第21話

私と男装の麗人が部屋に入ると

中には二人の人間がいた。


部屋の中央には

膝までの高さのテーブルがあって、

それを挟んでソファーが置かれていた。

一方のソファーに二人の男女が並んで座っていた。


一人は初老の男性。

七十歳前後だろうか。

ボリュームのある髪は真っ白で

オールバックに纏められていた。

長い眉毛と口髭も白く、

やや垂れ気味の細い目は

温厚そうな性格を表していた。

服装は黒のジャケットに黒のパンツで、

ジャケットから覗く白いシャツには

蝶ネクタイが付いていた。

まさに誰もがイメージする

執事然とした格好だった。

背筋がピンと伸びていて

年齢を感じさせない若々しさがあった。

細身の体は自己管理の賜物だろうか。


その隣に腰掛けているのは女性だった。

男性よりも少し若い。

しかしそれでも六十歳は超えていると思われた。

服装はこちらも白と黒を基調としていた。

メイド服というのだろうか。

当然スカートを履いていた。

その髪は鈍い赤色に染まっていた。

そして髪の色に合わせたのだろうか、

赤い縁の細い眼鏡をかけていた。

眼鏡の中の目は小さく、

大きな鷲鼻に尖った顎、

頬がこけていて

子供の頃に母が読んでくれた絵本に出てきた

魔女にそっくりだった。

気難しそうな人というのが第一印象だった。

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