第23話

二階に上がると

真っ直ぐ伸びた廊下の右側に部屋が並んでいた。

大神の説明通りその数は五つ。


ただ、大神の話にはなかったが

二階には一階と比べて大きく違う点があった。

各部屋のドアの対面に窓があり

外の光が廊下に差し込んでいた。

私はその自然な明かりに誘われて窓に近づいた。

三方をコンクリートに囲まれた中庭が見えた。

もう一方は鬱蒼と茂った森に塞がれていた。

明日はこの中庭で

「開封会」と称されたバーベキューの予定だが、

この広さなら十分すぎるだろう。


私は窓を開けた。

途端に生暖かい風が私の顔を撫でた。


中庭へは右棟の主の部屋の前にあるドアからしか

行き来できないとのことだったが、

なるほど丁度目線の先にその入口が確認できた。


私は窓を開けたままにして

一番手前の部屋に入った。


その部屋は一階の私と佐藤の部屋と

造りが反対になっているだけだった。

ドアを開けて右手にユニットバスがあった。

部屋の左奥には机と椅子があり、

右奥にはベッドが備え付けられていた。

小さいながらもクローゼットもある。

私の住んでいるワンルームのアパートよりも

はるかに広く、

簡易な造りとはいえ、

ゲストルームとしては十分すぎた。


そして一階の部屋と唯一違う点が一つ。

部屋の奥に窓があった。

私は窓の方に進んだ。

そしてすぐにその異様な光景に気が付いた。


窓には鉄格子が付いていた。


得体の知れない不安が

私の心に影を落とした。



私は頭を振って掃除に取り掛かった。

しかしどこを見回しても

塵一つ落ちていなかった。


結局、二階の部屋はどの部屋も綺麗で

五つの部屋を掃除するのに

一時間もかからなかった。

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