母の温もり
「アキちゃん、行くよ〜おててつなごうね〜」
俺は気がつけば、母と思しき人に手を引かれていた。服装を見るに幼稚園らしき場所に行くのだろう。名札には『たかさき あきと』と書いてあった。
あれ?俺は確か働いて倒れたあと…あっ…そうか。俺は死んだのか?
「どうしたのアキちゃん?何か疲れたみたいな雰囲気出てるよ?」
母と思しき人は俺を抱っこする。俺は何故か安心感が湧いた。あぁ…これが母の温かみってやつか…。
懐かしい気持ちからか不思議と涙が溢れてきた。
「うぅ…お母さん…」
「…ッ!?…大丈夫、ママはいつもそばにいるからね。何かあったらママに言ってね」
「うん…うん!ありがとう!お母さん!」
俺は母の胸に顔を埋めるとその安心感のおかげか眠ってしまった。俺はその時、夢を見た。
その夢は生前、母が俺にご飯を振舞っている様子だった。母は俺の食べている姿を見て、笑顔だった。
俺はそれが不思議なようでご飯を食べつつ、楽しく話すそんな夢だった。
俺が目を覚ますとそこにはエプロンを着ている人が居た。多分この人が先生なのだろう。俺はその人にお辞儀をすると先生は驚いていた。
「あらっ!あきとくんは賢いんだね!こんにちは!」
「…お母さん、この人は?」
「この人はね、ここの先生だよ!」
「こんにちは!私は春!ここの先生だよ!」
先生は自己紹介をしてくれた。
今は母との時間を楽しみたいから適当に答えるか。
「そうなんだ…でも、もうちょっとお母さんと居たい」
「「…か、可愛い」」
2人は何か言ったようだが、俺には聞こえることはなかった。俺は顔を埋め、より母の心臓の音を聞く。母の心音はとても心地よかったのだ。その様子を見たからか母は俺の背中を一定のリズムで叩き始める。やめろぉ…それは寝る…だめだ。おやすみなさい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私はアキちゃんの顔を見る。その顔はとても安心しているような表情をして、眠っていた。
自分の子供ながらすごくかわいい。ずっとこのまま抱っ子していたい気分だ。
「さっきまでは1人で頑張るって感じだったんですが、急にこんな風になっちゃって。5歳でもまだまだ甘えたがりなんですね」
先生は私の話を聞くと少し考えるように顎に手を当てた。
「ん〜、私はここで数年働いてますけど見たことないですね。ここの幼稚園ではこれまで男の子を25人迎えましたけど、あの子たちはママのことを召使いのようにしてましたよ?」
私はアキちゃんの髪を撫でるとあきちゃんは私の胸に顔を埋める。まるで赤ちゃんみたい。
「じゃあこの子だけなのかなぁ?色んな人に挨拶したり、疲れてそうな人に近づいてたりしてました」
「そうなんですか。じゃあ今日はママさんも一緒に幼稚園で過ごしませんか?他の子達もこの子を楽しみにしてたみたいですし」
先生はとてもいい提案をしてくれた。しかし、私には仕事がある。アキちゃんをこのまま抱っこしていたい気分だけど、先生に任せないと仕事に遅れちゃう。
「ありがたいですが、お仕事がありまして…この子のことをお願いします」
「分かりました。お任せ下さい」
私はアキちゃんの手を起こさないように離し、先生に渡す。先生はアキちゃんを抱っこすると真剣な表情をしている。この先生なら大丈夫だろう。
私はアキちゃんのおでこにキスをすると仕事先へと向かう。今日は早く帰って迎えに来よう。そう私は決め、取引先へと電話をする。
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