第6話 本は読むべき
喧騒にもまれながら街の広場へと向かっていると、
「そういやライルとオリビアは何の属性が良いなとか考えてるのか?」
と、唐突に聞いてきたが、俺は初めての孤児院外の世界、それも前世とは全く違う街並みに感動していたところだった。
孤児院の敷地内から見ていたが、実際に歩いているとやはり違うもんだ。孤児院は街の中心からは少し外れた場所にあるらしく、目的に近づくにつれてどんどん人も建物も増えていった。
日系の顔立ちをしているものが1人もいないことに改めて違和感も感じたが、すこししたら慣れていくんだろうな。
オリビアちゃんは楽しそうに院長と話しながら移動していたが、俺はずっと周りをキョロキョロしていた。
オリビアちゃんの反応的に、俺の意識が戻る前のライルも何度か孤児院外に出ていたんだろうな。院長も特に何を言うこともなく出発したし。
「わたしはね!!絶対火属性魔法がいいの!!それでね、ジョンお兄ちゃんみたいに料理のお手伝いするの!」
「そうかそうか、偉いなオリビアは。オリビアも火属性になれたらサラの料理を手伝えるように練習しような。
・・・まあ、ジョンは嫌々っぽいけどな。」
院長は小声で最後に呟いたが、オリビアには聞こえてなかったみたいだ。
「ライルはどうだ。なんか欲しい属性とかはあるのか?」
「うーん、そうだなぁ。何でも良いけど、水属性になれたら嬉しいかな。
うちで水属性ってサラさんしかいないし、サラさんだって無限に水出せるわけじゃ無いから、あんまり自由に水使いたい放題ってわけにもいかないからさ。」
俺がそういうと、院長はなんだか変な顔をした後に、
「そうか、水属性は特にこの国では便利だしなれるといいな。確かにもう1人水属性がいたら助かるよ。
・・・ところでライル。前からライルが賢いっていうのは分かってたんだけど、そんな話し方だったか?
なんていうか、大人っぽいというか・・・なんかあったのか?」
うわやばいな、少し不審がられてる。でも、子供の話し方だと伝えるの不便すぎるんだよ。どうすっかなぁ・・・とりあえず、
「最近うちにある本いっぱい読んでるからかも。サラさんに言って貸してもらってるんだよね。
僕には難しい言葉もたくさんあったけど、ちょっとずつ理解できるようになってきたんだよね。」
これでなんとかこの場は納得してくれんか。
こんなこともあろうかと思って読んでたわけじゃなくてただ単に暇だったのと、この世界を知りたくて読んでたんだけど、言い訳の種くらいにはなってくれるだろ。
「あぁ、確かに最近ライルがよく本を読んでるってサラが言ってたな。
子供の成長は早いって言うけど、ライルほど急激に変わったように感じる子はいなかったから、少し気になっちまった。すまんな。
・・・そうか、本か。サラが昔から本が好きで集めてたのがこんなところで役立つとはなぁ。俺も読んでみるかなぁ。」
・・・なんか一旦納得してくれたっぽい?
よし、サラさん結構な蔵書数だったしこれからも読みまくろ。暇つぶしにもなるし。
正直話し方を幼くするのって違和感めちゃくちゃあったし、伝えたいことも伝えらんないしで結構きつかったんだよな。
これからは少しずつ元の話し方に戻せるようにしたいな。
・・・ん?なんだあそこ、めちゃくちゃ人集まってるな。あ、もしかして着いたか?同年代っぽい子もたくさんいるし、そうっぽいな。
「ライル、オリビア着いたぞ。あそこの子供がいっぱい集まってるところあるだろ?
あそこに行って、しばらくしたら鑑定をしてくれる人が来るからそれまで2人で話してるなり、周りの子と話すなりして待ってるんだぞ。」
やっぱりここか。てか、俺とオリビアちゃん以外にもこんなに3歳の子達がこの街にはいるんだな。
全部で4、50人はいそうなんだけど。結構大きい街なんだなここ。
あと、鑑定をしてくれる人が来るって言ってたけど、属性魔法の中にそういうのがあるのかな。
魔法に関しては何の属性があるのかもわかんないからなぁ。サラさんとかに聞いたけばよかったなぁ。
一応孤児院内では、火、水、風、土がいるからその4属性だけはわかってるんだけど、他に何かあるのかな。
にしても鑑定ってなんの属性になるんだろう。わかってる4属性って自然を司るものっていう印象があるし、鑑定魔法っていうのがあったとしてもその4属性にはなさそうだよな。
気になるなぁ。孤児院に帰ったらサラさんに色々聞いてみよう。
あれ、てかオリビアちゃんどこ行った。いつのまにか俺1人になってるんだけど。
・・・あ、知らない子と喋ってる。知り合いなのかな?仲良さそうだけど。そんなに街中に出る機会ってあるのかな?とりあえずこの1週間は出てないはずなんだけど。
「ねぇねぇ、お名前なんていうの??わたしオリビア!!よろしくね!」
全然知らない子だったっぽいな。あのコミュ力、俺も見習わなければ。素直に尊敬できるわ。
オリビアちゃんの明るさと恐れない心に圧倒されされていると、
「皆さんこんにちは。ブラウン伯爵家筆頭騎士のウィリアムです。今年も新たな才能がこのブラウン領に誕生すること、大変喜ばしく思います。
ただいまより鑑定の儀を開始します。名前を呼ばれたら前に出てきてください。
それでは、サイオン君。こちらまで来てください。」
唐突に鑑定の儀はスタートした。
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