第2話

 次第に私は大人になっていった。

 その間は特に面白いことはなかった。

 面白くないことはあった。


 始めに思ったとおり、ここは犬や猫の耳や尻尾をはやした獣人の住まう世界であること。

 そして私はその中でも珍しい、獣人から産まれているのに耳も尻尾もない獣人であること。

 つまり私は前世と同じ人間なのである。

 アンビリーバブル。悲しすぎる。


 ここでも私は他の人と違う人生を歩まねばならぬらしい。

 私のような獣人が生まれる確率は、どうやら前世でアルビノが産まれる可能性とほぼ同じらしい。


 歩いていると珍しい顔をされる。それだけじゃなくて誘拐されそうになったこともある。

 なんでも私のような耳なし、尻尾無しの獣人の血を飲むと不老不死になれるという言い伝えがある地域もあるらしい。


 なんてこった。

 いきなりハードモードの今世に絶望していた。

 前世が辛かったら、今世はハッピー幸せ、逆ハー万歳ではないのか。

 神様よ、私が一体何をしたというのだ。

 前世の知識を使って無双は諦めた。だってパソコンがない世界では、プログラミングの知識は役に立たない。

出来ないSEだった私は、プログラムは分かっても、なぜ動くのかということや、サーバなどのネットワーク環境についてなど何も知らなかったのである。

 例えるならば、ガスを使って料理は出来るけど、どのようにガスが供給されているのか、ガス台の仕組みはもちろん、なぜガスが燃えるのか、ガスの元素はなどすべて分からないのと一緒なのである。


 よって同じ世代の子達の真似をし、ちょっとだけ計算が得意な子として私は周りから認識されていた。



 アルビノのような耳なし尻尾なしの悩みは、なんと我が国の第三王子が解決してくれた。

 びっくりだ。


 第三王子は前世でいう理系のロボットオタで、何でもかんでも作るのが好きだったらしい。

 今の世界の魔法っぽいもののような電気っぽいものを組み合わせて、一日電気に当てたら充電する、付け耳と付け尻尾を作ってくれた。


 さすがに試作品はいかにも作り物という感じだった。

 それでも満足げな第三王子に何も言えず、私や両親が愛想笑いをしていると、第三王子の側近という金髪の長髪を首のあたりで一つに結んだ、眼鏡をかけた側近がとても可愛らしい白の耳と尻尾にしてくれたのである。

 ちなみに側近は豹の獣人みたいだった。


 白は汚れが目立つからやめてほしかった、がそんなことを言えるはずなんてない。

 第一、機嫌を損ねて、余った木を繋ぎ合わせたみたいな耳と、毛糸にボールをくくりつけただけみたいな尻尾に戻るのはいやだった。


 充電が必要なので私の外出は1日おきになった。

 学校に行くときは、フードをすっぽりとかぶり、だぶだぶの上着を着て耳や尻尾がないことが分からないようにした。

 隣に住むロンという名の男の子が手を繋いで一緒に行ってくれた。


 ロンは熊の獣人で身体が大きかった。

 私はロンのことが好きだった。


 でもロンは私のことが好きじゃなかった。

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