『告白』

だけど、神様はイジワルだと思う。


バッタリと、航平君に出会ってしまった。


花火大会の事もあって、すごく顔を合わせづらい。


「今、優奈達とすれ違ったけど…何かされた?」


心配そうに言う航平君。


やっぱり、幼馴染の事、気にしているんだね。


胸が痛んだ。


私は笑顔を作って


「違うよ。今までの事謝ってくれたの」


そう言った。


ホッとした表情を浮かべる航平君。


「深田さんっていい子だよね」


そう言う私の言葉に、航平君は驚いたようだったけど


「そうだな」


穏やかそうな声で航平君は言った。


あぁ、やっぱり、深田さんは航平君に想われている。


私なんて…敵わない。


そこに…


「航平くーん」


小林さんが駆けてくる。


航平君の表情が不快そうになる。


「ちょっと、待ってよ」


そういう彼女が、私が傍にいる事に気付いて


「何で、あなたがいるのよ?」


不快度MAXで聞いてくる。


「あの…」


私が答えようとすると


「屋上で、優奈が佐藤に謝っていたんだ」


航平君が答えてくれた。


「え?優奈が?」


小林さんは驚いている。


「優奈、佐藤に悪い事したって悩んでいたから」


航平君、少し悲し気…


胸が痛い。


小林さんは、視線を泳がせて


「私は…悪くないわよ」


ボソリと呟く。


「お前…」


航平君は、怒ったような表情になり、何か言おうとしたけど


「ねぇ、航平君。もう一度、私と付き合ってよ」


そう言って航平君に擦り寄って腕を絡めようとする。。


「止めろよ!」


航平君は、彼女の手を振りほどく。


「どうして?私、こんなに航平君の事好きなのに…」


小林さんは、少しムッとしながら言う。


「俺は、好きじゃないんだ」


再び、すり寄ろうとしている小林さんを、航平君は振り払う。


「止めてくれ…困るから…」


ツラそうな航平君。


小林さんは、体を震わせて


「…じゃあ、キスして」


呟くように言う。


「え?」


「キスしてくれたら諦める」


キッと航平君を見る。


航平君は、首を横に振り


「俺は…好きな奴としかキスはしない」


静かに答えた。


今…何て…言ったの?




【好きな奴としかキスはしない】




って言ったよね?


それって、どういう事?


だって、私…


4回もキスしたよ?


それ…もしかして?


航平君は、私の存在を思い出したのか私を見つめている。


切なそうに…


あの優しくて温かい眼差しで…


それに気付いた小林さんは


「ちょっと!!あんた!!何してんの?」


と、私に、突っかかってくる。


「え?」


意味が分からない私。


「あんた、私の事バカにしているでしょ?」


ヒスに近い声で言う。


それ…言いがかり…


何も言わない…言えない私。


それに業を煮やした小林さんは…


「あんたさえ!!」


と、私の腕を掴む。


「止めろ!小林!佐藤には関係ない!!」


航平君の言葉に、小林さんの動きが止まる。


「関係…ない?」


「佐藤を巻き込むのは…止めてくれ…」


そう言う。


小林さんは、航平君の胸ぐらを掴み


「じゃあ、私と付き合ってよ…ねぇ?」


そう言いよった。


だけど、航平君は、その手をゆっくりと掴み


「…それは出来ない」


静かに答えた。


そう言ってから、私を真っ直ぐ見る。


「佐藤…」


航平君が静かに言う。



「俺は、佐藤が好きだ。ずっと前から」



思わず口に手をやってしまう。


嘘…


嘘…


嘘…


航平君が…私を?


好き?


その言葉を聞いて、小林さんはガクンと項垂れる。


私の頭の中は、真っ白で…


何も考えれなくて…


「佐藤が、俺の事、軽蔑しててもいい。俺は、佐藤が好きだから」


そう言って、立ち去ろうとする。


ダメ…


行かないで…


お願い…


心臓は、バクバク言っている


口の中は乾いている


頭の中も真っ白


体はガクガクしている


どうしよう


どうしたらいい


航平君が…行ってしまう…


嫌…行かないで…


私のキモチ…まだ言ってない…


行っちゃう…


私の好きな人が…


行っちゃう…


このままじゃダメ。


自分のキモチ伝えなきゃ


伝えたい…


勇気を振り絞って


想いをぶつけなきゃ


でも…出来ない…


口が上手く動かない


あぁ…航平君が…行っちゃう


行かないで!




「私も安藤君が好きです!!」



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