第2話 目覚め
「あら? 起きた?」
「頭がいてぇ……」
俺は体を起こすと、目の前に見えたのは一切見覚えがない場所だった。
「ここは一体どこだ?」
「どこって医務室よ! いつもいつも来ないでくれるかな。もう平気なら教室に戻りなさい。もうすぐ授業が始まるわよ」
「授業??」
「何寝ぼけてるのよ、ホラホラ出ていきなさい」
俺は医務室を追い出された。
部屋を出ると廊下と思わしき場所に出る。見渡すと大きな建物の中にいるようだった。
(ねえ! 君は誰!?)
「うわ! びっくりした! なんだよこれ!」
急に頭の中に声が聞こえてきた。
(僕だって驚いてるんだ。起きたら僕の意識とは別で勝手に体が動くんだもの)
「俺だってマジで訳がわからないよ! 起きたらここに居たんだ」
(とりあえず教室に戻らないと……僕の言う方向に行って)
「分かったよ。どっち行けばいいんだ?」
(右に行って階段を上がって……)
(ここが教室だよ)
「広いなこの学校」
「ジャン何してるんですか? 授業が始まりますよ」
「へいへい」
教室に入ると何十人と生徒がいて、教室に遅れて入ってきた俺の事を見ていた。
(三段目の空いてる席に座って)
「はいよ」
俺は言われた空いてる席に座る。頭の中にさっきの声が聞こえてきた。
(ねえ君は本当に誰なの? 僕の体を乗っ取る魔法でもかけたの? それとも呪い?)
(お前何言ってんだ? 魔法とか呪いとか! あるわけないだろ)
(え!? どういう事!? もしかして魔法を知らないの?)
(知ってるも何もそんなものないだろ! 俺のこと馬鹿にしてんのか?)
(君ここの国がどこか知ってる? 君はなんて国から来たの?)
(この国? 知らないよ! 俺は日本って国だよ)
(全く知らない国だね。この国はロア王国という場所でここは王都にある学校なんだよ)
(はぁ!? ロア王国とか知らねぇ〜!)
(本当に訳が分からない。とにかく僕の名前はジャン・アウル。君は?)
(俺? ゆうただよゆうた!)
頭の中で起きている会話を、
(ユウタか。聞き慣れない名前だ)
(ジャンて事はここは外国なのか?)
(とにかくこの状態を後で、先生に尋ねてみるしかないよ)
「ジャン!? Mr.ジャン!?」
(先生に聞いて分かることなのか?)
「Mr.ジャン!!!!!」
目の前には、先生と思われる人が立っていた。
「さっきから呼んでいるのに返事しないとはどういう事ですか!?」
「あ!? なんだようるせーなババア!」
俺の発言で周りがザワついた。
(ユウタ!! 先生に向かって一体何言ってるんだよ!!!)
(だって本当の事だろ?)
「Mr.ジャン! 授業が終わったら私の研究室に来なさい」
(うわ〜最悪だ。あの先生怒ると長いんだよ説教が! というか体返してよ!)
「お! 戻れた」
(なんだよ入れ替わっちまったのかよ)
(とにかく大人しくしててよ)
(はいはい)
ジャンと共に一日授業を受けて分かった事は、ここは日本じゃないという事。そもそも地球ですらないという事は分かった。
当たり前のように魔法を使った授業が行われて、初めて魔法というものを見た。
(おいジャン! 俺ってば初めて魔法を見たよ。凄いな)
(初めて見たんだ)
(俺がいた場所には、魔法なんて一切存在しなかったからさ)
(そういえばユウタは何歳なの?)
(俺か? 12歳だよ)
(それじゃあ僕とおんなじだね)
(ユウタはニホンという場所では、一体何が起こったの?)
(ん〜、俺は日本で確実に死んだんだよ! だけど目覚めたらここに)
(えっ!? そうなんだごめんね……)
授業が終わると先程の先生の所へ向かい、長い長い説教を聞かされた。
「すいませんでした」
「次からは気をつけるように」
(本当に長かったな。あのババアの説教)
(ユウタのせいだからね。それとどうにかならないのその言葉遣い)
(それは無理な注文だ)
学校を出て帰宅しようとすると、呼び止められた。
「おい! ジャンこっち来いよ」
三人組の男達に囲まれ、俺の意思とは関係なく男三人の後をついて行くジャン。
(ジャン、こいつら誰だよ?)
(…………)
(おいってば!!)
学校の校舎裏の方へと、人があまり来ないような場所へ連れて行かれた。
「お仕置きだぞジャン!!」
一人の男がそう言うと、三人はジャンを取り囲んで蹴ったり殴ったりし始めた。
「オラオラ! 今日もお仕置きだ! 落ちぶれた一傑が生意気なんだよ!」
「羽ばたかないフクロウが!」
ジャンは一方的に殴られ、蹴られ続けた。
(おいジャン! なんでやり返さないんだよ! 俺に替われ! 俺がやってやる!)
(やめてよユウタ……疲れれば飽きて帰っていくから)
「今日は……このぐらいにしてやる。帰るぞ」
三人は気が済むまで殴ると、ジャンを置いて帰っていく。
(なんでやり返さないんだよ)
「彼らは僕より上の貴族なんだ。だから歯向かうと、ろくな事にならないんだ」
(貴族なんてあるんだ。ジャンも貴族なの?)
「一応ね。男爵なんだよ」
(男爵って偉いの?)
「下っ端も下っ端だよ」
(ジャンって何? いじめられっ子なの?)
「ユウタはハッキリ言うんだね……そうだよいじめられっ子だよ」
仰向けになったジャンは、怪我した自分の体に手をかざすと、緑色の光が手から発光した。
その光を浴びると怪我した場所が治っていく。
(おおおおお! 凄え! もしかしてこれがジャンの魔法なのか!?)
「そうだよ。回復魔法なんだ」
(まじかよ! 凄いじゃん! 珍しい魔法なんじゃないの?)
「ハハハ、まあ少しは珍しいかもね……でも駄目なんだ」
(駄目ってなんだよ)
「攻撃魔法とか防御魔法とかの方が重宝されるんだよ。回復魔法も悪くはないけど、僕の家は特に攻撃魔法じゃないと駄目なんだ」
(家ってどういう事だよ)
「僕の家って元々は凄い名家だったんだ。このロア王国が領土を広げた時に最も戦果を上げた功労者の家柄で、ロア王国の三傑って呼ばれた三つの家の一つなんだよ」
(なんだよ超すごい家じゃん)
「だけどさっきあいつらが言ってた通り、落ちた一傑なんだ。三傑の家で男爵なのは僕の家だけで、後の二つの家は侯爵なんだよ」
(侯爵は偉いのか?)
「男爵なんかより遥かにね。僕の家の家紋にはフクロウの絵が書かれているんだけど、羽ばたかないフクロウなんて呼ばれてたりしてるんだよ」
(なんでそんな落ちぶれたんだ? 凄い家なんだろ?)
「戦いで成り上がった家だからかな。戦争が落ち着いて平和になった時、腕っぷしよりも政治や経済、貴族とのコネとかそういうのが上手い人が重宝されるようになって、僕らの家はどんどん落ちぶれていったのさ」
(ふ〜ん。まあ俺にはちょっと難しい話だな)
「ハハハ。僕が強い攻撃魔法とか持っていたら頑張って活躍して、男爵よりもちょっと上に成りたかったんだけどね……僕は回復魔法だから駄目さ」
(俺はすげーと思ったけどな、ジャンの回復魔法。怪我とか治ってるじゃん)
「そんな魔法よりも、相手を倒せる魔法の方がいいんだよ」
(そうなんだ。なあ攻撃魔法って炎とか氷とか雷とか出たりするのか?)
「そうだよ。そういう魔法を使える人もいるよ」
(すげーなそりゃあ)
「大変だ、そろそろ暗くなっちゃう。寮に戻らないと……門限が厳しいんだ」
ジャンは怪我した体で立ち上がり、走って寮へと向かっていく。
寮に到着するとジャンはすぐに部屋に戻る。
「なんだか今日は果てしなく疲れたから、今日はこのまま寝るよ。ユウタおやすみ」
(俺も今日は疲れたわ。おやすみジャン)
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