第5話 鑑定の儀
自由時間で遊び終えると昼食となる。
かなり軽めに、サンドウィッチを2つほど食べるだけの軽食とも言うべきものだが、サラさんが作ってくれるからね。当たり前に美味しい。
昼食を食べ終わるとこの3歳の体には急激に眠気が襲ってくる。ということで次はお昼寝の時間になる。
お昼寝はマジで最高。起きた時の気持ちよさは異次元。まどろみから目覚めるあの瞬間のために寝ていると言っても過言ではない。
昼寝の良さについては語ると長いからこの辺にしておこう。
昼寝の後は再び自由時間となるが、午前中の自由時間は基本5人で何か同じことをやっているのに対し、午後は各々がやりたいことを自由にしている。
ただ5歳以上は自分が8歳になったときに働きたい場所をだいたい絞って、そこで働くための準備をしているみたいだ。自分が前世で5歳だった時より遥かにストイックで尊敬できる。
この1週間俺は日替わりで誰かと一緒にいて交流を図っていたが、今週からは1人で過ごしてみたいと思っている。その理由は後ほど教えてあげよう。
自由時間が終わると、夕食になる。夕食にはお肉が出てきて1日の食事の中ではかなり豪華で食べ応えがある。
食べ終わると部屋でみんなとボードゲームやカードゲームをして遊んだり、サラさんがしている洗濯のお手伝いをしたり水浴びをしたりしてゆったりと過ごした後に就寝となる。
1週間過ごして気付いたのが、自分が今いる場所はかなり暑い。季節的なものなのかと思ったが、夜はかなり冷えることからもしかしたら砂漠地帯なのかなと推測している。
孤児院の庭から見える街並みも茶色っぽくて、見た感じ日干しレンガが主材料になっているように見えるというのも、推測の要因の一つ。
ただ、初めて目の当たりにした街並みに少し感動した。改めて今自分がいる場所は日本じゃないんだと実感した。そもそも地球でも無いんだけどね。
そして、これは少し日常が退屈に感じるということ以外での唯一の不満なのだが、風呂がない。
元日本人としてこれはかなり最初絶望した。しかも、シャワーも温かいお湯もなくて水浴びのみ。最低限生活は保てているが、汚れが少しずつ蓄積してしまっているような感覚があって少し気持ち悪い。
一応石鹸もあるけど物足りない。いち早くこの問題は解決したいと思ってるが、何しろ俺はただの3歳児。何ができるわけでもないので一旦我慢するしかなさそうだ。
まあ、こんな感じで毎日を過ごしていて思ったことは、俺がどれだけネット世界に依存して過ごしていたかということ。
スマホが無いだけでちょっと時間が空くとかなり暇に感じたものだが、その時間を人との関わりが埋めてくれた。
前世では少し勿体無い時間を過ごしすぎていたのかもしれない。ネットは必要だったし悪いものではなかったけど、その時間を人との関わり合いや他のことに使えていたらもっと充実した毎日を送れていた気がする。
元々の自分の性格がめちゃくちゃ社交的というわけでもないから、これはできればそうしていきたいなという程度だけどね。
あとやっぱり退屈だった。まあ、精神年齢と肉体年齢が一致してないからしょうがないんだけど。
ただ、今日からは少し変わると思うんだよ。願望も入ってるけど。
今昼食を食べてお昼寝の時間なんだけど、この後俺と、同じく3歳のオリビアちゃんの2人は院長と一緒に鑑定の儀へ行くことになってるんだ。
説明しよう!!この鑑定の儀とは、この世界で3歳になると魔力を扱うことに体が耐えられると判断されて、自分の魔法属性を知ることができるんだ。
鑑定の儀を終えると、魔力の扱い方や魔法の使い方を練習し始めることができるんだ。
でも、1人1人魔法属性を授かることは変わらなくても、魔法の才能があって十分に魔法を扱えるものは10人に1人くらいのものらしい。
実際自由時間になると年上の子達は、サラさんに教えてもらいながら魔法の練習をしていることもあるんだが、火を少し出すだけの魔法にもすごい苦労してるみたいだ。
全部院長の受け売りだけどね!
だから俺は本当にこの1週間それを楽しみにしながらオリビアちゃんのおままごとに付き合ってきたんだ。
一回付き合うくらいなら微笑ましいなぁで終わっていただろうに、毎日やってるとキツくなってくるもんだ・・・。
そろそろお昼寝の時間も終わりそうでワクワクが最高潮に達しているよ俺は。いつもなら速攻で寝ているお昼寝の時間なんだが、今日ばかりは目がギンギンで寝られなかった。
「みんな起きなさ〜い。ほらオリビア寝ぼけてる場合じゃないわよ、鑑定の儀に行くんでしょ?楽しみにしてたじゃないの。
ほらライルも・・・起きてるわね。いつもは布団にしがみついてるのに。ライルもそんなに楽しみだったの?
ハルトが待ってるから食堂の方に行くわよ。他のみんなもちゃんと起きるのよ。」
きたきたきたーー!!いつもは微睡を楽しんでる俺も今日ばかりはすでに立ち上がっている。なんなら寝てもないしな。
まだ目を擦っているオリビアちゃんの手を引っ張りながら食堂へと向かうと、
「おっ、早かったな。んじゃ行くか。はぐれないように2人とも俺の肩に乗れ。街の広場に行くぞ。」
あ、街中に行くのも初めてだなそういえば。それも含めて楽しみすぎるわさすがに。
俺は魔法使いになるんだ今から。
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