第五章 間者が棲まう山「クルル山」再び

第24話 情報整理

 こうして無事に覚醒者三人が集まったのだが、そもそも……何故、俺は覚醒者を集めているのだろう?


 たしかロバート皇太子を救うことが、俺が受けた命令だったはずなのに。


「そんなの、私とエッチがしたくてに決まってるでしょう?」


 白昼堂々と告白したセシルに、メルディやロックバードは思いっきり吹き出した。


 本当に申し訳ない。この子に悪気はないんだよ?

 少しおバカだけど根はいい子だって分かってあげてほしい。


「覚醒者は四人集まらないと、呪いが解けませんもんね。むしろ私は、他の殿方に襲われずに済んで助かりましたけど」


 おそらくヒロインの貞操を守るための制約だったのだろ。

 最初からこの世界にいた彼女達にはない違和感だろうが、この世界はエロゲーだと俺は睨んでいた。


 本来ならロバート皇太子がセシルの生まれ育ったザッケルの村を訪問し、仲間になる予定だったのだろう。

 それが道中をゴブリンに襲われ、なりすまされて誘拐。そして突如現れた異分子……俺がロバートの役にすり替わったのだ。


 ここで俺がロバートを救うことで軌道修正を図ったが、シナリオ無視でリースとロックバードと合流———という感じなのだろう。


 まぁ、未だに俺を転生させた女神が説明してくれないから、全部予測なんだけどね!


 そうなると、次の目的地であるクルル山脈でロバートと四人目の覚醒者、エディと合流した時点で、俺は不要の産物になる可能性がある。


 今まで美女達との初体験を目標に頑張ってきたのだが……無理じゃね?


「なぁ、もうロバート皇太子を救出するの、やめね?」


 あまりに非情な発言に、皆は呆気に取られていた。そして時間差でワナワナと震え出し、「サキの阿呆ォー!」と全力で殴られた。


「何で急に無責任な発言を⁉︎ アンタ、何のために今まで頑張ってきたのよ!」

「だってよー、一生懸命頑張ったところで、きっと最後に美味しい思いをするのは俺じゃないと思うんだ!」


 結局、最後の覚醒者がロバートと合流している時点で気付かないといけなかったんだ。


 皆のNTRシーンに興奮してきた俺だけど、流石に……好きになってしまった女性達が、他の男と交わるシーンは堪える。子供を孕むまでなんて、この上ない拷問だ。


「何を突然……。って、サキ、アンタが私達を抱いてくれるんじゃないの?」

「え?」

「そうですよ、サキさん。私達はサキさんだから付いてきたんですから。今更、他の人が出てきても納得できません」

「うん、ボクもそう思う! お兄ちゃんじゃないとヤダ!」


 み、皆……!

 思いがけない言葉に、目頭が熱くなった。くっ、泣かせるじゃねぇか!


「しかし、魔王を倒す為に勇者を産むっていうのが、何とも非効率的だね」


 メルディの疑問に一同が動きを止めた。

 確かに……無事に産まれるかも分からない。ましてや子供が大きくなって、鍛え上がるまで待たないといけないなんて、先の長い計画だ。


 そもそも、何が目的なのかで大分意味が変わってくるけどな……。

 魔族の動きが活発になってきたとはいえ、俺の力があればどうにかなる。

 魔王だって、どの程度か分からないが、おそらく皆のサポートがあれば善戦できる自信はある。


「ちなみに、今までの覚醒者はどうなっていたか記録は残っているのか?」

「何十年も前の話になるから、あやふやだけど、たしか四人とも王のめかけになったって聞いたことがある気がする」


 絶世の美女を四人も?

 しかも勇者が生まれるまで、ハーレム状態?


 ゆ、許し難い……!

 俺なんて一回も、むしろ先っぽすら入れていないというのに!


「けど、皇太子を助けないわけにはいかないでしょ? お兄ちゃん、見殺しにするの?」


 うっ、ロックバードの濁りのない目で訴えられると良心が痛む。だが、俺はどうすればいいのだろうか?


 大体、彼女達は……納得しているのだろうか? 自分だちが勇者を産むだけの道具として使われることに……。


「何を言ってるの、サキ。そんなの、宣告された時から覚悟を決めてるわよ!」

「元々救いようのない環境だったし、ジョカの村に比べれば、かなりいいよ!」

「それに、私達が責務を果たさなければ、世界は滅びる可能性が高いですからね」


 彼女達の覚悟を聞いて、胸が痛むと同時に、自分のことばかり考えていたことが恥ずかしくなった。


 やむえない、このまま皇太子を救いに行くしかない。


 だが、黙って従うつもりも毛頭ない。

 ここまでシナリオ変換が出来たんだ。これから先も、きっと俺なら変えられるはずだ。


 俺が彼女達を守る……!

 サキはひっそりと誓いを新たに決意した。

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