第10話 信じてもいいんですか?
リース視点……★
「この子は覚醒者、純潔の魔女です」
私、リースがこの世界に生まれて数ヶ月が経った時のことだった。
覚醒者とは、魔王が誕生した時に勇者の母になる誇り高い存在。自分の娘が掛け替えのない存在と知った両親は、躊躇うことなく大金で売った。
覚醒者には指折りの美女というオプションも付与していた為、未来が確証されていた私は重宝されていた。
物心がついた時から、可愛がられていた。大人になったら慰めモノにされた。
たくさんの経験を積んだ今、男共は私のことを都合のいい
いいの、私なんてそんな存在。人間なんて所詮そんなもの。
今は私のことを慕ってくれている子供達も、いつか汚い大人になるけれど、ねぇ……アナタ達はあんな大人にならないでねと、囁きながら育ててきた。
誰も手を差し伸べてくれなかった。
助けてなどくれなかった。
だからあんな、見返りを求めない一方的な優しさなんて知らない。
信じるにしては相手を知らな過ぎていて、拒むのは本能が嫌がっている。
「相手がいる人だというのに、私も中々悪い女ですわ」
明日、ちゃんと返事をしよう。
今日は夢見が良さそうだ。
【視点終了】
———……★
一方、サキは宿に戻るなり正座を強いられていた。
彼此一時間以上この姿勢だ。足が痺れて感覚がない。
しかもダンジョン上がりで満身創痍。今すぐにでも治療をしてもらいたいのに、目の前の治癒師は睨んだまま許してくれなかった。
「ねぇ、サキ。アナタが救いようもない大馬鹿野郎だってことは私も知っていたけど、ここまでだとは思ってもいなかったわ」
「え、何で? 俺ってそんなに悪いことをした?」
「無自覚? もっとタチが悪い……。私には瀕死の子に手を差し伸べるなって止めたくせに、自分は大金を寄付? しかも見返りなしで? もー、大馬鹿野郎以外に相応しい言葉はないでしょ?」
「えー、金貨って思ったよりも重いんだぜ? 俺たちが持っていても邪魔にしかならない。それなら有意義に使った方がいいでしょ?」
「だからって無償はない! 何であの女に交渉しなかったの?」
「だって昨日今日会った男に『ゲヘヘ、この金が欲しかったらついてこい』って言われても怪しいだけだろう?」
「私も彼女も覚醒者。十分知ってる者同士なの。もう、サキと話していると馬鹿が
感染らねーよ、バーカ!
おっと、セシルの口の悪さがうつってしまった。でも悪くないと思ったんだけどなー。
そんなことよりも……見えない自分の
騙されて入ったとはいえ無我夢中で戦い、最下層まで行き着いた俺は、もはや敵無しの無双状態だった。
それなりに地位のある兵士も、ガラの悪い強面の兄ちゃん達も、ダンジョンのゴブリンに比べれば大したことなかった。
もしかして俺も、意外と重要人物だった? この見た目、そしてNTR大好きな不誠実さ……やっぱ、どう考えても悪役だよなー。
「俺、セシルやリースの側にいていいのだろうか?」
ゆくゆくは勇者の母になる彼女達だ。
敵になる可能性高いよな?
その時に悪役が強かったら最悪じゃね?
くっ、そろそろ本気で出てきてくれ、女神様。俺って一体何者だ?
「あら、サキ。まだ正座していたの?」
「セシル……え、崩してよかった?」
「———朝までやってればー?」
おい、セシルもやれよ、コンチクショー!
それでも正座をやめない俺って偉いよねー。忠犬ハチ公もビックリだろ、この忠実さ。
でも流石に限界近いけどね……せめて傷の治療くらいはしたいな。
プルプルと震えながら耐えていると、ギィ……と扉が開いた。またセシルが馬鹿にしに戻ってきたのだろうか?
「なぁ、セシル。馬鹿にするなら程々にしてほしいんだけど」
「あ、ごめんなさい。セシルさんじゃないです」
申し訳ない声色に俯いていた顔を上げた。そこには救急箱を手にしたリースがオドオドした様子でこちらを伺っていた。
「え、あのまま正座をさせられていたんですか? もう……、馬鹿ですか? 傷口からバイ菌が入りますよ?」
そう言って布で汚れを拭って。
この人は見た目通りの聖母だ。同じ馬鹿でも愛のある馬鹿だよ、もう。
「この傷、いっそ焼いたほうが消毒できそうですね。さっさと済ませましょうか?」
おいおい、前略撤回!
危ねえ奴だな、聖母様よォ! 頼むから持ってきた救急箱でお願いします。
ちょこちょこと丁寧に赤チンを塗って、消毒を済ませていった。まさかこんな時間に訪ねてくるとは思っていなかったので、正直戸惑いを隠せない。
「私も明日にしようと思っていたんですが、どうしてもアナタに会いたくて……」
「リースさん……」
「アナタは一体、何者なんですか? 一人でオークを討伐する一般人なんてあり得ないです」
やっぱそうなの? 俺もおかしいなーとは思ったんだけどね?
転生したばかりで、この世界の基準が分からないんですよ。
「それに、騙した私に大金を寄付して……何が狙いですか?」
「いや、あれは本当に邪魔だから寄付しただけで……俺も多少はもらってるんだよ? だから気にしないで?」
「気にしないでって、そんな簡単な額じゃないんです。あんなことをされても、私には何もできないのに……」
そう言って、リースの額が胸元に押し付けられた。
これは、抱きしめての合図?
初めての経験なので正解が分かりません。
だが次の言葉で確信が持てた。
「見返りなしなんて、逆に恐いです。だから私を好きにしてください」
よっしゃあああ!
キタキタキター、エロイベント!
これだよ、これ!
手の平でも収まらない豊満な膨らみに手を添え、ゆっくりと堪能した始めた。今度こそ同じ過ちは犯さない……!
俺はリースをベッドに押し倒して、唇を塞いで舌を絡ませた。
——……★
だが、嫌な予感しかしない(笑)
今回は12時05にも更新します。
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