園児たちとの出会い
「う、うぅん…お母さん…」
俺は目を覚ますと母の落ち着くような匂いがなく、誰か違う人に抱かれているような感覚があった。
胸から顔を離すとそこには先生が慈愛に満ちた表情をして俺を見ていた。
「起きちゃった?あきとくん。お母さんは仕事に行っちゃったよ?」
「そうなんですか…寂しいな」
「ぐっ…それと出来たらだけど、これからクラスの子たちをあまり嫌わないで欲しいの。男の子には耐性がないから、暴走しちゃうかもだからね」
俺はなぜそんなことを言う必要があるのか不思議だった。まるで男の数が少ないと言っているようにも聞こえる。先生の言うことは心の中にしまうことにし、俺は先生に降ろしてくださいと言う。
ちょっと残念そうな顔をしても無駄だ。
「先生」
「春先生って呼んでね!」
「春先生、周りを見てもいいです?」
「いいよ!はぐれないように手を繋ごうね!」
先生は俺と手を繋ぐ。先生の手は少し湿っていたが、柔らかく、温かい手だ。優しい人の手は温かい
というが本当だな?と感じた。
「まずは教室だよ!教室は年齢が高い順にりんご組、ぶどう組、レモン組ってなってるよ!あきとくんの場合はレモン組からだね!」
俺は教室を探すと大きく果物が窓にはられていた。外に近いのがレモン組で運動場に近いのがリンゴ組か。おぉ!運動場もなかなかの広さだな。
「運動場には滑り台とかあるし、運動時間で鬼ごっことかするから楽しめると思うよ!」
「そ、そうなんですね。(俺、動けるだろうか)」
「うん!あとはねってここで話すのもなんだし、クラスの子達とも
俺は春先生と一緒に窓にレモンが貼られている前に行く。ここで待っててと言われ、先生は扉を開けら中に入っていった。先生を見つけたのか中から園児たちの声が聞こえる。
さすが子供だ。元気がいっぱいだぜ!
「男の子が来たの?どこなの?」
「どんな子なの?」
「はーい、みんな聞いてね!これから一緒にこの幼稚園で過ごしていく仲間ができたよ!
名前を呼んで来てもらおっか!
せーの!たかさき あきとくーん!」
「「「「「たかさき あきとくーん!」」」」」
「はーい。たかさき あきとで…す?」
俺は適当に挨拶しながら、教室へ入ると園児たちに驚いた。そこに居たのは女の子しかいなかったからだ。園児たちは俺の姿を見ると口を開けて固まっていた。だが、その頬には涙が伝っていた。
「春先生、どうしちゃったんです?」
「あ〜これ泣いちゃうね。よし、あきとくんおいで?」
俺は春先生の元へ近づくと抱っこされる。俺が抱っこされるのを確認したあと、園児たちが先生の元へと駆け寄ってきた。
あと先生…抱きしめが強い。ちょっと痛い。
「「「「うぇぇぇぇ!!会いたかっだよぉぉぉ!!」」」」
「どういうこと?」
俺は先生の手をぺちぺちと叩きつつ先生に聞く。先生は俺に頬擦りをすると耳元で小さく話しかけてきた。抱っこは許そう。頬擦りをやめんか!
「この子達にはもしかしたら男の子が来るってだけ教えててね。そしたら、会えることが出来たのよ。男の子なんて滅多に会えるものじゃないからね」
「それってどういう…?」
「さぁ!みんな!一列に並んで!あきとくんに挨拶していこう!」
園児たちは顔を拭うと覚悟を決めたかのような顔をし、一列に並び始めた。先生は俺を1人の園児の前に降ろすと『何かあったら助けるからね?』とだけいい距離を取った。
俺はどうすればいいか分からず、頭をかくと園児は俺に向かってこういった。
「仕事疲れのパパ?一緒に寝る?」
俺はまだパパじゃないぞ?
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