第8話 対策
「貴族ってなんなの?」
貴族のイメージとして平民を塵芥としか思ってない居丈高なやつら、っていう最悪な偏見を持っている俺は不安で仕方がない。
「あー・・・そうだなぁ。俺たちが今住んでるこの街を管理してる人達のことだ。
民を思いやる素晴らしい人達もいるんだが、悪いやつらもいる。俺たちを搾取する対象としか思っていないようなやつらがな。
だから基本的には関わり合いにならない方がいいんだが、ライルは持っている属性が希少なだけにな・・・。
ま、その辺は俺に任せとけ。伝手もあるからな。」
院長がめちゃくちゃ頼もしく見えるわ。まじ一生ついていきます。あと、伝手ってさっきの騎士団長が言ってたやつかな?
家に帰ったら色々含めて聞いてみよう。
[ラインハルト視点]
「あら、あなたいつの間に帰ってきてたの。オリビアとライルはどこにいったの?」
「あぁ、今さっき帰ってきたところでオリビアとサラはみんなのところに一旦行かせた。
っていうのも少し問題があってな。いや、めでたいことなんだが少し問題があってサラと話しておきたかったんだ。」
不安そうな顔になったサラに、ライルが授かった属性について話すと、
「それは・・・確かにそうなるわね。空間属性って確か今この国には2人しかいないわよね?それで、どっちも国属だったはずだし。
どっかのクソ貴族がちょっかいかけてきてもおかしくないわ。孤児院の子供なんてどうにでもできると思ってるだろうから。」
「あぁ、俺としてもライルが国属になることが反対だとか、大人になるまでは絶対に俺たちの横で面倒を見るとかそんなつもりはないんだ。
あぁ、いやもちろんライルが俺たちと一緒にいたいと思ってくれるならそれが1番嬉しいんだがな。
ただ、俺たち2人でやってやれることには限界がある。ライルの教育にとっては俺たちから離れた方がいい場合だってある。
だから、ブラウン伯爵に掛け合ってこようと思うんだ。」
「それがいいと思うわ。あの人なら悪いようにはしないでくれるだろうし、貸しもあるわ。」
「おいおい、今更伯爵にそんなこと言わんでもあの方が高潔な志を持っている方なのはわかってるだろう。」
「・・・そうよね。少し焦りすぎだったかもしれないわ。私の時と少し被らせてしまっていたみたい。
しかも、ライルへの囲い込みはそれの比じゃないでしょうし。・・・やっぱり心配ね。ブラウン伯爵がどうにかできる範疇なのかしら。」
「あの方には独自の派閥もある。もちろん絶対では無いが、大丈夫だと俺は思ってる。
それに、感情だけではなく貴族としての考えもしっかり持ち合わせておられる方だ。
ライルは間違いなく魔法師として大成する。その時に良い伝手があることに、どれほどの価値があるか理解できないわけもないだろう。」
「確かに派閥まだ持ってたわね。うん、少し安心したわ。
となると、私が今できるのはあの子に魔法を叩き込むことね。絶対にライルのことを守り抜くわ。」
「あぁ、血は繋がってねぇが俺達にとっちゃ可愛い息子だ。手出す奴らは絶対に許さねぇ。」
2人は、扉の前で目に涙を浮かべる少年に気付かず、心に固く誓った。
[ライル視点]
さすがに涙滲んだわぁ。すげぇダイレクトに人の温もりくらうと心がいっぱいになって、涙出てきちゃうことない?いまめっちゃそれ。
トイレに行こうと思ってたんだけど、まさかこんな話聞いちゃうとはなぁ。
親代わりとして愛情を注いでくれてたのはずっと感じてたんだけど、前世の記憶もあってどこかで他人としての感覚があったんだよな今までは。
全部消えた。この2人は俺の第二の親だ。前世では早くに死んじゃって親孝行ができなかった分、今世では精一杯頑張ろう。
まずは魔法だ。せっかく才能があって、この世界で大きな力となりえるならやらない手はない。今世では自分がやりたいことを自由にやれるように努力しようと思ってたが、そこに追加だ。
俺は院長とサラさん、いや父さんと母さんに親孝行をするぞ。まだ、ちょっと恥ずかしいから父さん母さんって本人には言えないけど。
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