閑話 旅立った後の話【バショウグン】
バショウグンside
「彼奴ら、やっと旅立ったか……。長かったな」
我が主君、ロバート皇太子が偽物とすり替えられていることが判明して数日が過ぎたが、一向に旅立つ素振りを見せなくて、かなり焦燥させられた。
だが本来ならば己の仕事なのを無理言って頼んでいるだけに強くは言い切れなかった。
しかしだ、もし皇太子の身に何か起きたら……おそらく私のクビだけでは済まないだろう。
物理的にも首を切られ、家族や親族、私の親しい者が罰せられる勢いのやらかしだろう。
「ぬわぁぁぁっ! 私は、私は何という失態を!」
「バショウグン様、落ち着いて下さい! きっと皇太子様も無事に保護されると思います」
くぅぅ、気休めを! 一端の兵士は気楽で良いよな……! 私にはそんな余裕はないのだよ?
いくら手強いゴブリンだったとはいえ、一般人のサキ殿でも討伐できたレベルだったというのに。そんな雑魚に騙されるとは、近衛隊を率いるものとして一生の不覚である!
「あの、そのサキ殿が討伐したゴブリンについて報告ですが……」
「なんだ? 何か分かったのか?」
私が聞き返すと、部下は困ったように額に浮かんだ油汗を拭いながら言葉を続けた。
「皇太子に扮装していたゴブリンですが……
——は? ミュータント?
聞き間違いかと何度も聞き返したが、いくら聞いても報告に変わりはなかった。
ミュータントタイプってことは、その辺りにいるモンスターよりも何倍も脅威な存在だ。
下手したら村や国を滅ぼしかねない強さを備えている。
しかし、それなら私達が容易く騙されたのも納得がいく。
だが、それと同時にもう一つの疑問も浮上する。
そんな突然変異を拳で撃退したサキ殿は、何者なんだ?
「記憶のない黒髪黒眼の男……。いや、しかし……まさか」
一つの推測が脳裏をかすめたが、あり得ない……そんなわけがない。
だが、もし推測が正しければ、世界の状況や利権が大きく変わりかねない。
「何にせよ、サキ殿が皇太子様を救い出してくれれば全てが丸く収まる。一刻も早く救出してもらわねば」
そんな私の願いとは裏腹に、サキ殿達は道草ばかり喰って、中々救出に向かってくれなかった………。
———……★
今回は短いので、12時05分にも更新します!
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