第40話 それは想定外な発想

 その後、俺とロバート、バショウグンで作戦を練ったのだが、現状国相手に対抗しようにも兵力も財力も乏しくて、カマリキ対芋虫のような構図だった。


 くっ、本来なら俺一人でも蹴散らすことができるのに……!


 しかし、一人を暗殺したところで代わりの奴が出てくるだけだ。腐敗しているのが国、政治だから仕方ない。


「戦争をするには強敵すぎるし、長引けば長引くほど自分達が不利になる。流通を止められれば、それまでだしな」


 自分達と同じように国に不満を持ったもの同士、手を組めばとも考えたが、旨味を知った上級の奴らが聞く耳を持ってくれるとも思えなかった。

 弱者で手を組むのも、中々大変なのだ。


「どうしたもんだろうな……」


 その日は結局、ろくな話し合いもできないまま終わってしまった。


 あー、むしゃくしゃするな。

 こう言う時は思いっきりビールを飲んで、頭を空っぽにしてスッキリしたいもんだ。


「ねぇ、サキ。国力としては劣ってるけど、戦力としては私たちの方が上まってるんでしょ?」


 ベッドの上で下着姿で跨るセシルが、不思議そうに首を傾げたが、ろくに返事も返さずに抱き締めていた。

 そんな質問されてもさ、こんな状況じゃ頭に血が昇らないから、何も考えられない。


 女性陣で不平不満を解消する為に、交代で相手をすることになったのだが、これがまた非常に体力を要する。

 今夜はセシルとリース、明日はロックバードとエディだ。


 ハーレムには憧れていたが、体がいくつあっても足りやしない。


「もう、胸ばかり触ってないで、ちょっと答えてよ?」

「無理無理。今はセシルのことしか考えられない」

「バカサキっ、ん……っ、アっ!」


 彼女の弱点は太ももとお尻の境目。この辺りを触れるか触れないかくらいのソフトタッチで撫でると、マタタビを与えた猫のように甘い声で啼いてくる。


 彼女の顎をくいっとあげると、親指で唇を撫でてクイクイっと弄んだ。

 いつもの勝気な顔が、困ったように頰染めて焦らされていた。


「けど……嫌な話よね。世界を救ったのは初代勇者リンク様なのに、何もしてない末裔が世界を苦しめてるなんて」

「おい、セシル。こんな楽しい時に萎える話はやめろって。やめるまでハムハムするぞ?」


 敏感な場所を甘噛みすると、面白いくらいに身体を震わせて、ビクビク反応するのが面白い。


「もうサキさん。私を差し置いて先に楽しむなんて、ずるいですよ?」


 そう言って二つの大きなたわわを肩に乗せてきたのは、遅刻して部屋に入ってきたリースだった。


 わぉ、ここは天国かなー。


「いやー、さっきまで待ってたんだけどね? セシルが我慢できないって脱ぎ出してきたからさ、本当にね?」

「ふふっ、まぁいいですけどね。こうして欲情して蕩けたセシルさんの顔を見ることができたので♡」


 すると俺達の間に割り込んで、目の前で濃厚なキスを見せつけてきた。


 クチュクチュ……っと、舌を絡ませて、涎を垂らしながら夢中に貪る様子に、興奮しない野郎はいないだろう。


 ズリィな、きっとリースは俺よりも、セシルの身体を知り尽くしているに違いない。


「けど、実際この世界の女性達は、不満を抱えていると思うんですけどね。私達のように……」


 おっと、リースまで話を続けるか?

 俺はとっくの昔に考察を停止してるのだが?


「いっそのこと、本当に魔王が誕生したらいいのにな。そしたらケルカ達は太刀打ちできなくて、どうしようもなくなるだろう?」


 そんでもって、今の王都を滅ぼしてくれれば一石二鳥だ。後のことは俺達に任せろ、ちゃんとお前らの意思を引き継いで国を守ってやるからってね。


「いないから困ってるんでしょ? もう、サキのバカ……」


 ▲ ▽ ▲ ▽


 次の日、またしても発展しないまま話し合いを終えた俺達は、早々と解散した。

 ある程度予測していた事態だが、こうも続と不安を覚える。


 こうしてる間にも、ケルカ達は覚醒者彼女達を探して捜索隊を出しているかもしれない。

 しかも潜伏先であるザッケルは、セシルの生まれ育った街だ。バレるのも時間の問題だ。


「いっそ雲隠れして、5人でひっそりと暮らすか? あ、ロバートも一緒だから6人か?」


 俺だけハーレムで申し訳ないけどね?


「もうお兄ちゃん、また作戦会議のことを考えてる?」

「今はアタシ達とのお楽しみの時間なんだから、お仕事のことは考えないで?」


 今日はロックバードとエディとお楽しみの最中だった。見た目が幼くてイケナイことをしてる気分になるが、仕方ないよな?

 この国では二人くらいの歳でも犯罪にはならないし、結婚してる子もいるんだから。


 ———とはいえ、母親メルディ初恋の相手ロバートの顔が脳裏を過ぎる。


 この背徳感……それでもバキバキに興奮してる俺は、きっと変態に違いない。


 二人ともそれぞれ俺の腕にしがみついて、必死に頬や耳、首筋などにキスを繰り返している。

 両手に花とは、こういうことを言うのだろね。ニヤニヤが止まらない。


「もういっそのこと、お兄ちゃんがやっつけちゃえば良いのに」


 おっと、ロックバード。極論述べるねー。

 それが一番楽な方法なんだけど、世間の正義を倒すのは、一筋縄じゃいかないんだよ?

 きっと次々に現れる正義との戦いが、永遠に続くだけだ。


「圧倒的な力で負かしちゃえば、流石に諦めるんじゃないの? そんな簡単な問題じゃないのかな?」

「んー……どう説明すれば良いんだろうな。俺はね、ロックバードやエディ達が生きやすい世界にしたいんだ。結局、俺が打ち負かしたところで、国に逆らった反逆者になってしまうんだ。俺が戦い続ければ良いんだけど、それじゃ平穏とは言えねぇし……」


 非常に難しい問題なんだ。


「ねぇ、サキくん。サキくんが人間だからいけないんじゃない?」


 ん、エディちゃん? どう言う意味?

 ついに俺の存在、根本否定?


「魔王がいなくて困っているなら、サキくんが魔王になっちゃえばいいよ」

「へ? 俺が魔王に?」

「うんうん、そうだね! お兄ちゃんが王都を壊滅させた後に、ボク達が倒してあげるよ! そしたら魔王をやっつけてハッピーエンドじゃない?」


 ふふふ、俺の屍を超えて行けィ——って奴ね?

 自作自演で幸せを勝ち取るって、中々卑怯な作戦だが悪くないかもしれない。


 彼女達を幸せにしてあげられるなら、俺の死など安いもんだ。


「え、本当には殺さないよ? 封印して、ずっとボク達が監視してあげるの」

「一生、ずっとお世話してあげるね♡」


 怖い怖い怖い、お子ちゃまだと思って侮っていると痛い目に遭うね。


「二人とも最高だよ。その作戦、採用させてもらうよ」


 キャー……と黄色い声を上げる二人に浴びるほどのキスをしながら、俺達は楽しい夜を過ごした。

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