『運命だった出会い』
誰?それ?
直球的に、そう思った。
航平君は、少し淋しげに笑い
「覚えてないよね?」
そう言った。
「覚えてない?」
ますます意味が分からない。
航平君は、クスッと笑い
「俺ね、小さい時は、すっげぇ弱虫でさ…ほんと恥ずかしい位だったんだ」
航平君が、懐かしそうな目をしている。
「その時は、父親がまだいて…親父の職場の近くに住んでいたんだ」
…そういえば、航平君のお父さんを病院で見た事ない。
もしかして…亡くなったの?
なんて、聞けない私。
「一人で歩いていたらさ、女の子の鳴き声が聞こえて、そしたら、何人かの男の子にからかわれて、手とか足とか擦りむいていたんだ」
ん?デジャヴ?
「いつも一緒の気の強い女の子はいなくて…一人で泣いているその子を見ていたら、無性に守りたくなって」
航平君は、一旦言葉を切る。
「思わず走って、そいつらにケンカ売ってたんだ…弱虫の俺が…笑える」
そう言って、思い出したようにクスクス笑う。
「もう必死で、殴ったり蹴ったりして、そいつらを追い返したまではいいんだけど…」
航平君は、困った表情になる。
「…その子、泣きやまなくてさ。俺、ハンカチを差し出して言ったんだ…『もう…大丈夫だから…泣くなよ』って」
瞬間、私は繋いでいない手で口を押える。
そんな…あの人…
航平君だったの?
「それから、俺、強くなった。また、あの子がイジメられていたら、絶対に守るって決めて」
航平君の言葉で、涙が溢れる。
「美奈?」
航平君が首を傾げる。
「あの人…航平君だったの?」
ようやく言葉が出た。
「え?覚えていたの?だったら…」
「帽子で陰になって、顔を確認出来なかったの。泣いていたから視界歪んでいたし…ただ、キレイな脚だなぁって思ったの」
私の言葉に、航平君は、はぁ…と息をつく。
「何だよ…それ?キレイな脚って、男にとっては褒め言葉にもならないって」
苦笑しながら言う。
「だから、男の子か女の子か、分からなかったの。でも…ずっと、心の中で…大切な人だった」
私の言葉に、航平君の顔が赤くなる。
「それじゃ…俺達って…小さい頃から、お互いを想っていた訳だ」
そう言って嬉しそうに笑った。
私も、恥ずかしながらも笑った。
「あのね…」
「ん?」
「ずっと言いたかったの。あの時、助けてくれてありがとうって」
俯きながら言うと
「ん…」
航平君は、短く答えた。
「…そっか、あの人は、航平君だったのか」
運命を感じてしまう。
そんな事、口にすると恥ずかしいけど。
握りしめた手に力を込める。
航平君が、応えてくれた。
嬉しくて、嬉しくて
航平君が、どんな顔をしているのか気になって見てみると…
ちょっと、微妙な顔?
え?
もしかして、私の顔、変でしたか?
「…ダメ」
航平君が呟く。
え?何が?
私、いけない事しましたか?
焦っていると
「俺以外の前で、そんな可愛い顔したらダメ」
航平君の言葉に、きょとんとなる。
可愛い顔?
私の頭に?マークが飛び交う。
航平君は、はぁ…と息をついて
「今の内、言っておく。美奈は、反則的に可愛い上に無防備なんだから、ちゃんと気をつけて」
航平君の言葉に、更に分からなくなる。
「私…可愛くなんかないよ?おバカだし、暗いし、ネガティブだし」
きょとんとしている私に、航平君は頭を抱える。
「だから、そこが困るんだよ。中学の時から、美奈の事、可愛いって男子が騒いでいたんだぜ」
私の思考が止まる。
え?
私が可愛いって
「何人か告白しようとしたら、津川からブロックされていたし…俺、内心ヒヤヒヤだったんだぜ」
航平君の言葉に私は…
「私だって…女の子は皆、カッコいいって騒いでいて…それに…高校に入ったら、女の子といっぱい付き合いだして…不安だったよ」
俯いて、拗ねたように言った。
私の言葉に、航平君はバツの悪い顔になる。
「あれね…実は…美奈の気を引きたくて…」
「え?」
驚く私。
「…俺って最低だよな?美奈の心に少しでも自分の事を残したくて…でも、俺のやった事は最低な事だ。どんな言い訳もきかない。潤達には相当どやされた」
そして、足を止める。
「最初から、自分のキモチに素直になっていたら、美奈の事、不安にさせないでいたのにごめん」
航平君の言葉に、胸が熱くなる。
「…私も同じ。自分のキモチに素直になれていたら…こんな事には…」
あーまた泣きそう。
でも頑張って堪えないと
そんな私を航平君は抱きしめてくれた。
「…泣いていいよ」
優しく言われて、私の中にある糸が切れた。
「俺の前でなら、泣いていい。我慢しないで」
その言葉だけで、心が満たされていく。
航平君に抱きついて、私は泣いた。
航平君は、ただ優しく抱きしめてくれた。
「これからは…俺が美奈を守るから…一緒にいるから…」
甘く囁く声に、顔を上げる。
そして
『覚悟していてね』
何をですかーーーー!?
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