男女比がおかしい世界で色んな人に愛される
チキンズチキン
2人の散命
「ありがとうございました〜」
俺は今、ドラッグストアで長蛇の列となっている客を
俺は次のお客さんにいらっしゃいませ、袋はご利用でしょうか?と聞く。
(くそっ!他の社員は何やってんだよ!俺と変われよ!こっちは3時間ぶっ通しだぞ!)
「そのままでええよ。なぁ兄ちゃん…顔色えらい悪いけど、大丈夫か?」
目の前にいる人は常連のお客さんだったようで、俺の顔を見て心配をしてくれたようだ。ここ最近はあまり眠れていない上に6連勤もしなくちゃいけない。しかも休憩なんて1度もとった覚えがない。それが顔に出ていたのだろう。
いいお客さんだ。
「大丈夫ですよ。お気遣い感謝致します。1578円のお買い上げです。お支払いはどうなされますか?」
「現金で支払うわ。せや!これ舐め!飴ちゃん!これでも舐めながらやったらええ!」
「いえ、そのようなものを貰うのは…」
「気にせんでええて!ほらっ!今、誰も何も言わんかったやろ!大丈夫やって!口開けろって!」
お客さんは俺に無理やり飴を舐めさせようとする。困っているとそこに店長がやってきてお客さんに言う。
「申し訳ありません。当店ではそういったことをお断りさせていただいてます」
「ほんなら、お前が打てや!こんなしんどそうなやつにさせんなや!はよ兄ちゃん帰らせろや!」
「申し訳ありません。はぁ…変われ、俺が打つ」
「はい…すみません…」
俺はレジから離れようとした時だった。体が言うことを聞かず、床に倒れ込んでしまった。
周りにいたお客さんは大丈夫!?や救急車を呼ばないと!と叫んでいる。店長は俺の方を見て呆然としているだけだった。
「おい!兄ちゃん!大丈夫か!」
このお客さんだけは周りと違い、レジの中まで入って俺を起こしてくれる。いい人に出会えたものだ。
(体の言うことが全く聞かない…すごく眠い…このまま寝ようかな…)
「兄ちゃん!しっかりせぇ!おい、店長やろ!なんかやれや!」
お客さんは俺の頬を叩きつつ店長を叱責している。この店長は仕事が出来ない上に口だけは立派だからな。店長はお客さんに怒られるとパニックになっていた。
「え、あっ…」
「使われへんな!AED持ってこいや!あと救急車も呼べ!」
「私、呼びました!」
「ありがとう!他の人はごめんやけど、この人の為に居っといてくれ!兄ちゃん!目を閉じるんじゃねぇ!目ェ覚ませ!」
俺はお客さんのやり取りを聞いていたが、俺は限界が来ていた。目を瞑ってしまい、そのまま眠りかけていた。
「お客さんに…出会えて…良かったです…」
「おい!寝るな!しっかりせぇ!何しとるんや!目ェ開けろや!あとちょっとや!踏ん張れ!」
俺は遠くから聞こえるサイレンの音が聞こえるが、そのまま眠りについてしまった。しばらくお客さんの声が聞こえたが、その声も聞こえなくなってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…くそっ!息しとらん!AEDの準備せぇ!救急車までの時間稼ぐぞ!俺は心臓マッサージをするから!その間に頼んだ!」
「分かりました!」
俺はいつもこの兄ちゃんにレジを打って貰っていた。俺が疲れていたとしてもこの兄ちゃんに会えば、その疲れは吹っ飛んでいた。
だが、今日は様子が違った。体がフラフラしていた上に瞳孔もあっていない。そんな中でレジなんてダメだと感じていた。
「くそっ!頼むって…!頼むから起きてくれや…!」
俺は涙ながら心臓マッサージを行う。だが、兄ちゃんは一向に目を覚ます様子がない。もう駄目かという考えが浮かび上がってきた。
俺はその考えを振り払うために軽く頭を振ると人工呼吸と心臓マッサージを行う。
「兄ちゃん!起きろや!俺を置いていくつもりか!まだあかん!俺が許さんぞ!」
「お待たせしました!ご協力感謝します!救急車に運ぶぞ!」
俺は心臓マッサージを止めると救急隊員が兄ちゃんを運んで行った。俺は隊員に無理を言って乗せてもらい、病院まで乗せてもらう。
あの兄ちゃんが集中治療室に運ばれるのを見届けると、俺は椅子に座ると心臓の音だけしか聞こえなかった。
「頼む…俺の元気なんや…生き返ってくれ…」
だが、この想いも虚しく、あの兄ちゃんは死んでしまった。死因は過労死だ。彼が集中治療室から出た時、その顔はとても安堵していたようにも見えた。
「俺を置いていくなんて…ふざけやがって…俺もあとちょっとの人生やったんや…俺も追いつく。また会おうや…」
俺は彼に手を合わせると口から血が出る。
俺は咳が止まらず、床に倒れ込んでしまう。
(まさかこのタイミングか…まぁええか…またな、兄ちゃん)
俺は目を瞑るとそのまま眠ってしまった。
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