第1章 転生
第1話 ここどこ!?
最初の記憶は、よくわからない黄色のもやが所々にうつるぼやけた視界。
それがいつのことなのかはっきりとはわからないが、生後間も無かったのは間違いない。目もしっかり見えなかったのだから。
そこからしばらくの記憶は曖昧で、でも人の温もりをなんとなく思い出せる、そんな幸せな日々を送っていた。
しかし、ついさっき全てを思い出した。全てといっても記憶が曖昧だった幼少期の話ではない。
自分が何者であるかという根本的な話だ。
何者なんて言葉を使ったものの、別に何か大義があるとか、何かを成していたなんていう大層なものではない。
自分が、現代に生きる普通の大学生だったことを思い出しただけ。
だが、こと今の状況においてそれは大きな意味をもつ。
・・・俺は転生してきた。何故かすぐに理解できた。自分が死んだ記憶があるわけでもないのに。
強いて言うなら最後の前世での記憶は、布団で小説を読んでいたくらいのもの。
ただ、自分はもう違う人間として新しい人生を歩み始めているということは、すっと頭の中に入ってくる。
・・・まだこれからだったのにな。また1からやり直しかぁ。また学校に通って勉強して部活やって・・・面倒すぎる。あ、でも友達と時間気にせずに遊べるあの時がまた来るのは良いな。
・・・・・・・・・・・・いやもう無理、自分に正直になろう。
理解はした。すっと理解できたよ、何故かは知らんけど。転生したってすぐに把握した。
けど、頭ではわかってても納得できないことってあるじゃんか。それが今だよ!!
冷静になろうとはしてみたけど、まずここどこ!?あと俺小さすぎない!?この体での記憶が曖昧だからわかんないけど2、3歳だよね!?
周りから不気味がられたくないし、これからは2、3歳の言動をしなきゃいけないの!?無理無理、きついよ俺22歳だったんだよ?
どうしよう・・・。これまでの記憶が鮮明ならまだそれに近づけようとかできたかもしれないけど、なんで記憶曖昧なんだよ。
・・・とりあえず俺は今布団にいるし、窓から見える景色は明るいから、お昼寝でもしてたのかな?
お昼寝って響き良いよね。すごい贅沢をしてる気分になるし起きた時の気持ち良さが半端ないのも大好き。
いや、いかんいかん、お昼寝のことはどうでも良いんだ。現実逃避はやめよう。
まず周りを見渡して、自分の状況を把握するとしよう。
ここは・・・そうだな、なんというかとても趣のある部屋だな。
いや、言葉を濁すのはやめよう。ボロいなこの家。さっきは、窓から陽の光が差し込んでいてまだお昼時かななんて思ってたが、よく見ればガラス窓ついてないぞ。
よく言えばカーテンっぽいけど、あれはただ布吊り下げてるだけだよな?
え、ここ日本だよね?もしかして違うのかこれは。また1から言語習得とか面倒くさいどころの騒ぎじゃないんだけど。
ただ、掃除は行き届いてるし、ボロいけど汚いという印象は抱かないな。むしろ清潔感はある。
でもこれ以上の情報は他の場所を見回ったり、人と接しなきゃわからないな。よし、探検ターイム!
しっかりと起き上がって歩き始めてすぐに俺は思った。
歩きづら!!歩けるけど成人していた記憶がある分すごい歩き辛い。
ただ俺スポーツやめて太り気味だったから、この少し痩せ気味の体はちょっといいな。
辛いダイエットなしで痩せれてたみたいなもんだよね。身長が縮みまくってるのはご愛嬌ってことで。前世では180で止まっちゃったから今回は185は欲しいな。
なんて思いつつ部屋を出ようとすると、
「おうなんだ起きたのかライル。急に気持ち悪くなったから寝るなんて言うから心配したぞ。
熱はないみたいだから大丈夫だとは思ってたんだけどよ。今はもう気分悪くないのか?」
・・・おいなんだこの赤髪の大男は。俺が小さすぎてデカく見えるのもあるだろうけど、どう見ても2m近くあるぞ。しかも赤髪のおっさん。
でもおっさんで赤髪に染めてるの見たら、ちょっとキツく感じるもんだけど、このおっさんは不思議と似合ってるな。
「おいライル、大丈夫か?まだ気分悪いままなのか?もうちょい休んでても良いんだぞ?」
俺がびっくりしてすぐに返答できなかったのを不思議に思ったのか、すぐに心配の言葉をおっさんがかけてきた。
これが俺の今世のお父さんなのか?赤髪と身長に意識引っ張られてたけど、この顔は海外の方っぽいよな。
え、てか俺のこといまライルって言った!?ほぼ確定で日本国外じゃねーか。
それともどっかと日本のハーフなのかな?俺の認識が正しければ完璧な日本語だったし。まじでわかんなくなってきた。
あ、とりあえず返答しないと。流石に考え込み過ぎて無視しすぎだわこれ。
「あはは、起きたばっかりだったから少しぼーっとしちゃってた。今はもう気分良いし大丈夫。ありがとう心配してくれて。」
・・・良い感じに子供っぽくね?前世で3歳の時どんな話し方だったかなんて覚えてないけど、こんなもんだろ多分。
「おーそうか、良かった良かった元気になって。遊びの時間で走りすぎて疲れちまったのかな?みんなも心配してたぞ。
ま、あんまり無理はしないようになライル。」
・・・遊びの時間?みんな?
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