第14話 脱出の方法はいかに?
さて、どうしたものか。
逃げ出そうにも術がない。
地の利くらいならエディに期待できるのかもしれないが、何よりも私達には力がない。
本来、覚醒者には美と特殊能力が確約されているはずなのだが、彼女は何の力が授けられているのだろうか?
「エディ、少し手を貸してもらえないだろうか?」
「うん、いいけど何で?」
「何でって、君の
私の唯一のスキル鑑定だ。神しか見ることができない他人のスキルを特別に見ることができるらしい。
いつか民を守り束ねるものとしては、強者を見極めるこのスキルが役に立つと感謝したものだ。
人によっては「他人任せで頼りない王子だ」と蔑む者もいるが、私のプライドよりも国、民が最優先。それで多くの民が救われるのであれば、喜んで愚王となろう。
満面の笑みを浮かべたエディの手を取り、エディのことを読み取った。誕生から生き様、パワーバランス、その人の好み、スリーサイズ。必要以上の情報まで入ってくるので申し訳ないが仕方ない。
「ふっ、ふふふ。何だかくすぐったいなー」
「すまない、気持ち悪いか?」
「ううん、むしろ気持ちがいいよ。ちょっと身体の奥が熱くなってムズムズするけど……」
そ、それは……分からぬ。
女性を鑑定した時にだけ現れる症状だが、その正体が何かは分からないのだ。
「トイレに行きたくなるようなー……モジモジしちゃう感じ?」
「……ちなみにこの洞穴に排泄の場所は?」
「ないよ? どこでも好きにしたらいいよ? え、王子様トイレに行きたい感じ?」
———ないのか……。これは由々しき事態だ。
流石の私も女性の排泄時は見たことがない。いや、見るべきではない。それを見たいと言う輩は特殊な性癖で、私には理解できない趣味である。
だがやむ得ないときは、どうするべきだろう……?
「うぅー……、漏らしちゃいそう」
ポロッと溢れる本音に、冷や汗が止まらない。
か、鑑定をやめるべきか? いや、ここまでして止めるのは勿体無い。また鑑定をしても、振り出しに戻るだけだ。
この鑑定スキルも、人が思うよりも体力を要するのだ。
知りたい情報だけをしれればいいのだが、結局無駄なことまで読み取る為、全ての糖分が吸い尽くされたかのような疲労感を覚える。できれば今回の鑑定で、よい結果を出したい。
「あ、んふゥ……っ、恥ずかしい気分になってきたァ♡」
だが、そんなロバートの苦労なんてつゆ知らず、エディは火照り出した顔は妖艶で、甘く囁き出した。
そう、見覚えがある……これは発情の顔だ。
私はエディの性感帯まで鑑定し、刺激してしまったようだ。
身体中を
だめだ、だめだ。これ以上は受け止めきれない!
ロバートは鑑定を止めてエディを突き放したが、指の間から覗いてきたのは獲物を狙う狩人の目だった。彼女は猫のように舌擦りをして、ロバートに手を伸ばして求め出した。
「あン、王子さまァ……っ、ギュッとして?」
「こ、断る! 今はそんなことをしている場合じゃない!」
だがこの苦労の甲斐もあり、無事にスキルを鑑定をやり遂げることができた。
エディのスキルは補助魔法。味方のスキルを上げたり、敵を弱らせたり、その他にもダンジョンの抜け穴を見つけたり……と、そう言ったところだ。
つまりだ、この洞穴から抜け出すには最適なスキルを持っているのだ。
「エディ、君は補助系魔法のエキスパートだ! 君のスキルを駆使すれば、ここから抜け出すことが可能だ!」
「アタシのスキルぅ? うーん、今はそんなのどうでもいいよ。今は……このモヤモヤをスッキリさせたいなァ♡」
ひ、非常事態だ!
こうなったら正直に白状しよう。私は童貞ではない、それなりに経験はある。
だが、いつも受け身で自ら女性を満足させたことはなかった。
キスも前戯も、挿入ですら全部任せっきりだ。
言うならば、男版マグロだった。
しかも覚醒者の秘部には触れなれない。
———と、いうことは、彼女の欲情を解消させる術がないのだ。ずっと発情状態が続き、終わりのないイチャイチャが続くのだ。
「落ち着くのだ! エディ、なぁ!」
「ダメダメ、無理ィー。ねぇ、王子様。アタシと家族になっちゃおうよ?」
馬乗りにされて、
味わったことのない快感。あまりの良さに力が抜けて馬鹿になりそうだ!
「何かー、もう、王子様さえいてくれたら、他のことなんてどうでもいいかも……。ねぇ、これからずっと側にいてね?」
いや、私には民が! 守らなければならないモノがあるのだ!
途切れる意識———……。
だが、エディとの甘い時間は延々と続くのであった。
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