第3話 覚悟
おかしいよな?何かに吊り下げられてるわけでもないんだ。ただただ光の球が浮いてるんだよ。
窓ガラスもない家、日本人には到底見えないのに日本語を操る集団、マジックでもないのに浮いている光の球、よく見れば見たこともない野菜。
・・・あんま信じたくねーなぁ。でも確定ってわけではないんだし、まだもう少し情報が欲しいな。
はぁ・・・前世に戻りてぇ・・・。
「食べ終わったらちゃんとお皿は一箇所に集めるのよ?ジョン、わかったわね?」
「わかってるってば。今朝怒られて謝ったじゃんか。」
あの子ジョンっていうのか。元の記憶がほぼ無いからこういうところでしっかり記憶の補填して、周りとの認識に齟齬が生まれないようにしないと・・・
・・・ああそっか、俺は今を生きてるんだよな。
前世では、まだまだこれからの人生だったとはいえ後悔なんて山ほどあった。もう一回やり直せたら、なんて思うことだってあった。
その機会が来てくれたんだ。もちろん環境も状況も全く違うけど、今回は後悔のないように生きれるようにしたい。
俺はもう日本人の大学生じゃないんだ。この世界でライルとして生きていくんだ。俺はライルなんだ。
もう前世にしがみつくのはやめよう。別に戻れるわけでもないんだし。前世を忘れずに、尚且つそれを糧にして生きていこう。
よし、覚悟は決まった。まずは確定させようか、俺の仮説が正しいかどうかを。
「院長〜、皿はこっちに集めといたよ!
・・・サラさんは小言が多いと思わない?院長。ちゃんと謝ってるのにさ。」
「まあまあ、そう怒るなよ。サラもジョンのためを思って言ってるんだ。
・・・ただ、ちょっと小言は多いかもな。俺もよく怒られる。」
ジョンが不満気におっさんに愚痴ると、一度はジョンをたしなめたものの、苦笑いを浮かべながら共感している。
やっぱりおっさんは院長か。ここは孤児院で間違いなさそうだな。サラさんっていうのはさっきの綺麗な女の人だよな多分。
なんか、おっさんとサラさんでバランス取れてそうだな。飴と鞭とまではいかなくても、厳しめに言ってくれる人とそれをフォローしつつ共感してくれる人がいるのは良いな。
まあ、まだあんまり2人のこと知らないから何とも言えないけどね。
とはいえ、大人2人の呼び方がわかったのはでかいな。話しかけてみるか。せっかく聞くならあのことかな。
「院長、あの天井のはどうやって光ってるの?何もないのにピカピカ光ってて浮いてるのは何で?」
「あの天井のか?あれはライトの魔道具って言って、無属性魔法のライトを魔道具化したものなんだが・・・。
うーん、まだライルは小さいからなぁ。なんて説明すれば良いもんか。」
あー、やっぱりそうなんだ。言われても尚信じがたいな。
・・・・・ここは異世界なんだなぁ。地球じゃないんだ。俺異世界転生したのか。
異世界転生系の小説にはまって片っ端から読んでた時期もあったけど、いざ自分がその立場になるとなぁ。なんていうか・・・不安だな、不安。
大抵ああいったものって何か天から授かったような才能があったりするけど、今のところ何もわからないし。
ただ魔法がある世界らしいから、今は不安とワクワクが半々だな。流石に自分が魔法を使えるかもしれないって思ったらワクワクもするわ。
「なんとなくはわかるから大丈夫!!僕も魔法使えるようになるの!?」
「本当か?でもなんとなくでもわかったんなら、ライルは賢いな。
あと、魔法に関してはもう少ししたら自分の属性を知れる機会があるぞ。3歳になった子が街の広場に集められて鑑定の儀を受けれるからな。
まあ、ようするにもうちょっとしたら魔法の練習ができるようになるってことだ。すぐに使えるやつは少ないけどな。一緒に練習しようなライル。魔法が使えるといいことしかねーからよ。」
そういうと、院長は俺の頭をまたもやグシャグシャと撫で回してサラさんの元へと向かっていった。
魔法は全部使えるって感じじゃなくて、1人1人に属性があるみたいだな。
・・・手から火が出るのとかかっこいいな。失われかけてた子供心が顔出してきちまった。
さっきまでの不安が全部吹き飛ぶくらいにはワクワクしてきたぞ。
俺は、既に部屋から出ていった子供たちの後ろに上機嫌で続いた。
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