第11話 あれは俺じゃない
【Doppelgänger:1】
「おいあれはいったいどういうことなんだ……?」
「さ、さぁ……?」
なんと、街で見かけた4人目のドッペル・ニコルソンは――女を連れていた。
そしてしかも、なんと、高級な酒場に入っていくではないか……!
あそこはかなり高額な店であるかわりに、超絶美人な女の子たちが接待してくれて、酒を飲みまくれるという店だ。
あんな下品な店、とうてい俺の趣味ではない。
だいいち、俺にそんなところに通う金はない。
「おい、あいつは本当に俺なのか……? あんな男は、ドッペル・ニコルソンではない」
「たしかに、俺も同意だ。あれはとうてい、俺と同一人物だとは思えんな……」
「ちょっと後をつけてみよう……」
「ああ、そうしよう……」
俺たちは、4人目?が店から出てくるのを待った。
すると、
数時間待って、ようやく出てきたそいつは、べろべろに酔っ払っていた。
4人目は、しかも連れの女と肩を組んで、いちゃいちゃしながら歩いていやがる……。
あんな行為、とうてい俺のやることとは思えない……。
自分と同じ見た目の人間がそんなことをしているのを見て、俺は少なからず気分を害した。
「がっはっは! ジャクソンのやろうを追放して、今日は気分がいいぜぇ! なあ、カレン!」
「ほんとうね。ジャクソンなんか、もっとはやく追放するべきだったのよ」
「さあて、来週は新メンバーとも落ち合う約束をしているからな。それまではお前をたっぷり愛するとするぜ」
「いやん、ずっと私を愛してくれなきゃ嫌よ」
「そんなこというなよ。このドッペル様は一人の女には縛られねえのさ」
「ほんと、クズ男よね。でもそういうところも好きなのよね~」
「がっはっは! すべての女は俺様のものだぜ!」
4人目のドッペルは、女のケツを揉みしだきながら、ホテルへと消えていった。
まったく、あれは本当に俺なのか……!?
俺は吐き気を催した。
「うげー気分が悪い……。なんなんだアイツは……」
「死ね……」
「ほんと、あり得ないよね……」
どうやら拡大と爆発も同じ思いのようだ。
いくらそれぞれの俺は性格が違うといっても、あれはさすがに許容できない……。
マジでくそくらえだ。
「どうやらあいつは追放されたわけでもないようだぞ?」
「ていうか、あいつが誰かを追放したみたいだな……」
「とことん僕らとは違うみたいだね……」
「まるでバッカスみたいなやつだ……」
「まるでマヌッケスみたいな野郎だ……」
「まるでノーキンみたいな人だね……」
「あいつ、どうする……?」
「いや……あれはないだろ……。さすがに。アレをドッペル・ニコルソンだとは認めたくないね……。少なくとも、仲間に入れるのはどうなんだ? 俺たちの足を引っ張りかねない。それに、あんなやつとは話にすらならんだろう……」
「そうだよね……。僕もあれは苦手だ……。大人しく話をきいてくれるタイプでもなさそうだし。それに、彼は追放されたわけでもないし、みたところ、羽振りもよさそうだったよ? 普通に彼ひとりでなにも困ってないんじゃないかな……? わざわざ仲間にしなくてもよさそうだ」
「じゃあ、どうする? 殺すか……?」
「いや、さすがに自分自身を殺すのはどうなんだ? 自殺になるのか? ていうか、普通に犯罪だ」
「なんだろうか……でも、自分と同じ顔の人間があんな感じだと、本当に不快だよね……。殺すまではいかなくても、目には入れたくないよね……記憶から消し去りたいよ……」
どうやら俺たち3人の意見は一緒だ。
「「「よし、見なかったことにしよう」」」
俺たちは、4人目を見なかったことにした。
あれはドッペル・ニコルソンではない、と結論づけた。
4人目を記憶から消したあと、俺たちは宿まで帰るべく、街を歩いていた。
するとなんと――
またしても同じ顔の人間を発見した。
これで5人目だ――いや、あれはなかったことにしたのだった。
便宜上こいつは4人目と呼ぼう。
なんと俺たちは4人目の俺を発見したのだった。
どうやら落ち込んだ感じで歩いているところを見ると、やつも追放されたに違いない。
「おい……あれって、明らかに俺だよな……?」
「ああ、あれはドッペル・ニコルソンで間違いない」
「声をかけるか?」
「そうしてみるか……」
俺たちは3人そろって、4人目の俺に声をかけた。
すると――。
「「「よお」」」
「うわああああああああああ……!??!?!?!?!!」
4人目の俺はその場で失神してしまった。
そりゃあまあ、自分と同じ顔の人間が3人も急に現れて、声をかけてきたのだから、無理もない……。
「しまった、驚かせすぎた……」
――――――
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