第11話 謎の男の子

−繁華街−


 “霧”に包まれ高校生が行方不明になる事件から、仁(ジン)に高校生の音波(オトハ)の身を案じるよう告げられたが、新しい友達に連れられ自分のもとから離れていく音波(オトハ)。

 以前からコソコソ様子をうかがっていた謎の男の子が現れた事で、晃(アキラ)の心境はいっそう不安定になっていく。

 晃(アキラ)は、不審に思い感情のおもむくまま、謎の男の子に詰め寄っていった。


 「お前、モブじゃないな。」


 『(´゚д゚)ワォ:ちょっ!? ちょっと晃(アキラ)。いくら何でも、関係のない男の子に八つ当たりはダメよ!』


 男の子は、声を震わせ苦笑いで晃(アキラ)をなだめた。


 「お…、お兄さん。落ち着いてよ。」


 「とぼけるな! お前、ずっと俺達を監視していただろ!」


 「誤解だよ!」


 『Σ(゚Д゚)イヤー:やめてってば!』


 レムの静止も聞かずに、晃(アキラ)が男の子の胸ぐらをキツくつかんだ。

 強く捻じ曲げられた上着が男の子の体を締め付ける。

 男の子は、苦しそうな表情で晃(アキラ)にしがみついた。


 (ブヮン)


 その時…、

 晃(アキラ)は後ろに強く引っ張られ、二人は少し離れた所に駐められたレムの方に飛んでいった。


 『ドサッ、ガッタン!』


 晃(アキラ)と男の子は、レムと激突しメチャクチャに倒れていった。


 『(TдT)ウエ~ン:イタ〜い。ちょっと何なのよ!?』


 一瞬のことだった…。

 晃(アキラ)は、何が起きたのか分からず混乱し、パックリ開いた瞳で空を見つめたまま固まっている。

 男の子は、晃(アキラ)の手が緩んだ隙に離れて逃げようとした。

 晃(アキラ)は、すかさず立ち上がり男の子を逃がすまいとつかみかかるが、またしても理解を超えた光景を目の当たりにする。


 (ブヮン)


 男の子がたじろき、一歩下がる。ただそれだけの動作のはずだった…。

 男の子の背景が歪み、晃(アキラ)との距離が突然広がると、手の届かない所まで離れてしまった。


 「レム…。どういう事か分かるか…?」


 今まで数多くのE's使いを見てきたはずの晃(アキラ)だが、得体の知れない相手に動揺しレムに問いかける晃(アキラ)。


 『(TOT)ウエ~ン:それどころじゃないよ〜。起こしてよ〜。』


 逃げるべきか、戦うべきか、はたして勝てるのか…。晃(アキラ)が葛藤していると、男の子の様子がおかしいことに気づいた。


 「う…っ、うぐ………。」


 男の子は、その場で胸をおさえもだえだしたのだ。


 「レム! あいつ弱ってるぞ!? 今なら倒せれる、あいつのE'sは何だ!?」


 『(;´Д`)アゥ~:それより、早く起こしてよ〜。晃(アキラ)のE'sは暗くないから使えないから、今喧嘩しちゃダメだよ〜。』


 噛み合わない晃(アキラ)とレムの会話に、男の子が胸をおさえ苦しそうに返事をした。


 「あ…、あなたの情景は、暗がりなのですね…。安心して下さい、戦うつもりはありません…。」


 「レムのバカ! 相手に、こっちの素性をバラすな!」


 『。゚(゚´Д`゚)゚。ワ~ン:ふぇ〜ん。あの子と戦わないで〜。』


 圧倒的な能力差に、晃(アキラ)はあきらかに動揺している。

 さいわいにも男の子には、戦う意思が無いようだ。

 苦痛に歪んだ顔で、男の子が尋ねてきた。


 「あ…、あなたは…、閃光のフォトン…ですね。」


 「だったら、何なんだ!?」


 引きつっていた男の子の顔が、ニヤつく。


 「今日は、ここまで…。また、会いましょう…。」


 (ブヮン)


 景色が歪み、男の子がスッと下がるとギュッと小さくなり消えていなくなってしまった。


 「はぁ…、はぁ…、はぁ…。」


 晃(アキラ)は、しばらくその場でただ呆然と立ちつくしていた…。


 『(TOT)モー:うぇ〜ん。ひどいよ〜、起こしてよ〜。』


 レムの声に我に返った晃(アキラ)は、倒れたレムを起こして、転がるヘルメットを手に取った。


 「敵ではないのか…、何で俺の事を調べていたんだ。レム、何か分かったか?」


 『٩(๑`^´๑)۶プン:それどころじゃないもん! 今は、かっ飛ばしたい気分!! プンプン。』


 『ブゥーン、ブゥーン』


 「くすっ。」


 レムが怒りながらエンジンを吹かす姿に、張り詰めていた気持ちが突然緩んだ晃(アキラ)は、思わす吹き出してしまった。


 『(๑`3´๑)ブー:何がオカシイの!? さっさと乗りやがれ!!』


 『ブォーン』


 「ハイハイ。」


 晃(アキラ)がレムにまたがると、軽快に繁華街を駆け抜けていった。


 『ブォン、ブゥーーン』



−ビルの屋上−


 「はぁ…はぁ…。ちょっと無理しすぎたかな…。」


 ビルの屋上から走り去っていく晃(アキラ)達をながめながらタブレットを飲み込む男の子。

 ゆっくり寝転がり目を閉じると、ボソリとつぶやいた。


 「散々な出会い…。ま…いっか…。」

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