《最弱無限∞のドッペルゲンガー》～追放されたら、もう一人の俺が現れた！？パラレルワールドの俺と【合体融合】して無限のステータスを得た結果。スキルは一人一個と決まっている世界で俺だけ無限個会得可能な件～

第24話 結束

　ノーキンはバッカスとマヌッケスに尋ねた。

　二人は答える。

「俺のとこにいたドッペルのスキルは【投石】だ。まあ、見事なクズスキルだよ。だからこそ追放してやったんだがな」

「俺のとこにいたドッペルは【拡大】だったぞ……？」

「おかしいな……。全部違うスキルだ」

「じゃあ、マジでドッペルは複数人いるのか。んで、ドッペルはそれぞれ、別のスキルを持ってるってことか……？」

「おいおい……スキルといやぁ、普通一人に一つが絶対の法則だろ……！？　それを４つもなんて……ドッペルだけずるくねえか……？」

「いや、あいつのスキルはどれもクズスキルだ。種類だけあっても意味ねえって」

「今言ったスキルじゃどれも強くなれそうにはねえよなぁ……。どうやら酒場にいたドッペルはまた別のスキルを持ってそうだな……」

「よし、まとめよう。今のところ、俺たちの話をまとめると、ドッペルは全部で５人出てきていやがる。まず【投石】のドッペルだろ。それから、【拡大】に、【爆発】に、【融合】か。んで、酒場にいたやつのスキルはわかんねえから、こいつは仮に【酒場】と呼称しよう」

「よし、だんだん全貌がつかめてきたな。それにしても、俺たちはなんだか妙なことに巻き込まれちまったな……」

「まあ、こうなったら一蓮托生だ。俺たちでこの謎を追おう」

「ああ、そうだな」

　バッカスは地面にドッペルの各スキルを図に描いた。

　そして、バッカスは静かにドッペルへの復讐心を燃やす。

「一番ゆるせねえのはやっぱ【酒場】の野郎だよな。あいつ、俺たちのことをぼこぼこにしてくれやがって……。ぜってえゆるせねえぜ」

「たしかにな。あいつだけは許せねえ。おい待てよ……ここにいる俺たちは、全員ドッペルになにかしらの恨みを持ってるじゃねえか？」

「ああ、まあそうだな」

「だとしたら、俺たちで力を合わせてドッペルに復讐しねえか？　特にこの【酒場】野郎にな。まあ、同じ顔しててムカつくから最終的に全部のドッペルをボコボコにしてやってもいいが……。とにかく、だ。ドッペルに一発くらわせようぜ？」

　ノーキンはそう提案する。

「おお、そいつはいい考えだ。いくら【酒場】野郎が強くても、俺たち４人が力を合わせればドッペルごとき楽勝だぜ」

「そうしよう。決まりだな。俺たち４人、こうして集まったのもなにかの縁だ。力を合わせてドッペルに復讐しよう。んで、ついでにドッペルが増えた現象の謎も解明したいぜ」

「まあドッペルの野郎はどのみちムカつく野郎だからな。とにかくどのドッペルでもいいから、はやく殴りたいぜ」

　バッカスはそうそうに闘争心を燃やす。

　話を切り替えたのはワルビルだ。

「そういえば、お前らはなんでこの森にやってきたんだ？　まだきいてなかったが、それもこの件に関係ありそうだ」

「あー、俺はだな、その……女に騙されたんだよ。いわゆる契約金詐欺だ。シェスカとかいうクソ女に騙されたんだ。んで、俺たちだけでクエストに……って、その相方にも逃げられちまったが……」

　バッカスはそう応えた。

「おい待て待て待て、そんなところまで俺たちは一緒なのかよ……！？」

「あん？　どういうことだ……？」

「実は、俺も同じなんだ。俺も女に契約金詐欺で騙されたんだ。んで、嘆きの森を指定された。俺のときはジェシカっていう女だった」

「まじかよ……もしかして、おんなじ手口ってことは……同じ女に騙されたのか？　俺たち。もしくは、組織的な犯行……？」

　そこにノーキンとマヌッケスも話に割って入る。

「おい、俺もだよ。俺もハルナって女に騙された」

「俺のときはメーデルっていう名前だったぜ」

「これは……どうやら、そういうことらしいな……」

「俺たちは４人とも契約金詐欺にあっている……。しかも、４人ともドッペルを追放してるってわけか……」

「なんだか、俺たちも他人とは思えねえな……。なにか仕組まれた運命的なものを感じるぜ……」

「そうだな……。こうなりゃもう、俺たちですべての謎を解き明かすしかねえな」

「ああ、俺たちで、ドッペルの正体を突き止める。んで、ドッペルに復讐する」

「それから、契約金詐欺の女をとっちめて、復讐する！」

「よし、決まりだな」

　４人とも、奇妙な縁で繋がっていることに気づき、妙な親近感が芽生えはじめた。

　彼らは同じ目的のもとに、結束した。

「おっと待ってくれ。この嘆きの森でのクエストはどうするよ？　みんなそれぞれクエスト受けてんだろ？」

「ああ、そうだな。それも４人で協力するってのはどうだ？　どうやら全員相方に逃げられちまったみたいだしよ。ここにいる４人で新しくパーティーを組むんだよ」

「ああ、そいつぁいい考えだ。俺たち４人なら、なんだかなんでもできる気がするぜ！」

「よし、決まりだな。じゃあ、ドッペルのことを追う前に、まずはとっとと４人分のクエストをクリアしちまおうぜ！」

「おうよ……！」

　さすがに４人も集まれば、嘆きの森でのクエストをクリアすることは簡単……に思えた。

　しかし、ここに集まったのは我の強い頑固者４人だ。

　もちろん、雑用をしたがるタイプなんかいないし、罠や薬草に対する知識もない。

　４人とも戦闘にはそこそこ自信があるが、誰一人として地図ももっていないし、クエスト目標を見つけることも難しければ、帰り道もわからない。

　そんなんだから、４人で嘆きの森のクエストをクリアし、帰るのにはものすごく苦労した。

　４人とも傷だらけになり、何度か揉めて喧嘩になりながらも、４人はやっとの思いでクエストをクリアした。

　そして、街に戻ってきた４人は、新たにパーティーメンバー登録を済ませ、４人のパーティーを結成する。

　おかしな４人組の、ドッペルを追う旅がいまここに、始まろうとしていた――。