第11話 覚醒者は鉄の処女
異性とベッドで戯れるなんて、夢でもあまり味わえない貴重な経験だ。セシルに引き続いて二度目のチャンスが巡ってきたのだが、果たして今度こそ卒業できるのだろうか?
『今のところは大丈夫だ……。問題は本番間近なんだよな。やっぱ緊張で萎えるのか?』
早急に本番を行うか、それとも前戯で距離を縮めるのか?
今なら絶賛興奮中だが、魅惑のOPPAIはスルーできない。これに顔を埋めたい……童心に返ってしゃぶり尽くしたい。
「好きなんですか? どうぞ、サキ様のお好きなように堪能してくださいませ?」
そう、言われると逆に出来なくなるのが男の性。けどリースのことも気持ち良くさせてあげたい。どうすればいいのだろうか?
「あ、先にお伝えしておきますが、私、セックスは出来ませんので」
「………え?」
「イチャイチャは出来ても、繋がることは出来ませんので、予めご了承下さいませ」
まって、そんなの風俗に行って「ウチは本番はNGなんでー、規則破ったら恐い人達がきますんでー」っと予防線張られてるような既視感は!
まさかドアの向こうに待機してるのか?
「私は覚醒者なので交尾は出来ません。セシル様も覚醒者だから、ご存じですよね?」
「いやいや初耳! 知らねぇし! 何で? 何で出来ないの?」
「何でと申されても……覚醒者には勇者を産む宿命があるので、いざという時まで処女を守る為に封印がされるのです。自分の指すら挿入できないので、殿方のイチモツなんて、とてもとても……」
そうだったのか。だからセシルもリースも、本番まで強要されなかったのか。
安心した反面、ショックを隠せなかった。
この異世界で手に入れた立派な息子を使用する機会がなくなったと宣告されたようなもんだ。
「え、じゃあ、覚醒者は勇者の父親に出逢うまで処女なの?」
「そうですね……覚醒者が4人揃えば解呪できると耳にしましたが?」
「4人揃えば? それは男は誰でもいいってこと?」
「ボンクラで弱々の貴族でも、奇跡のイケメンマッチョでも大丈夫なんじゃないですか? 今までは王族が勇者の末裔でしたが、文面を見る限り、男性に関しては誰でも問題ないかと」
それなら4人集めるしかない!
そして推しと心ゆくまで楽しい時間を堪能したい‼︎
「ちなみにリースさんは、一緒に同行してくれるってことでいいのかな?」
さっきの様に馬鹿みたいなことばかりしている俺達だが、ついてきてくれるだろうか?
心配そうに尋ねると、彼女は満面な笑みを浮かべてコクンの頷いてくれた。張り付いた仮面の笑みではなく、心からの笑顔だった。
「恥ずかしながら初恋なんです……。不束者ですが、よろしくお願いします」
こうして二人目の覚醒者が仲間になった。攻撃魔法を得意とするリースがいてくれたら、大いに助かる。
「それでは明日からロバート皇太子救出作戦ですね。ロバート皇太子はどこに隔離されたんですか?」
「え……あー……最後に消息を絶ったのは、三週間前のミシガンの森だったかな? その後はクルル山脈で反応があったとか」
「——三週間前……?」
おっと、リースの顔が凍り付いた。
「そんなに前に行方不明になったのに、こんなところでフラフラしていたんですか?」
ワナワナと拳が震えてる!
これはマズい、相当キレてるぞ?
「地理的にもこの街が近かったからさ! 物事は効率よく行くべきだろう?」
「優先順位を決めてください……! 仮にも国の重要人物、皇太子ですよ? もしものことがあったらどうなさるんですか?」
いや、ザッケルを出た時点で生息反応があったといいことは、生捕りにする必要があったと思うんだよね?
だから先送りしても問題ないはず。
「それよりも戦力を高めることが重要だとだったんだ! 幸いリースさんの魔法と俺の攻撃力があるから、今なら戦えるはずだ」
——ってことにして下さい。
本当は何もしなくて、セシルについてきただけなんだけどね? だってこの世界のゴブリンが強いことも、皇太子が重要人物なのも全く知らない未知のことだったんだから!
「……まぁ、確かにそうですね。クルル山脈は余程腕に自信がないと、入った瞬間に屍になりかねませんから」
「そんなに強いのか? ゴブリンとかウヨウヨ徘徊してる系?」
「ゴブリンよりも恐ろしい、ハイウルフなどが野を駆け回っております」
——ヤベェじゃん!
この一帯のゴロツキをやっつけた程度じゃ、全く話にならない!
それに俺はともかく、女性二人には過酷じゃないか? 単独行動が望ましくないか?
「私は同行致しますよ。だって惚れた殿方を、一人危険な場所に行かせるわけにはいかないてますから」
そっと手を添えて、奥ゆかしい健気な妻みたいだ。リースさん……! 大好きだ!
「俺も全身全霊掛けてお守りします! 愛する人を守る方が男の使命!」
「愛する人……?」
ドスの聞いた声が響き渡った。何だ、この禍々しい空気は! 甘い雰囲気が一瞬で消え去ったぞ?
敵の襲来か?
警戒しながらドアに視線をやると、恨めしそうに睨む女性の姿が見えた。
「せ、セシル! あ、これには……その、深いわけが!」
そうだ、俺には既に守ると決めた推しがいたんだ。
リースも共に行くとなると、二人の推しと行動することになる。しかも二人とも俺に好意を持っているらしい。
「私がいない間に、随分と親睦を深めたようで……」
「ちがうんだ、これには深い訳が‼︎」
ハーレム系漫画の主人公って、どうやってやり過ごしているんだ?
この難易度高めのミッション、俺には難しすぎるのだが?
——……★
次回は6時45分に更新します。
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