第28話 招待客リスト

紙には六人の名前と、

僅かばかりの情報が添えられていた。


<男性ゲスト>

・宿儺彦丸(すくな ひこまる)

 四十歳

 BAR『Hangover』のオーナー


・二四八(にし わかつ)

 二十一歳

 『Hangover』のアルバイト従業員


・鈴木一郎(すずき いちろう)

 三十五歳

 「シュールストレミング」を用意した人物


・笠原信明(かさはら のぶあき)

 二十九歳

 現在無職?


<女性ゲスト>

・小鳥遊小鳥(たかなし ことり)

 二十二歳

 大学生

 過去に笠原との交際歴あり


・ヒカル

 本名、年齢共に不詳

 水商売

 現在、笠原と交際中



『ビジョン』の中で乾杯の挨拶をしていた

往年のコメディアンが大烏だとすると

この男性ゲストの中に

私に毒入りワインを渡した人物がいる。

忘れもしない。

あの病的に色白で不健康そうな痩せすぎな男。

そして男は

明らかに私よりも年上だった。

となれば二四は除外できる。


つまり残るは宿儺と鈴木と笠原の三人。


「どうしたの三ノ宮さん?

 随分真剣に見てるのね」

私は佐藤の声で我に返った。


「こ、これ・・。

 元カノと今カノが鉢合わせしてますけど、

 だ、大丈夫ですかね?」

私は咄嗟に誤魔化した。

そして

笠原も犯人から除外できると思った。

女子大生と水商売というタイプの違う

女性二人を惹きつけるような魅力が

あの男にはない。

あくまで私の主観だが・・。


「・・もしこの笠原信明が私の知ってる男なら」

ふいに佐藤が口を開いた。

「人間のクズよ」

そこで佐藤は一旦ミルクティーを飲んだ。

それは一瞬聞き間違えたのかと思われるほどの

短い言葉だった。


その言葉に私は呆気にとられた。

佐藤は私の表情を確認すると

「ふふっ」と笑った。

「御免なさい。

 急にこんなことを言われても困るわよね。

 そうね。

 ゲストのことを悪く言いたくはないんだけど。

 何でこの男が今回の集まりに

 招待されているのか・・。

 私にとっては皮肉な運命としかいえないわね」

そう前置きして佐藤は語り始めた。

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