第九章 最終章
第39話 これはハーレム? いいえ地獄です
数日後、ザッケルの街に辿り着いた俺達は、無事にセシル達と再会を果たすことができた。
美女3人が号泣しながら心配してくれたから、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
え、何が理由だって? そりゃ、心配かえた気持ちと、こっそりエディと関係を持ってしまったことだ。
セシル達はエディのことも何事も無かったように受け入れているが、バレたらどうなるのか分かったもんじゃない。逆さ吊りのまま鞭叩きなら、まだ序の口だろう。
この前の手足をもがれた時の感覚を思い出し、背筋にゾクっと寒気を覚えた。チ○コ切られないよな? これも再生できるのか?
チラッと下半身に目をやると、セシルがワザとらしく咳払いをした。
「もうサキったら、感動の再会の途中なのに、もうエッチなことを考えてるの? 相変わらずなんだから」
え、いや、そういう意味じゃ⁉︎
後ろの二人も頰染めないで? 違うんだ、誤解なんだ!
「あれ、そういえばエディはロバートに会いに行かなくてもいいの? ずっと離れ離れで寂しかったんじゃない?」
ずっと俺の隣にいるエディを不思議に思ったロックバードが、首を傾げで尋ねた。
———バレた? もうバレたのか?
肝心のロバートはバショウグンと感動の再会を果たしているし、もう本当に役立たずだな!
一人でバクバクと焦っていると、エディは悪気なしに言い切った。
「アタシも皆と一緒で、サキくんが好きになっちゃったんだ♡」
なっちゃったじゃないよ、エディさんよォ!
皆の方を見るのが怖い……自分たちがいない間に何をしてんだ、コラ———だよなァ。
恐る恐る様子を伺ったが、思ったよりも取り乱す様子もなかった。むしろ落ち着いてる。怖い怖い、何の反応。
「やっぱそうなんだ。まぁ、正直皇太子よりもサキの方が魅力的だし、気持ちは理解できるわ」
「あら、それならこの前、声を掛けてあげれば良かったですね」
「よかったー♪ これでエディもボク達と一緒に仲良くできるね!」
おぉ、ウチの妻達は理解があるな。とんだ取り越し苦労だったなと胸を撫で下ろしていると、ガシっと掴んできたセシルの手が、無言の圧を与えてきた。
「……エディとアンタじゃ、全然意味が違うのよ……? 私達が心配してる間に、随分と美味しい思いをしたんじゃない?」
ヒィッ、ホラー映画張りの眼力を見せるなって! 一応
「い、一回だけだから! ほら、皆のことも抱いたのに、エディだけ仲間はずれは可哀想だろ? な? セシルも分かってくれるだろう?」
「うっ、それを言われたらそうだけど……。ちょっとズルい。私もサキと二人きりになりたかったのに」
可愛い奴だな、セシルは……。
けど一人だけを特別扱いするわけにもいかないんだ。リースもロックバードも同じように接しなければいけない。そう考えるとハーレムも大変だな。
「モテる男も苦労するね。サキくん、道中は苦労したようだね」
そう声を掛けてきたのはロックバードの母親のメルディだった。相変わらず良い女の雰囲気が、覆面で隠していても溢れている。
「メルディもどう? ここは良い街だろう? 優しい人ばかりだし、他所者に対しても気を使わないし」
「そうだね、君が言いたいことはよく分かるよ」
俺達が戻ってくるまでの間、ロックバードとゆっくり過ごせたようで、ご満悦のようだった。今回のケルカ大臣の件が一段落したら、もっと親子水入らずの時間が増えると思うので、もう少し待ってもらいたいところだ。
「あ、そうだ。メルディに頼みがあるんだけど、聞いてもらえないかな?」
俺の足元で隠れん坊をしているマリッシュに目を配り、メルディに紹介した。
「タイヴィーンで知り合ったマリッシュだ。マリッシュ、彼女は俺の知り合いでメルディって言うんだ」
全身を布で覆って、目元しか見えない彼女に警戒しているのか、怯えたまま中々前に出ようとしない。どうしたものか……と困っていると、メルディの方から歩み寄るように屈んで挨拶をしてくれた。
「やぁ、マリッシュ……っていうのかな? 年はいくつかな?」
「僕は13歳……お姉さんは?」
マリッシュ、ナイス選択だ。オバサンじゃなくてお姉さんを選んだのは好感度が高いぞ? ただ女性に年齢を聞くのは失礼だったな。
「私はあのお姉ちゃんのママだから、君のお母さんと同じくらいかな?」
「そうなんだ。僕、お母さんがいないから分からないや」
マリッシュの言葉で俺の頼みたいことを察しれくれたようだった。そう、俺はメルディにマリッシュのことを頼みたかった。できることならバショウグンと共に。擬似家族でマリッシュに安心できる場所を作ってあげたかったのだ。
『残念ながらバショウグンは雑巾臭で嫌われてしまったけどね?』
だが、ここにきて大きな問題を忘れていた。メルディの覆面の下は酷い傷を負っていたんだった。
もしかしたマリッシュが失礼な発言をしてしまうかもしれない。
「隠しても直ぐにバレてしまうだろうからね。マリッシュ、少しおばさんの顔を見てくれるかな?」
そう言って彼女は覆面の下を曝け出してくれた。
以前より傷が浅く見えるのは、セシルの治癒能力のおかげだろうか? それでもトラウマになりかねない傷には、変わりないのだけれども。
「メルディさん、痛そうだね。僕も前に背中の辺りを切られたから分かるよ。痛かった?」
そう言って彼はメルディの肌に優しく手を添えた。
この二人なら大丈夫だ。安心した俺は、後を任せてロバートのところへと向かった。
「よぅ、王子様。どうだった? ロックバードとの旅は」
「サキ殿、いや……中々大変だったよ。足を引っ張って、ロックバードを怒らせてばかりだった」
あのロックバードが? 余程のことがあったのだろうと、同情するように苦笑を浮かべた。それよりだ、今後の話を進めなければならない。
「俺は差別のない、平和な世界を作りたいんだけど、そのためにはどうしたら良いと思う? 知恵を貸してくれないか?」
協力を求めるように手を差し伸べると、ロバートも喜んで手を取ってくれた。
「もちろんだ。私にできることなら、何でもさせてもらうよ」
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