第3話

 昨日母の突然の再婚報告といきなりの同棲生活が始まったが、学校は通常通りあるので登校しなくてはならない。

 二人は転校生扱いになるので、今朝は俺よりも早い時間に学校に向かっている。なので俺はいつも通り一人悲しく自転車で登校した。


 学校に着けば、さっきまでの寂しさとは一転……とはならない。やはり男の数が少ないので話し相手がいない。結局登校と変わらず悲しく教室へ向かうのだ。


 教室では俺の扱いは、パシリ同様なのだが用がない場合はいない者として扱われているので、皆俺のことなど気にせずいる。

 だから制服は平気で着崩すし、化粧の匂いは凄いし、そこいらで抱き合っているし、ドアの前で居座るし……。挙げだしたらきりが無い程文句が出てくるが、こういう文句は思っていても口には出せない。なぜなら一回でも口にしようものなら、数の暴力で二度と登校できない体にされるに決まっているからだ。


 噂で聞いたことだが、クラスの女の子たちに逆らおうとした奴がこの学校にいたらしい。けれど、次の日からそいつが登校することはなくなったとか。

 そんなことにはなりたくないから、俺は教室の隅で静かにすることを徹底している。


 「新君」


 おっと、どうやらパシリの時間のようだ。今日も軽いおつかいくらいがいいなぁ。


 「今日の昼時間あるよね?」


 「えっ?」


 昼?昼食後の休み時間の事だろうか?それなら問題ないと思うけど……。


 「や、休み時間なら空いてるけど……」


 「はぁ?昼食の時間は空いてないの?」


 「先約があって。……ごめん」


 あまりに威圧的過ぎてつい謝ってしまった。けど、断らないと家での俺の扱いが酷くなりかねないし。俺だって、さすがに家の中くらいは穏やかに過ごしたい。

 

 「ならいいや。……別に私の頼みごとじゃないし」


 「どういうこと?」


 「……なんでも」


 そう言って去って行ってしまった。どういうことなのだろう?間違いなく普段おつかいをお願いしてくるクラスメイトだったけど……。


 でも、引き下がってくれてよかったぁ。今日は先約の優先度が高すぎて断るしかなかったからな。それに、あれ以上粘られるとクラスの中での印象が悪くなる可能性があったからほんとに助かった。


 視線を窓の外へ移し、昼食の事を考える。昨日二人から、弁当は持っていかなくていいと言われたので持ってきてない。穏やかに過ごしたいと思っているけど、これがもし家族内いじめの始まりだとしたら?あり得なくはないし、正直いじめの線はかなり濃厚だろう。持ってかなくていいというのが、そもそもおかしい。


 普段から学食を利用せずに弁当を持ってきている俺にとってそれは昼飯抜きを意味しているからだ。学食を利用しない理由は、食堂に行くと財布扱いされるからだ。それで一回大変な目にあった。


 そしてもう一つの理由。集合場所を決めていないことだ。昼は一緒に食べようと昨日は言っていたけど、どこで集まるかを一切決めていない。……これはもう確定じゃないか?


 風に吹かれる草木を見ながら思ってしまう。ついに、家にすら居場所がなくなるのかと。母さんが再婚したことは喜ばしいことだ。あのワーカーホリックを留めてくれる存在がいるというだけで安心できる。けれど、これから先の約二年間。学校でも家でも動く物のように、扱われて生きていくのは精神的に辛すぎる。


 とはいっても、逃げる所などないのでどうしようもないが。


 あれ?そういえば何で二人は、俺が弁当だってことを知ってたんだ?そんな事一回も話してないのに……。






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三日間隔で投稿するとか言ってすみませんでした。おそらく、ずっとこのペースでの投稿になります。

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