第33話

いつの間にか

天井から落ちてくる雨も、

割れた窓から降り注ぐ雨も

先ほどまでとは比べられない程に

激しくなっていた。

建物を叩く雨音も大きくなった。


その時、窓の外に明かりが見えた。

その明かりが消えると、

雨音に混じって足音が聞こえてきた。

足音は一つではなかった。


助けがきた。

Sは自然と安堵の溜息が漏れた。


建物に響く雨音がより一層大きくなった。

それと共に風も強くなり、

割れた窓から侵入してくる横殴りの雨が

地面に小さな水たまりをいくつか作った。

雨音が足音を掻き消していた。


Sは肘を付いて体を起こした。

とりあえず服を探した。

助けが来てもこんな格好で発見されるのが

恥ずかしかったからだ。

地面に落ちていた下着に

手を伸ばそうとした瞬間、

別の手がその下着を拾い上げた。

Sが視線を上げると

そこには見たことのない男が立っていた。

Sは恥ずかしくて胸元を隠した。

その男の背後から別の声がした。

「お待たせ、笠原ちゃん。

 声を掛けたら結構集まってさ」


男達は笠原の仲間だった。

Sはすぐにマットにねじ伏せらた。

Sの悲鳴は豪雨に掻き消された。


男達が次々とSの中へ入ってきた。

その場に何人の男がいたのかわからなかった。

汚れたマットの上でSの体は男達の玩具にされた。

上の口と下の口を男のモノで塞がれた後、

お尻に激しい痛みを感じてSは悲鳴を上げた。

反射的に歯が男のモノに当たった。

その直後、左の頬に激しい衝撃を感じた。

口の中に鉄の味が広がった。

痛みに苦しむ間もなく

男のモノがもう一度口の中に入ってきた。

「次に歯を立てたら殺す」

そう言われたと佐藤に語った時のSの表情は

微かに笑っていたらしい。

恐怖と痛みでSは頭が朦朧としてきた。

お尻の中で暴れる男に激しい痛みを感じて、

Sはついに気を失った。


その夜、

Sは現実と悪夢の中を何度も行き来していた。


悪魔たちは一晩中、Sの体を弄んだ。

犯されながらSは建物を叩く雨音に

その意識のすべてを集中させた。


日の出とともに雨も止んで

悪魔達は去っていった。


Sは一人残された。



後日、Sの自宅に封筒が送られてきた。

差出人は不明。

中には悪夢の日のSが映った写真が入っていた。


Sの中の何かが音を立てて崩れた。

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