第15話

 かなたはニカを背に乗せて空を飛んでいた。かなたは途中大きくあくびをした。まるで、雲を食べているようだった。「なんだか、めんどくさくなっちゃったな」かなたはそう言うと「やっぱりここまでね。」と言ってニカを落として自分は返ってしまった。「ええ?」ニカは溺れたようにシャボン玉を吐きながら落下していった。落下した先にあったのは巨大な炎だった。炎が街を食べている。街から水性の子供が逃げ出した。炎はまるで蛇のように首を伸ばしてその子供の後を追った。ニカは落下の勢いを使ってその炎の首に踵を落とした。すると、大きな旗が翻るような悲鳴が聞こえた。それは、炎の泣き叫びだった。炎はクマのように立ち上がりニカを威嚇した。

 「ニカだ。英雄が来たぞ。」「やっちまえニカ」「正義のヒーローだ!」

 街の高い塔から土性の人間や火性の妖精が顔を出してニカに声援を送った。ニカはその声援を背に炎につかみかかりその首を絞めた。炎は黒い煙を吐きながら水をかけられたみたいに小さく萎んでいった。ニカが最後のとどめを刺そうというとき灯みたいに小さくなって炎はなんとかニカの手から逃げ出して再び街を燃やし始めた。街はもはや炎の燃料でしかなかった。塔の上でニカと炎の戦いを観戦していた者たちが悲鳴を上げた。「おい誰だ!水性の奴をこの塔に入れたのは。」

 炎が塔の周りを取り囲みその外壁を登り始めた。

 その声の少し後に塔の窓が開いてそこから水性の子供が投げ落とされた。地面に落ちて足を追った水性の子供に炎が徐々に迫っていく。子供は泣き叫びながら塔のドアを拳で叩いた。「ここを開けてください!ここを開けてください!」水の子の叫びはシャボン玉に閉ざされて誰の耳にも届くことがなかった。塔の外壁を登っていた炎は下に折り返してついに炎が水の子の足首を掴んだ。「ぎゃあ」溺れたみたいに水の子はシャボン玉を吐き出した。その時だった。ニカが駆けつけて炎を殴った。即死だった。まるで、空気が一瞬で水に転じたみたいに火は跡形もなく消えてしまった。

 「ニカが勝ったぞ。」「やったあ」「街の英雄だ」塔から歓声のシャボン玉がいくつも上がった。ニカは水の子を抱き上げて怒った。

 「お前たち!」ニカの声はまるで天音のように遅れなく人々に届いた。

 「この子に謝れ!」

 まるで雷のような叱責に塔の人々は委縮してしまった。水の子はニカの胸をギュッと掴んでその表情を見上げた。まるで、荒波のように険しい表情でニカは怒っていた。

 「すまなかった。」土性の一人が謝ると雪崩のように他の者たちも水の子に謝罪を述べた。ニカは水の子を優しく見下ろして「君のことをずっと探していた。間に合ってよかった」とほほ笑むのだった。

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