開けたまま、霧の中に引き下がっていった。


 霧が引いていく…。

 朝日がさし、川の水面がキラキラ輝き出す。

 晃(アキラ)のE'bは、光の粒子になり消えて元の姿に戻ってしまった。


 「霞(カスミ)を…逃がしちゃ駄目だ…。音波(オトハ)が、連れて行かれる…。」


 精魂尽きた晃(アキラ)には、引いていく霧を追う力は残っていないようだ。


 「ぅえっ!? 霧と一緒に消えちまったゼ。」


 雷斗(ライト)は霞(カスミ)を仕留めきれず、霞(カスミ)は霧と共に消えてしまった…。

 E'bを解除した雷斗(ライト)は、面目無さげに晃(アキラ)を担ぎレムの所まで運んでいった。


 「また、助けてもらったな…。」


 「お前の相方のバイクに頼まれはしたが、俺も丁度アイツを追っていたところだったゼ。」


 『(-_-):逃がしても〜たんか〜。あんたらホンマに、しょうもないな〜。』


 品の無い関西弁、レムの隣に駐められていたHONDA CBRから聞こえてきた。


 「俺の相方のエゴだゼ。こう見えてツンデレなんだゼ。」


 『(-σ-):何言うてん。しょうもないヤツやな〜。』


 『(´∀`;)マアマア:とても面白い方でしたゎ…。晃(アキラ)、無事で良かった〜。何も考えずに行っちゃうんだもの…。』


 「へへっ。レム、ありがとう。」


 思いがけない助っ人と、レムの機転で救われた晃(アキラ)は、緊張がとけて思わず微笑んだが、直ぐに音波(オトハ)の事を思い出し、声を引き締めて話しだした。


 「雷斗(ライト)、ありがとう。もう下ろしていいよ。霞(カスミ)が霧のE'bだったんだ…。高校生を誘拐していたのも彼女だ。誰か黒幕がいるようだが、早くなんとかしたい。雷斗(ライト)、もう少し手伝って欲しい。」


 『ドサッ』「イテッ」


 雷斗(ライト)は、乱暴に晃(アキラ)を下ろし、親指を立てて合図をした。


 「黒幕は、きっと“深淵の目”だからな、当たり前だゼ!」


 『(-_-)y-~:ったく、しゃあないわね〜。男はホンマに、女の事となると…。』


 「エゴ、余計な事を言うんじゃないゼ。」


 雷斗(ライト)は、エゴに諭すような話しぶりをし話題を戻した。


 「その、霞(カスミ)って奴の情報、有れば教えて欲しいゼ。」


 「それが…、高校生ってだけで、それ以上分からないんだ…。口調が荒くなっている…。このままじゃあ、いつS'bになってもおかしくない…。早く見つけないと…。」


 「ヘンッ。いっそのこと、S'bになってくれりゃあ見つけやすいと思うゼ。」


 (………!?)


 一同、雷斗(ライト)の話の意図を悟り、顔を見合わせた。



−薄暗い部屋−


 「……やよ! ねぇ…、助けてよ!」


 おぼろげな視界に、誰かが電話をしている姿が見える。


 「ヤバい奴らに目を付けられたのよ! あの、閃光のフォトンと、変な騒がしい仲間がいたゎ! ねぇ!? ねぇってば!!」


 通話が切れた様だ。部屋中に響く怯えた声に、音波(オトハ)の意識がもどってきた。


 「霞(カスミ)…。 その声は、霞(カスミ)なの…?」


 (!?)


 霞(カスミ)は、慌てて振り返ると、いつもの口調で音波(オトハ)に話しかけた。


 「気がついて良かった〜。ヤバい奴らに襲われて、何とか逃げてきたのよ。」


 霞(カスミ)は、さも心配げに音波(オトハ)の肩をさする。

 音波(オトハ)は、少し嫌悪感を見せながら霞(カスミ)の手を抑え問いかけた。


 「ヤバい奴らって、キラキラ輝くE'bの人の事?」


 霞(カスミ)の顔が一瞬たじろいだが、直ぐに取り繕い音波(オトハ)の問いかけに答えた。


 「そぅ…。そうよ! 閃光のフォトンって言うのよ。音波(オトハ)に近づいて、誘拐しようとしてたのよ。アイツ、きっとストーカーよ!」


 音波(オトハ)は、顔を引きつらせ無理に笑うと、霞(カスミ)の手をそっと霞(カスミ)の膝の上に置いた。


 「あの人の事、知ってたのね。」


 「え…、えぇ…。ヤバい奴って有名よ…。霧が濃くてよく分からなかったけど、危なかったんだから…。」


 音波(オトハ)は、霞(カスミ)から目をそらし立ち上がった。


 「私、帰るね…。」


 立ち去ろうとする音波(オトハ)の手を、霞(カスミ)は突然強く握った。


 「駄目よ…。側にいなきゃ…、駄目よ。」

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イド・フロンティア @orion23

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