第7話 俺の属性は

サイオン君と名前を呼ばれた少年が、前へと進み出ていく。


ついに待ちに待った鑑定の儀が始まったのだが俺は、全身を甲冑に包んで名乗りをあげた男に目を奪われていた。


男のあげた声は張り上げたようなものではなかったのに、空気中をビリビリと伝わってすっと耳に入ってきた。


ものすごい巨漢というわけでも、傷の跡が無数に見えたというわけでも無いんだが、すぐに歴戦の猛者という言葉が頭によぎった。


そのくらいには雰囲気があり、背筋に力が入るようなピリっとした気持ちにさせられた。


「ではサイオン君、ここに手のひらを乗せてくれ。他のみんなも同じことをするからよく見ておくようにな。


そう、そこだ。そのまま10秒間動かないようにな。


・・・よし、君の魔法属性は土だ。しっかり練習するんだぞ。」


・・・あぁ、あれは属性を判別できる魔道具なんだろうな、たぶん。


魔道具に関して全然知らないけど、あの騎士団長さんが何かをしていたようにも見えなかったしなぁ。


てかなんで土属性ってわかったんだろう。騎士団長さんが気になってよく魔道具見れてなかったから、こっからは魔道具の方をよく観察してみよう。




それから同じ流れで数十人の子供達の属性が振り分けられていった。


元々知っていた火、水、土、風の4属性はバンバン出てきたんだけど、途中で光属性が1人だけ出たんだよ。


イメージでいえば回復とかなんだけど実際何ができるんだろうな。


あ、あと気になってたこともあったんだ。孤児院にある照明の魔道具に関して1番最初に聞いた時、無属性魔法って言ってたんだよな。


今回の鑑定の儀で無属性って鑑定された人がいなかったんだけど、希少な属性だったりするのかなぁ。


そして、魔道具に関しては属性の判別方法がかなりわかりやすかった。


火属性は赤、水属性は青、土属性は黄色、風属性は緑、という風に水晶玉の色が変わり、光属性は色が付くわけではなくて発光する。



オリビアちゃんは水晶玉が赤に変わり、火属性となった。飛び跳ねて喜んでいて、とても微笑ましい気分になったよ。


もうあと数人しか残っていないからそろそら俺の番だと思うんだけど・・・。



「では次、ライル君前へ。」


って言ってたら早速きたな、俺の番が。


出来れば水属性!便利そうだから。目標の一つでもあるお風呂作りにも使えそうだし。頼む!!


「ライル君、ここに手を置いてくれ。そうそう、そのまま少し待っててくれ。」


俺が言われた通りに大人しく従ってドキドキしていると、水晶玉の色が変わり始めた。


さっきまでは遠くからだったのもありあまり細部までは見えていなかったが、水晶玉の中心から湧き出るように染まっていく。


おっ!!青だ!青!青?・・・え、なんか汚く無いか?俺の青。


さっきまで他の子が水属性って鑑定を受けた時にはもっと藍色に近いような深い青だった気がするんだけど・・・。


と不審に思う俺の目の前でその濁った青色が分裂し、澄みきった青と灰色の2色に分かれた


「ほう、これは・・・水属性と空間属性の2属性持ちか。空間属性とはまた珍しい。


いいものを見せてもらった。ライル君の属性は水属性と空間属性だ。2つの属性を持っているものは必ず魔法を扱う才能を持つ。


精一杯魔法の練習を頑張ってみるといい。君の将来を大きく左右するだろう。」


2属性に空間属性・・・・・良い!!とても良い!!


よくわかっていないけど、特別感があって良い!不安だった気持ちがこりほぐされていくのを感じる!


元々魔法には興味しかなかったから練習頑張るつもりではいたけど、さらにモチベ上がったわ。


努力しなきゃ宝の持ち腐れなんだろうけど、前世で頑張るべきときに頑張らずに後悔した記憶がたくさんある。


何者でもなかった俺が、何者かになれるチャンスがこんなに早く到来するとは。絶対に逃さないぞ。


俺は嬉しさと期待でいっぱいだったが、それを押し殺して騎士団長の目をしっかり見て言った。


「精一杯頑張ります。ありがとうございました。」


すると、一瞬驚いたような表情を浮かべた後にふっと笑みを浮かべた騎士団長は、


「丁寧な言葉遣いをする子だねライル君は。確か孤児院の子だったかな?


ラインハルトとは古い知り合いでね。何か困ったことがあれば私を頼りなさい。」


そう言うと、騎士団長は鑑定の儀の続きへとうつった。


何かあったら頼れるのは嬉しいけど、何か琴線に引っかかるようなものでもあったのかな?


しかも院長の古い知り合いって言ってたけど、院長何者なんだ。騎士団長との昔馴染みって。


まあ、鑑定の儀が終わったら聞いてみるか。





「ライル、オリビアおつかれ。2人とも欲しかった属性がもらえてよかったな。」


俺の番が終わった後も、つつがなく鑑定の儀は終了し俺たちは帰路についていた。


「うん!すごく嬉しい!いっぱい練習してサラお母さんのお手伝いするの!」


「そうだな、魔力の使い方はサラによく教わるといい。早くサラが魔法を使ってるところを見てみたいよ。」


いかつい風貌の院長だが、今はニコニコ通り越してデレデレしている。オブラートに包んでも気持ち悪い。包まないと、警察に突き出したくなる顔だ。


「僕も嬉しいよ。でも、空間属性っていうのがよくわからないからサラさんによく聞いてみるよ。」


俺の変質者を見るような目に気づいたのかは定かでは無いが、院長はデレデレの顔を引き締めて、


「そこが問題だなぁ。もちろんライルが授かった属性は素晴らしいものなんだが、2属性待ちなんてほとんどいない上に片方が空間属性だからなぁ。


空間属性は国にもほとんど使い手がいないんだ。よほど運が良くなければ独学になっちまうからなぁ。


それに、悪い貴族に目をつけられたらって考えるとな・・・。領主様に話通しとくか。」


ブツブツと1人で呟きながら深刻そうな顔をしている。いや、聞こえてますけど。そんなにやばい能力なのかこれ。


俺ただの孤児院にいる3歳児だよ。貴族については全然知らないけど、権力振るわれたら今の俺なんか一捻りなんだろうな。貴族怖っ。


騎士団長も言ってたな、ブラウン伯爵家筆頭騎士って。


・・・え、そうじゃん。今気づいたわ。この世界貴族なんていんのかよ!?

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