第42話 最終決戦

 王都セントラルコウゴウが制圧されて、数日後———やっとザッケルの街にも情報が入ってきた。


 突如現れた漆黒の男が、城を占拠。ケルカ元大臣を始め、ほとんどの王族、役人達が残虐。王都の住人もほぼ逃亡したとのことだった。


「今、他国の者も挙って戦力を集めているようだ。まさに魔王到来———皆、自分が首を取ると血眼でサキ殿を探している状態だ」


 手に負えない状況に陥ってしまって、発言者であるロックバードもエディも青褪めた顔で立ち竦んでいた。


「そんな、こんなことになるなんて……」

「ボク達が余計なことを言ったせいで、お兄ちゃんが戦犯者になっちゃった」


 ここまではロックバード達の読み通りなのだが、周りの反応までは読み切れていなかったと言ったところだろうか。

 王都の人間ですら歯が立たなかったサキを他国の人間に倒せるとは思っていないが、ここまで自体が大きくなってしまったら無罪放免というわけにはいかないだろう。


「サキ殿は、皆さんに討ってほしいと願っていました。きっと覚醒者を英雄に仕上げたいんでしょう」


 この先、生まれてくる覚醒者には同じような苦悩を味わせないように、女性の地位向上の礎になる為に。


 だが、そんな残酷な選択を選ぶことなんて出来ない。


「しかし、このままサキ殿のところへ向かわなければ、他の討伐者が向かうだけだ。セントラルコウゴウの被害者を見れば、最小限に留めていたのが分かる。だが、これ以上は彼にとっても予期せぬ殺害になってしまう。これ以上、サキ殿にカルマを背負わせない為にも……決断が必要なんだ」


 急にそんなことを言われても……不可能だ。

 一度愛した人をこの手で殺すなんて、そこまでして幸せになりたいとは思わない。大体、こんな大事なことを勝手に決めるなんて、自己中にも程がある。

 何だろう、段々腹が立ってきた。


「私達に別れも告げずに姿を消したのは、そういう意味だったのね……。全く、こういうの、何ていうのか知ってるのかしら? 有難迷惑っていうのよ? こんな展開になるなら、ずっと5人で逃亡し続ければよかったのに」

「え、5人? 私はカウント……」

「そうですよねー……。生憎、簡単に切り捨てられるお人じゃないですもんね。サキさんがいないなら、死んだ方がマシですわ」

「ボクもそう思う! やっぱ予定通り、サキお兄ちゃんを生け取りにして、一生飼っちゃおうよ」

「賛成です。きっとアタシ達の力を合わせれば、サキくんを捕獲することなんて容易いはずです」


 めげないな、本当。

 絶望的な状況にも関わらず、それでも彼に対する愛で溢れている。


『自分がサキ殿の立場でも、こうはいかなかっただろうな』


 身体を張って、命懸けで彼女達を守ったサキだからこその結果だ。


「生け取りよりも、封印って方法はどうですか? そうすれば殺せと言い張る人達を黙らせることができると思いますが」

「うん、いいと思う! ボクら以外の人間が近付いたら殺されるよって言い回ろう」

「本当に殺してしまえばいいですよ。秘密が漏洩してもいい事ないですからね」

「って言うか、サキを一発殴らないと気が済まないんだけど? 今すぐ殴りに行こうか?」


 ———強いな、これが覚醒者か。

 自分はこの事態を悪い方にしか考えられなかったが、彼女達なら上手く収束出来るかもしれない。


「もう本当に腹立つから、今から行こう?」


 …………サキ殿、もしかしたら私の出番はないまま、終わってしまうかもしれません。


「無事を祈ります……切実に」


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