究極のお子様ランチ


「こ、これは一体…」


「びっくりしたやろ?ここではこれが普通なんやで?怖いやろ?」


小さなテーブルの上にあるお皿にはとても大きなハンバーグ、小さめのオムライスに唐揚げ、エビフライ、野菜にプッチン出来るプリンがあった。お子様ランチなんていつぶりだ?

しかも出来たてだからかすごく湯気もたっており、ほかの園児たちもヨダレを垂らしてこっちを見ていた。


「お変わりはもちろん出来ますので言っていただければご準備します。今ある在庫はほどですね」


料理人のお姉さんが帽子を取りつつ、簡易的なキッチンに戻り、置いてあったタッパーを開ける。中には野菜とサラダチキンがあっただけだった。え?もしかしてあれだけなの?


「お姉さんもこっちで食べませんか?」


「いえ…それは…」


「遠慮せんでええて!べっぴんさんやねんから、俺ん所でも構わんで!」


「…分かりました。では失礼して」


お姉さんはへと座る。圭介くんはダメなんだね。今、俺の周りの主要なメンバーとして料理人のお姉さん、美海みみちゃん、春先生、さくらがいる。他の園児や先生も俺の方に座っており、圭介くんの方は気の強そうな園児が15名だった。

園児の数は確か45名だったから、こっちの方が多いのかな?


「なんでみんなそっちに行くんや!」


「まぁまぁ、ほらっ食べましょう。はいあーん」


「おぉ!あーん!うぅん!やっぱ女の子に食べさせてもらうのは格別やな!」


圭介くんはまるでキャバクラを楽しむ人のような振る舞いをしていた。確かにあれは困るな。


「お姉さん、作ってくれてありがとう。じゃあみんな。手を合わせようか…では、いただきます」


「「「「「いただきます!」」」」」


俺はお姉さんに感謝を伝えてから、ハンバーグを切ってみる。中からジュワッと肉汁が溢れ、すごく美味しそうな香りがより一層湧き出す。

他の園児も俺の様子を伺っているが、全員が唾を飲み込んでいた。俺は1口サイズに切り、口に運ぶ。

俺はあまりの美味さに意識が飛びそうだった。


「う、美味すぎる…美味すぎてびっくりした…こんな美味いの!?なんなのこの肉!?噛めば噛むほど油が出るし、肉肉しい感じがまた食欲をそそる!このソースもそう!このハンバーグに合うように作ってくれてる!最高すぎるよ!」


「なんか…照れますね…」


お姉さんは恥ずかしそうに頬をかいていた。

いや、もっと誇ってくれよ!


「ほらっ!食べてみてよ!こんなに美味しいんだよ!」


俺はハンバーグを1口サイズに切るとお姉さんの口に持っていく。園児たちはぎょっとした表情をしているが、気にならなかった。

お姉さんは最初は否定していたが、しぶしぶ口に入れると驚いた表情をしていた。


「こ、これを私が作ったんですか!?美味しいです!」


「美味しすぎるよね!?ほんとすごいね!…あむっ…羨ましいよ!こんなに美味しいの作れるの!今度教えてよ!」


俺は思わず感動してお姉さんの方へ近寄る。お姉さんは顔を手で隠しており、恥ずかしそうだった。


「…お兄ちゃん…それ、食べたい」


美味しそうだったのか、美海ちゃんはハンバーグを指さしていた。やっぱり食べたいよね!


「美海ちゃんも食べる?…代わりに褒めてあげてね?はいあーん」


「あー…これは…美味しすぎてびっくりした…」


美海ちゃんも驚いているのか食べてから微動だにしなかった。みみちゃんの口調も変わってるぐらい美味しいのは才能としか思えない。


「でしょ!?じゃあ唐揚げも…うわっ店出して欲しいくらい美味しい…何このジュワッて出るし、衣もカリカリ、味は子供向けに調整されてるし…神か?神が降臨したか?」


俺が絶賛していると春先生はもう堪らなくなったのか俺に唐揚げを要求してくる。ヨダレ垂れてるから拭いてね。


「ねぇ!先生にも食べさせてよ!」


「春先生も食べる!?すごいよ!?」


「あー…これは唐揚げじゃないくらい美味しい…すごすぎて何も言えない」


先生も美海ちゃんと同じく食べてから微動だにしなくなった。こんな美味しいの作れるのは逆に怖くなってきた。俺は次のエビフライに手を出そうとすると桜が咳をしている。なるほど、食べたいのね。


「そこのもの。私にそのエビフライを食べさせなさい」


「ですが、毒味をしなければお嬢様の命は…」


「構いませんわ!早く食べさせなさい!もう我慢ならないのです!」


桜は俺の箸を奪い取るとエビフライを一口食べる。微動だにしなかったので、心配だったが体を震わせるとエビフライは俺に差し出す。

俺は1口食べると美味すぎてどうにかなりそうだった。衣からエビまで全てが完璧としか思えなかった。桜からエビフライを皿の上に置いてもらうとお姉さんにもう一度感謝を伝える。


「ありがとうございます!」


「お、お気になさらず!美味しく味わって貰えてこちらもありがたいです!」


「あの…よろしければ他の方の分も作って貰えますか?多分、みんな待ってますから」


俺は周りを指さすと園児たちが俺のお子様ランチを狙っていた。だが、絶対に渡す気は無い!これは俺のものだからな!


「…かしこまりました!作らせていただきます!」


お姉さんは感動していたのか目を擦り、キッチンの方へと戻って行った。園児たちはお姉さんにつられてキッチンの方まで歩いていった。

そして、俺たちはというと…。


「先生のお弁当少しあげるから、エビフライを!」


美海みみのもあげるから、オムライス!」


「私のもあげますから、ハンバーグをくださいまし!」


「待て!あげるから全部は持っていくな!あぁ!エビフライのしっぽだけ返すんじゃねぇ!やめろぉ!俺の…俺のお子様ランチがァァァ!!」


このお子様ランチにとりこになっていた。

それから3時間ほどご飯に夢中になり、帰宅する時間となっていた。

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