第5話

 帰宅後。いつものようにシャワーを浴びて自室に戻る。彼女たちはどうやら友達と遊びに行くそうで、帰りは遅くなると昼休みに話していた。


 転校初日でもう友達がいることに俺は驚ていたけど、今考えるとそれが普通なのかもしれない。入学初日から仲がいい子達だっていたからな。


 それに比べて俺に未だに友達が出来ないのは何故だろう。積極的に男子生徒には話しかけていたんだけど。いっつも逃げられる、というか躱される。そして今では見事にボッチパシリだ。


 寝っ転がって考えているとブブッとスマホが振動する。母さんからかな。画面を見ると、有紗と名前が表示されている。


 (これ、可愛くない?)


 その直後もう一度スマホが振動し、写真が送られてきた。写っているのは有紗と何かのドリンクだ。そのドリンクをよくは知らないが、テレビで何度か見たことがある見た目をしている。


 (うん。可愛いと思う)


 (だよね♪)


 そこで会話が途切れた。この手の連絡を母さん以外として来なかったので、こういった時の対処法が全くわからない。


 どうするべきなんだ。何か返すべきなのか。一人部屋で迷っている。傍から見れば不審者もいいところだ。


 「うわっ」


 迷っている最中にまたスマホが振動して、驚いてしまった。危うくスマホをフローリングに叩きつけるところだった。


 (今日はご飯までには帰るつもり。何か買って帰ったほうが良いものある?)


 (ちょっと待って。冷蔵庫見るから)


  部屋から出てリビングに足を進める。一昨日母さんが色々買ってきてたから、ある程度食材はあると思う。けど、一応確認はしておこう。


 えーっと。野菜類は……ある。冷凍物は別にいらないし、冷蔵庫は……。あー卵が少ないのと牛乳とコーヒーがないか。母さんが良く飲むからなぁ。


 いや、これ頼んでいいのか?帰ってきたときに家で殴られるとか……ないよな?


 「有紗はないか。多分」


 あの二人はこれまで会ってきた女の人の中で一番親切にしてくれている。母さんを除いてだけど。その親切を信用しないで変に疑うのは、彼女たちに失礼だ。


 「よし、お願いしよう」


 スマホをポケットから出して、メッセージを打ち込む。


 (生卵と牛乳、あとコーヒーをお願い)


 ふぅ。何故かメッセージを送っただけなのに疲れたな。そう一息ついた瞬間に返信が来た。


 早すぎない!?


 いや、俺が遅いだけなのかな。母さんも文字打つの速かったし。


 (りょーかい。コーヒーはどのメーカーのかな?)


 (〇〇cafeってやつ)


 (オッケー)


 かわいい猫が親指を立てているスタンプが送られてきて、連絡が終わる。今度は分かりやすかったな。


 母さんや芽衣が何時帰ってくるかは定かではないから、時間になったら多めに夕飯を準備しておこう。


  


 

 

 

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