第3話
「そういう訳で、ねえちゃんは幼なじみに売られたというわけだ」
アンビリーバブル。ロンに裏切られて誘拐された。
私を見下ろすのはいかにも破落戸、といった上半身裸の大男である。腰にはナイフを差している。
私は後ろ手で縛られ、口にはタオルが巻き付けられていた。
あー、とか、うー、とか言う声しか出ない。
「かわいそうだねえとは思うけど、人と違うように産まれたのが悪いのさ」
大男はそう言うと、どこから出したのか鍵束のようなものをくるくる回し始めた。
「俺たちに捕まったのはまだ”マシ"さ。あの幼なじみ、結構交渉大変だったんだぜ?
値段は勿論、境遇もちゃんとしてないと承知しなかった」
どういうことだろうと首を傾げると、意外にも親切らしい破落戸は丁寧に教えてくれた。
どうせなら座ってほしかった。上を見上げすぎて首が痛い。
話しをまとめるとこうだ。
ロンは私を誘拐する男達と、私の値段や扱いについて相談していたらしい。
そして扱いというのは、たとえば血を抜いたり、切り刻んで売ったり、食べたり、飲んだり、というパーツに分ける食材系はNGで、不特定多数に春を売るような娼館系もNG、できたら観賞用やペットとして大切に扱ってくれる人を探してくれていたらしい。
おいおい。
「まあ、俺たちはまだマシな業者だと思うぜ。これから連れて行くところも、変人だけどまあ悪いやつじゃないし。
大切にはしてもらえるんじゃないか?」
変人かあ・・・。夜の相手はさせられるのかな・・・。やだなあ・・・・。
思わず遠い目をしてしまった。
あっさり受け入れてしまったのは今世では10くらいでも、前世をあわせるとトータルの年齢は30歳以上だから仕方ないだろう。
どうしようもない現実は、嘆くのではなく受け入れるしかないのだ。
嘆いたり悲しんだところで、何も変わらない。
「これで良かったんじゃないかと思うよ」
ぼそり、と大男が呟いた。
今まで平気だったのに、涙がぶわっと出てきて、視界が滲んだ。
その後に続く言葉を私は知っていた。
「どうせお荷物だったんだし」
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