『夏休みの楽しみ』

「ま、いいわ」


お母さんは、徐に携帯を取り出す。


「どこに電話するの?」


私の問いに


「安藤君のお母さんよ」

ラリと答えた。





え?


いつの間に仲よくなったの?


【ピッピッピッ…】


楽しそうに番号を押している。


どうやら、入院している間に、仲よくなったらしい。


お母さんは、


【航平君のようなイケメン息子】


を…


航平君のお母さんは


【私のような可愛い娘】


が欲しかったらしい。


いやいや、それって親の都合じゃないですか?


とか疑問に思ってしまう。


しかも、結婚式は、どうしようとかなんて話しているみたいだし。


だから…


本人達を置き去りにして話を進めないでもらいたいなぁ


私は…嬉しいけど…


航平君にとっては、すごく迷惑な話だよ…


「あら、安藤さん?」


電話に出た安藤君のお母さん。


2人で何か話して、盛り上がっている。


もういいや…無視しよう。


そんな事より宿題だ。


講習とか、いろいろあるから今年の夏は忙しそうだ。


そこに私のスマホが鳴る。


あ、凛ちゃんからだ。


何々?


【花火大会、いこーね】


…当たり前じゃん。


てか、凛ちゃんと楓ちゃんしか一緒に行く人いないんだよ…悲しいけど


【おっけ】


と返信すると


【少しは、色っぽい浴衣着ないとダメだよ】


なんて返ってくる。


何で?


まぁ、お母さんが新調してくれると言っているから、買ってもらうつもりだけどね。


それに…


もしかしたら…


航平君と会えるかもしれないじゃない?


あんな人ゴミの多い場所だから、確率は0に近いけどね…クスン


高校最後だし、それに思い出ってたぶん花火大会だけだろうし


だって、受験生は忙しいですから。


海にもプールにも行けないし…


あーあ、何か楽しいイベントないかなぁ


…はぁ、こんな性格じゃ無理かな


こんな可愛くない私じゃ無理かな


あ…また、イジけてきてる。


悪い癖だ。


そうだよ…


航平君とも、あと8か月でお別れなんだから、少しでも近づけるように


航平君の心の隅にでも印象に残る様に


少しでもいいから、変わらないと…


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