『ツナガルオモイ』
去って行く航平君の背中に
想いをぶつけた。
ゆっくりと振り返る航平君。
信じられないように目を開いている。
唇を、キュッと結ぶ。
そして、
「私も、安藤君が好きです」
さっきとは違って、今度は小さい声で言う。
恥かしくて俯いてしまう。
近づく足音。
目の前に、航平君の足。
「佐藤…」
そう言ってから私を抱きしめる。
強く
強く
「俺…夢、見てないよな?」
腕に力を込める。
自然に私の腕を航平君の後ろに回す。
「…うん」
私も腕に力を込めた。
小林さんが、悲しげに私達を見ている。
そして、涙を流しながら去って行った。
無言のまま抱き合って
体を離したその後
航平君の柔らかい唇が、私の唇に触れた。
…想いが通じた
そう確信するキスだった。
航平君と何度もキスをする。
体が熱い。
心臓が壊れそう。
でも…
目の前の航平君を見ると
すごく安心する。
「佐藤…」
何度目かのキスが終わると、航平君が私に囁く。
「何?」
まだ航平君の顔をまともにみれない私。
「≪美奈≫って呼んでいい?」
切なそうな声に
「…うん」
私は答える。
「…美奈」
名前で呼ばれた瞬間、全身の血が逆流するような感覚がした。
「美奈…美奈…」
名前を呼ばれる度に、私の頭はボーっとして
「航平君…」
思わず口に出てしまった。
航平君は、私を見つめ
「その顔…反則」
そう言って、また唇を重ねる。
私?どんな顔をしているの?
「俺以外に、そんな顔を見せないで」
哀願するような声。
「…うん」
よく分からないけど返事した。
航平君は、体を離して
「一緒に帰ろ」
少し恥ずかしそうに言う。
思わず私も恥ずかしくなって俯く。
「うん」
小さく頷いた。航平君と指を絡ませて繋いだ手。
想いが通じたって
すごく信じられなくて…
これは夢じゃないって思って
自分のホッペを抓ってみる。
う…痛い…
やっぱ、夢じゃない。
航平君が私を見ている。
「美奈…可愛い」
そう言うから恥ずかしくなった。
「夢じゃないよ」
そう言って、繋いだ手に力が入る。
航平君の手の感触…
夢じゃないんだね。
嬉しくて笑っていると
「…俺以外に、そんな顔見せたらダメだよ」
ちょっと、拗ねたような航平君。
へ?
私、どんな顔してる?
「幸せすぎて可愛い顔」
私の疑問を見透かしたように航平君が答える。
「…だって、幸せなんだもん」
小さな声で私は言う。
航平君は、クスッと笑い
「俺も幸せ」
そう言ってくれた。
神様…私、今死んでも後悔しません!!
あまりの幸せに、そんな事を考えていた。
「そういえば、美奈って、いつから俺を?」
航平君の質問に、少し恥ずかしくなった。
「…入学式」
小さく蚊の泣くような声。
「え?」
「中学の入学式の日…クラスの男の子達と…話している姿…キラキラしていて…」
恥かしくなって俯く。
「そっか…」
そう言って航平君は、微かに微笑む。
「あの…航平君は?」
私の問いかけに
「えっとね…本気で気になりだしたのは…入学式の前」
航平君の言葉に、少し考える。
入学式の前?
「校庭の桜並木の所にいたでしょ?」
あ…そう言えば…
あの時の桜がキレいだったから、思わず近くで見たくなって…
「あの時、あぁ≪あの子≫だって思った」
「あの子?」
私は首を傾げる。
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