(仮)俺だけ魔力が視える世界で、自由な冒険者ライフ
カット
プロローグ
頭上に浮かんだ、いや浮かばせた大きな水の球をぼんやりと眺めながら木の下で寝転ぶ少年に、俺はいつものように声をかける。
「ライル、お前飽きないか?」
「何回聞かれても同じだよ院長。僕はこれが1番楽しいんだ。」
少年ことライルは、院長の方に見向きもせずにそう答えた。
「綺麗でしょ?この水球。飲む?」
「いや、大丈夫だ。今朝ライルが水瓶に貯めてくれた水があるからな。いつも助かってるよ、ありがとう。」
2人が今いる砂漠に国土の7割が覆われるサンドレイ王国では、水は貴重な物資である。
そのため、水属性を宿す人はどこでも引っ張りだことなっている。
「ライルは水属性で良かったな。この国で水属性なら将来仕事に困ることはないからな。
・・・そういやライルは将来何をしたいとか、何になりたいとかはあるのか?俺にできることなんぞ多くはないが、精一杯の応援と少しの支援くらいならできるぞ。」
笑いながらそう言った院長に、ライルは少し考えるように浮かばせた水球をしばらく眺めた後に、
「これになりたい!って完璧に決めてるわけじゃないけど、冒険者いいなぁって思ってるかな。
たまに院長が昔冒険者だった頃の話をしてくれるでしょ?あれ結構楽しみにしてるんだよね。それ話してる時の院長の顔が本当に楽しそうだし。
それに、話聞いてる感じ何より自由で自分がやりたいことをやるっていう冒険者っていう職業にすごい惹かれたんだよね。」
「ほう、意外だな冒険者とは。ライルは頭が良いし属性も向いているから商人なんかどうかと思っていたんだがな・・・。
我の強いところもあるし意外と向いてるのか?まあ、どっちにしてもまだライルは5歳だからな。これからゆっくり考えていこうな。
・・・てか、俺の昔話をそんなに楽しみにしてくれてたのか!!聞きたいんだったらいつでも聞かしてやるのになぁ。もっと早く言ってくれよ。」
意外そうな顔をしながらも、ライルが自分の話を楽しみにしてくれていると知り、上機嫌になりながら言うと、
「嫌だよ、院長話長いんだもん。しかも途中から感情入りすぎててよくわかんなくなるし。たまに聞くのが面白くてちょうど良いんだよ。」
「お前そんな辛辣な・・・。もうちょい俺に優しくしてくれれば良い子なのになライルは。」
「それは無理だね。褒めると院長すぐ調子乗るから。そんなことより、ここに来たってことはご飯出来たんだよね?中に戻ろうよ。」
これまでずっと浮かばせていた水球を、パッと消すとライルは立ち上がり、歩き出した。
「本当にライルと喋ってると大人と喋ってる気分になるなぁ。不思議なもんだよ、まだ5歳なのに。」
ボソッと呟いた院長の言葉に、
(そりゃそうだよ。今更完全な5歳児らしく振る舞えとか無理に決まってるし、どっかでボロでちゃうからね。
異世界から転生してきたんです、なんて言っても、あぁそうか大変だったな、で済むわけないしそれ以前に信じてももらえないだろうからね。
てか、冒険者って15歳からしか登録できないらしいけどそれまでの間どうしよっかなぁ。)
と内心で考えながら聞こえないふりをしてそのまま歩くライルは、自分の将来を考えていた。
(正直、この敷地からほぼ出ないこの状況だと、判断材料が無さすぎるんだよなぁ。
8歳になったら皆何かしらで働き始めるっぽいけど・・・。8歳!8歳って!!早すぎない!?地球ならまだ呑気に友達と遊んでるけどなぁ。
・・・この世界は厳しいな。)
この世界の世知辛さに悩む5歳児という謎の構図を生み出すこの子供、ライルがこの先どうなっていくか。
少し覗いていきましょう。
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