第六章 王都「セントラルコウドウ」

第28話 君ならどうする?(R−15)

 こうしてロバート皇太子の救出に成功した俺達は、王都セントラルコウドウに向かった。


 覚醒者と美形の皇太子。この美男美女の集団に興味津々な視線が集まる。この優越感、悪くはないな。自然と口元が緩んでしまう。


 中には無謀な命知らずが女性陣に絡んできていたが、それぞれがその道のエキスパート。一瞬にてゴミ屑のように一掃され、あまりの哀れさに同情してしまうほどだった。


 ——というより、どうなのだろう?

 覚醒者が四人集まったが、何か変化はあったのだろうか?


 その日の夜、我慢できなくなった俺は、セシルとリースが眠る部屋を訪れた。

 静まり返った部屋にぐっすりと寝息を立てる二人……。


 ムチムチでスベスベな足が毛布からはみ出て、俺のキカンボウは限界寸前だった。


 あの時、スンとしていた息子が嘘のようだ。やはり呪いはなくなっているのかもしれない。今ならきっと、うまくいく。


 俺はベッドの端に腰を下ろし、二人の肩を揺らした。「んン……っ、」と寝惚けた声ですら色っぽい。


「なぁ、セシル、リース……少しいいか?」


 最初の声掛けに応えたのはリースだった。いるはずのない存在に少し驚いていた様子を見せたが、すぐに平穏に戻り笑みを浮かべてきた。


「こんな真夜中にどうしたんですか?」


 ど、どうしたって……。

 改めて聞かれると躊躇ってしまう。素直に夜這いに来ましたと言っていいものか。


 黙り込んだ心情を察したのか、リースは俺の背中に手を回すと、そのまま肌を擦り寄せてきた。


「ふふっ、あの日の続きをしたくなったんですか?」

「そう、です。気になって、気になって、俺」

「——でも困りましたね。きっとロックバードさんもサキさんに好意を寄せているのに、私達だけが先に楽しんでしまうのは申し訳ない気がします。ねぇ、セシルさん」


 ハッと横を見ると、唇を尖らせて拗ねたセシルがジィィ……っと睨んでいた。


「うん、そう思う。だって今の状況すらムカついたもん。この私を差し置いて何をしてるの、サキ?」


 違う、違う、違う! 俺はただ、君達の呪いの状態を確認したくて!


「だから、エッチができるか確かめたかったんでしょ? いいよ、サキ。試しちゃお?」

「本番を控えれば、ロックバードさんも許してくれるかもしれないですね」


 そ、そういう問題?

 え、俺の童貞……卒業間近?

 前は触れることもできなかった場所も、今度は———……。


「ん……っ、あンっ、や、だめ……」


 着衣を乱した二人を前に、とても我慢できる気がしなかった。いっそロックバードも呼んで、皆で楽しみたい。


「ふふっ、サキさんも立派なモノを持っていたんですね♡ 知らなかったですわ」


 うおっ、リースさん! そんな、サービス旺盛過ぎ! その大きく実ったソレを、そんな……!


「もうサキ、リースお姉様ばかり見過ぎ! 私もいるんだからね?」


 三人でイチャイチャしていると、行為を察したのか隣室で眠っていたはずのロックバードも部屋を覗いて来て「あわわっ!」と声をあげて恥ずかしがっていた。


「お、お兄ちゃん、お姉ちゃん! な、何をしてるの⁉︎」

「あら、ロックバード。丁度良かったわ、これから解呪されているか試しましょう?」

「え? え? な、何?」


 引き摺り込まれたロックバードの着衣を脱がして、俺は淫らな美女3人を目の前にして我慢寸前だった。


 い、生きてて良かった……!


「え、でもいいのかな? エディちゃんは呼ばなくていいの?」

「エディはロバート皇太子に夢中だからね。こっちに呼んでも微妙じゃない?」

「そうですね、やはり最初は好きな殿方と経験したいですもんね♡」


 そう言うと、3人は跨り出して、順番に深くキスを交わし出した。


「大好きだよ、お兄ちゃん♡」

「好きです、サキさん♡」

「もう、私を好きにさせたんだから、責任とってよね、サキ……」


 こうして俺達は熱くて濃厚な夜を過ごすことになった。



 そして全てを吸い尽くされて屍のようにシオシオになった俺は、いつまでもベッドから動けずに横たわっていた。


「よ、良かったんだけど、いきなり3人の相手は童貞にはハードル高い……!」


 だが思い出しただけで元気になる。

 うん、呪いも無事に解けていたし、本当に良かった!


 そんな精根尽きた俺を訪ねるノック音が響いた。誰だろう?


「サキ殿、少しいいだろうか?」


 扉の向こうにいたのはロバート皇太子だった。俺は急いで体を起こして部屋に招き入れた。


 もしかして昨日の出来事のことだろうか? やはり覚醒者相手に軽率な行動だっただろうか?


「まぁ、それは仕方ないですから。随分とお楽しみのようでしたし」

「やべ、やっぱ声が漏れてた?」


 ロバートは顔を赤くしたまま無言を貫いた。


 うん、色々とごめんね?


 彼は大きめの咳払いをして話題を切り出した。


「改めて伺いますが、サキ殿は覚醒者の方々のことを大事に思っているんですよね?」

「本当に改まってだね。うん、もちろんでしょ? 命をかけて守ってきた愛しい彼女達だよ。大事に思ってないわけないでしょ?」


 しかし難しい顔をしたまま、ロバートは唸り出した。


 え、何で? 何か問題でも?


「サキ殿はどうやって勇者が誕生するかご存知ですか?」

「え、そりゃ……覚醒者が産んでだろ?」


 四人もいれば、誰か妊娠するからって聞いた気がするけど?

 しかしロバートは難しい顔のまま、言いにくそうに伝えてくれた。それは思っていた以上に残酷で、認め難い事実だった。


「そう、彼女達は……これから勇者を産むために、大勢の男性達の慰め者になるんだ。王族、大臣……たくさんの兵士などな」

「——は?」


 ちょっと待てよ、そんなの俺、聞いてないんですけど?


 王族はある程度予測していたが、他は聞いていない。何でそんな目に彼女達が遭わないといけないんだ?


「確率を上げるためだ。それほど勇者の存在は大事だからやむ得ない」

「けどよ、わざわざ下っ端の兵士の相手までする必要はないだろう? そもそも王の血族から勇者を出すために覚醒者がいるんじゃねェのかよ!」


 お前ら王族のメンツの為なのに、何でだ?

 その質問にも苦虫を噛んだような顔で答えてくれた。


「初めはそうだったんだが、ある代の王が種無しで……。それ以来、色んな男と交わるようになったようだ」


 確かに妊娠したところで、誰の種かも分からないだろう。


 しかしだ……。だからって何で、彼女達が色んな野郎達の慰め者にならないといけないんだ?


「俺は絶対に許さねぇからな? 彼女達を酷い目に遭わすって言うなら、俺はテメェら相手に喧嘩を売ってやる」


 そもそも存在するかも分からない魔王の為に、子を産むってのも回りくどいと思っていたんだ。どうせなら俺がぶっ飛ばしてやるよ。


「……魔王はちゃんと存在する。だから私も覚醒者達を探す旅に出たのだからな」

「その割には下っ端のゴブリンにも歯が立たなかったけどな?」

「それに関しては! ——反論できない」


 しばらく黙り込んだ後、ロバートは手を差し伸べて握手を求めてきた。何を? 俺は男には興味がないんだけど?


「私は君が勇者の血筋じゃないかと思っているんだ。その髪、黒眼、なによりもその恵まれた肉体に強さ……! 君がもし選ばれた存在なら、彼女達を守る術も見出されるんじゃないか思っている」

「俺が……?」

「だから私に、君を鑑定させてくれないか?」


 俺の正体次第で彼女達を守れるなら——。


「けどね、ロバート皇太子。俺はアンタが思うような存在じゃなかったとしても、セシル達を守る為に足掻くぞ?」

「君が世界と覚醒者達を守ってくれるなら、やむ得ないな。でも……君が私の思う存在であることを強く願うよ」


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