『事件ー墜落』
教室を出た後、職員室の近くで時間を潰す。
楓ちゃんを待っているけど、何となく暇だ。
凜ちゃんは、先週あった大会の事で先生と話があるって職員室の中に消えていったし。
暇を持て余した私は、忘れ物に気付いて教室へと戻る。
自分の机を、ごそごそと探し物をする。
あ…あった。
補修のスケジュールっと。
これないと、夏休みの予定を立てられないよ。
じゃ、戻りますかね。
そう思って慣れた廊下を歩いていた。
…暑い。
温暖化とは言うけど、半端なく暑い。
近くの木ではセミが、これでもかと言わんばかりに、ミンミン鳴き続けているし。
それを聞いていると、余計に暑くなりそうだ。
早く帰って、エアコンの恩恵を受けたいな。
そんな事を考えながら階段に差し掛かっていた。
…
…
ほとほと私って、運が悪いというか…
なんというか…
何故に、こんなジャストタイミングの場面にばかり遭遇するのだろうか?
そこには、航平君と彼にしがみついている平沢さんの姿があった。
そして、その近くには神妙な表情を浮かべた古瀬さんの姿。
ジーーーーサス!!
ってこういう時に使うのかな?
何てタイミングが悪いんだ…
思いっきりマズイ場面ではないか!!
目が合わないうちに逃げよう。
そう思った瞬間、3人と目が合う。
ぎゃあぁぁ!
もう逃げられない!
とりあえず、この場から立ち去ろう。
そう思って、3人の横を通り過ぎようとした…けど
「ちょっと!待ちなさいよ!」
平沢さんの声に、ビクッと肩を震わせる。
ひぇぇ…
一体何?
怖い気持ちと戦いながらも、平沢さんの方を向く。
「…何か?」
声が上手く出ない。
「チョーシ乗ってんじゃないわよ!」
え?
え?
何?
何がどうなっているの?
完全に頭の中が混乱しまくっている。
黙っている私に、平沢さんは痺れを切らしたのか…
「何、シカトこいているのよ!」
そう言って、私の腕を掴む。
何で?
何で絡まれないといけないの?
「平沢、止めろ!佐藤には関係ない」
航平君の言葉が、ズシリと胸にのしかかる。
【関係ない】
そうだよね…
私は、航平君とは、何の関係もない。
あ…また泣きそう…
でも、泣いちゃダメ。
ここでは、絶対に泣いちゃダメだから。
そう思って涙を堪えた。
「こんな子の為に!!」
乱暴に私を引っ張る平沢さん。
何?
何を言っているの?
事態が掴めずに混乱する。
「佐藤を離せ!!」
航平君が、必死になって私から平沢さんを離そうをしている。
平沢さんは、その手を振り払って
「あんたさえ、いなければ!!」
そう言ってから、私を突き飛ばす。
え?
【ふわり…】
私の体が浮く。
「佐藤!」
私に手を伸ばす航平君。
思わず腕を伸ばしたけど
指先が軽く触れただけ
そのまま私は、引力に引っ張られてゆく。
スローモーションのように、航平君の顔が見える。
…あぁ、航平君、やっぱりカッコいいな
次の瞬間に航平君の顔が近づく。
え?
私の手首を掴み、自分に引き寄せる。
【トン…】
私の頭が航平君の胸へと入る。
ギュッと力強く抱きしめれて、落下していく。
私、航平君と落ちていってるの?
高鳴る鼓動は、次の瞬間に打ち砕かれた。
体に衝撃が走る。
い、痛い!!
あまりの痛さに、意識が遠のいた。
だけど
『いやぁ!!航平君!!』
発狂したような平沢さんの声が耳に残った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます