第9話 魔法とは

「2人には今から魔法を使うための練習をしてもらうわ。最初からできる人はいないから焦らないでゆっくりやりましょうね。」


盗み聞きをした後すぐに部屋に戻ってオリビアと待っていると、院長が俺たち2人を連れてサラさんのところに連れてきてくれた。


ついに魔法を使えるようになるのかとワクワクしていたが、そんなに簡単にできるようになるものではないことはわかってる。地道に一歩ずつだな。


ただ、期待はしちゃうよなぁ。少なくとも魔法を扱える才能はあるみたいで、全く使えないってことはなさそうだし。


そもそも鑑定の儀をしたけど、体に今のところ変化らしき変化はないんだよな。本当に今から魔法を使えるようになるという実感もない。


「まずは、練習をする前に魔法とはどんなものかについて話していくわ。


2人は私が魔法を使っているところも、お兄ちゃんお姉ちゃん達が魔法の練習をしてるのを見たことあるわよね?


例えばエリーが魔法の練習をしている時どんな様子かな?」


「エリーお姉ちゃんはね、すごくしゅうちゅうしたあとにね、ふわ〜って風だしてくれるの!


あついときはすっごくすずしくなるの!」


へ〜、エリーは風属性なんだな。今のところあんまり話したことないから知らなかったけど。


そういえば、風って何ができるんだろう。水、火、土はそれぞれ生活に役立ちそうなんだけどなぁ。


でもそれでいったら俺の空間属性も何なんだろう。空間って、抽象的すぎて意味がわかんないな。聞いたことない属性で舞い上がってたけど、よくよく考えてみれば明確な使い道が考えつかない。


「そうね、魔法を使うまでに少し時間がかかるよね。じゃあジョンはどうかしら?」


ジョンなら魔法の練習してるところを、たまに見てたからわかるぞ。


「ジョン兄さんはただ手のひらくらいの大きさの火を出すだけなら、すぐにポンって出してたよ。


でも、火の形を変えたり大きさを変える時にはかなり時間がかかってたね。」


ジョンに関してはさっきのオリビアの話を聞いている感じ、魔法が得意な方なのか練習熱心なのかわからないけど、エリーよりは先に進んでいるみたいだ。


火をつけては消してを結構ポンポン繰り返してたし、一回一回集中してじっくりって感じではなかった。


それにエリーがただ風を出すだけなのに対して、形や大きさを変えてたからね。ただ、風は目に見えるものじゃ無いから大変そうだけど。魔法で目に見えるようにできたりするのかな。


「あら、よく見てたのね。ジョンはかなり魔法の才能がある方で、練習熱心でもあるからどんどん魔法が条達していってるわ。


エリーも頑張ってるんだけど、風属性は最初かなり使うのが難しいから苦労してるわ。


じゃあ最後に私が魔法を使ってる時はどうかしら。」


「サラお母さんはね!すっごいの!!お水をヒュンヒュンして、いーぱっいうごかせるの!!」


「すきに形や大きさを変えて色んなことに魔法を使ってるよね。本当に自由自在っていう感じで。


なんというか、自分の手足みたいに使えてるというか、兄さんや姉さんと違っていちいち魔法を使うことに意識をさいてるとは思えないかな。」


「2人ともありがと。でもそうね、私はもちろん魔法の才能があったけど、それ以上に長い年月をかけて練習してきたからこそこれだけ魔法を使えるようになったわ。


ここで、ジョンとエリーがなんで私と違って魔法を使う前に時間をかけてるかを説明するわね。」


おっ、きたきた。俺も気になってたんだよその違い。もちろん練度が違うんだろうなくらいには思ってたけど、その根本が知りたかったんだよ。


ジョンが魔法を使う時に全身から少しずつを出しながら体全体に纏っていってたんだ。多分あれが魔法を使うための源みたいなものなんだと思う。


他の人が魔法を使うときにも同じように黄色のもやが出てた。ただそれを纏う速度は人それぞれで、サラさんが断トツで速かった。


しかも、徐々に体全体に浸透していくというより、一瞬にして黄色いもやが体全体にあらわれるって感じ。


「まず魔法を人が使うには魔力というものが必要なの。魔力っていうのは人間であれば誰しも持っているものなんだけど、人によって魔力の量は違うわ。


魔力量に関してなんだけど、わかりやすくどのくらいあるというのをはかることはできないの。例えば数値化して出すとかね。


だからみんなこの魔法を何回くらい使ったら限界とか、これくらいの時間魔法を使い続けたら限界っていう感じで曖昧に自分の魔力量を把握してるわ。


ただし熟練の魔法使いになると、何となくで今自分が何割くらい魔力を使っているかを感覚で測れるようになるわ。」


・・・俺今魔法学んでるわ。ちょっと感動してる。


「まあ、魔力量に関してはもっと後からでもいいわね。魔力量の伸び方にも才能はあるけど、全く伸びない人なんていないから安心してね。ちょっとずつでも増えていくわ。

 

あと、魔法の種類についても話さなくちゃね。魔法には大きく、戦闘魔法と呼ばれるものと生活魔法と呼ばれるものの2種類があるわ。


そしてさらにそれぞれに定型魔法と呼ばれる、先人達が作り上げてきた魔法があるわ。例えば、ボール系やアロー系なんていう戦闘魔法がそれにあたるわね。


普通の魔法は自分のイメージとそれを作り出すための魔力の濃度が鍵なの。つまり全てオリジナル。10人いれば、同じようなイメージをしても10種類の魔法が出来上がるわ。


それが、定型魔法は細かなイメージなんてなくてもその魔法にあったフレーズを言えば同じ威力、同じ形の魔法が発動するの。


まあ、威力はそんなに高く無いものばかりだけど使いやすいし、生活魔法の定型魔法には便利なものも多くあるから覚えといても損はないわ。  


・・・でも、つまらないわ!魔法は自分のイメージとそれを補えるだけの魔力操作があるから美しいの!その使用者の全てを映し出すのよ!!」


「待て待て!!サラ、落ち着け。


・・・ふぅ、すまんなライル、オリビア。サラは魔法が好きすぎるあまりたまに暴走することがあってな。さっき少し感情が乱れることがあったから、久しぶりに出てきちまったみたいだ。


悪気はないから許してやってくれな。ほら見ろ、もう反省してるから。」


後半の怒涛の剣幕に唖然としていた俺とオリビアがサラさんの方を見ると、


「ご、ごめんね2人とも。魔法のことになるとたまに周りが見えなくなっちゃって・・・。はぁ、またやっちゃった。


しかも理解できなかったでしょ?ごめんね、ここからはちゃんとわかりやすく教えるから許してね。」


・・・サラさんやっばいな、魔法狂いだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る