第7話

 翌朝。


 昨日は転校生ということで、先に登校していた二人と今日は一緒に登校している。なので、自転車ではなく歩いて登校だ。誰かと一緒に登校することが小学生以来で、その時ぶりに誰かと話しながら登校した。


 「今日も呼びに行くから。お兄は待っててね」


 「でも、昨日と同じ場所なら……」


 「待っててね?」


 「ハイ」


 校門に差し掛かったところでそんなやり取りを有紗と交わして、今日の昼の予定が決まった。


 有紗と別れて芽衣と廊下を歩いていると、昨日のクラスメイト、古賀さんがいた。何故か腕を組んで壁にもたれかかり、こちらを見ている……気がする。


 「新君。ちょっといい?」


 「えっと……」


 声を掛けられているけど、芽衣と話していたので確認を取るために芽衣のほうを見る。芽衣は淡々とした口調で


 「私は教室に行くから、進作君は用があるなら行っていいよ?」


 「ありがとう、芽衣」


 「話は終わり?なら、こっち来て」


 古賀さんに付いて歩いてきた廊下を少し戻る。そして、人目の付きにくそうな空き教室に入る。こんなところで一体何を話すのだろう。


 「ドア、閉めて」


 ドアを後ろ手で閉めて、要件を聞く。


 「それで何の用かな?」


 「昨日といい、今日といい、いつ彼女なんて作ったわけ?」


 ……彼女?

 彼女なんて俺にはいない。古賀さんが誰かと俺を見間違えたのだろう。


 「俺に彼女はいないよ、見間違いじゃない?」


 「さっきも隣にいたのに?」


 さっき……。あ、有紗と芽衣のことを言っているのか。見間違いじゃなくて誤解だったみたいだ。


 「あの二人は妹だよ」


 「妹?新君、一人っ子って自分で言ってたの忘れた?」


 「ちょっと事情があって、妹になったんだ」


 「それ、義妹ってことだよね」


 「そうなる」


 「ふーん……。話したかったのはそれだけ。もう行っていいよ」


 聞きたいことを聞いて、用の済んだ俺を冷たい目で見る古賀さん。その視線から逃げるように足早に空き教室から出た。

 普段から絡んでくる人だけど、あんな目は初めて見た。


 さっきの件で俺の立場が変わらないことを祈って、教室に向かった。




 「まだ、いるんでしょ?わかってるから」


 「気付いてたんだ?」


 新君と話しているときに、私にだけ見えるような位置でこっちを覗いていたくせに。わざとらしい。


 「新君の言ってたこと本当なの?」


 「それを聞いてどうするの?」


 どことなく温和な雰囲気から漏れ出る仄暗い嫌な感じに、私の直感が危ないと警鐘を鳴らしている。


 「どうもしない。でも、真偽は知りたくなるのが人ってものだと思うけど?」


 「確かにね。そうだなぁ、一つ条件を飲むなら教えてあげる」


 「……なら、いい。どうせ碌な条件じゃない」


 「そう、残念」


 ニコリと微笑んで、教室から出ていく彼女。その足取りは、まるで勝ちを確信した強者のように軽やかだった。


 もしかしたら新君は、手の届かない存在になるかもしれない。でも、今ならまだ……。






新作です。

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093073533257096


 

 


 


 


 


 

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