お昼ご飯

「さぁ!みんな!お昼ご飯の時間ですよ!」


「「「はーい!」」」


俺はほかの園児とたわむれているとあっという間にお昼の時間になった。もうそんな時間なのかってことはあの人が来るな。


「おう!兄ちゃん!来たで!」


「いらっしゃいませ」


「また圭介けいすけくんは!照史あきとくんもそんなお辞儀しなくてもいいのよ」


春先生は俺に近寄り、常連さんいや圭介くんから守ろうとしている。大丈夫だって!


「ご飯の時間やな!うし、みんな!運動場で食べよっか!今日はお祝いや!全クラス合同でな!みんなはお弁当を持って外に出るんやで!」


「「「「「やったぁぁぁぁ!!」」」」」


圭介くんの話を聞いていたのか他のクラスの園児たちも喜びだした。春先生は戸惑っているが、圭介くんはこれが普通だ!的なたたずまいをしていた。1年の年月のおかげで慣れてるんだろうな。俺は全くだ。


「…一緒に食べよ?」


いつの間にか美海みみちゃんは俺の横に来て服を引っ張っていた。心配そうな表情もまた可愛らしい。その手には小さなお弁当を持っている。


「そうだね。一緒に食べよっか…って俺、お弁当持ってない…」


「そこは安心してね。照史あきとくんと圭介けいすけくんは給食があるからね!だから、大丈夫だよ!」


春先生は俺に目線を合わせ、そう話しかけてくれた。なるほど、給食か。いつ以来だろう。


「兄ちゃん!わしは先生と協力してブルーシートひいてくるから、他の人らの誘導頼むで!じゃあ!」


圭介けいすけくんは近くに居た他の先生に話しかけるとクラスとは別の方向へと走っていった。

さて、俺もやるか!


「じゃあみんな移動しよっか!お弁当は持った?」


「「「「「はい!!」」」」」


「いい子だ。じゃあ先生、少し見ていて貰っていいですか?」


春先生は俺の願いを聞き入れてくれた。

頼りがいのある先生だ。


「うん!気をつけてね!」


「はい。美海ちゃんは行く?」


「うん!」


寂しそうな表情をしていた美海ちゃんだが、俺がそういうと明るい表情になった。一緒に行きたかったんだな。


「そっか!じゃあ転んだら危ないし手を繋ごうよ。他のクラスの人達に顔を見せてあげようね。では、他の子達は春先生の指示に従ってね。後で一緒に食べよう」


「「「「「はい!!!」」」」」


今日1番の返事を貰うと俺は美海ちゃんと一緒に隣のクラスへ向かう。ここはぶどう組か。


「皆さん、お弁当を…」


「話は聞いております!大丈夫です!」


「あっ…そうですか。では、外の準備が出来次第、お呼びします。それでは失礼します」


俺はぶどう組の人に別れをいうとりんご組の方へ向かう。だが、クラスの代表者らしき人が扉の前にいた。髪の毛がドリルだと!?しかも金髪だと!?まさかあまり見た事のないお嬢様系か!?


「先ほどの話は聞いておりましたわ。本当かしら?」


本当にお嬢様系だった。ならば乗ってやろうではないか。執事みたいに接してやろう!


「…はい。そうでございます。お嬢様」


俺はちょっとしたカーテシーをしてみる。これで合ってたかな?本で見た通りの仕方にしてみたけど。


「おじょ…!?ありがとう。クラスの子達に言っておいてあげますわ」


「感謝申し上げます。では、失礼致します」


俺はその場を去ろうとするとお嬢様系の人が俺を静止させる。


「お待ちなさい!あなた、名前は?」


「これは失礼致しました。私の名前は高崎たかさき 照史あきと。レモン組に所属しております」


「そう。私は愛ヶ崎あいがさき さくらと言いますの。さくらと呼びなさい。何かあれば私に頼りなさい。あとたまにクラスへ遊びにも来なさい。歓迎するわ」


「ありがとうございます。では、さくら様。また後ほど」


「ええ、ありがとう…あれは欲しいわね…」


何か企みが聞こえたが、無視をして運動場の様子を見る。圭介くんがオッケーというジェスチャーをしていた。じゃあみんなを呼びに行くか。


俺はみんなを誘導し、運動場の方へと歩く。

圭介くんは俺が誘導できたことを褒めてくれた。この人はいつもこうだ。とても優しいんだ。


さて、幼稚園での初給食だ!どんなのが出るんだろう!と楽しみにしていたのだが…。


「お待たせ致しました。お子様ランチでございます」


まさかその場で作ってくれるとは思ってもみなかった。

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